第28話 文化祭に向けて
少し短い話です
時は流れ、秋のある日。
とある小学校で、近日文化祭で劇をやる事になった小学5年生の教室。
そこには多数の生徒達が劇の準備を入念にするという微笑ましい光景。
「これでいいのー?」
「絵の具がないよー!」
「あっ、間違えちゃったーっ。どーしよー!」
生徒達は小道具を作ったり背景の絵を描いたりと様々な作業を周りの人物達と協力し、劇を成功させようとする生徒達は無我夢中で頑張っている。なんという、熱心で無邪気な子供なんだろう。だが、ある一人の女の子は担任の先生や複数の生徒達の前で顔を赤らめ、手には台本と思わせる紙を持っている。
「ほら、美仁香ちゃん。次のセリフだよ」
担任はその女の子に微笑みながら劇の練習をさせようとする。女の子は何とか踏ん張り
「おじいさん、おばあさん。私はこれから鬼が島に行って鬼を退治してきますっ」
「うんっ、その調子その調子♪」
「犬さん、きび団子が欲しいの?だったらきび団子あげるから鬼退治に協力してっ」
「そう!よく出来ましたっ。美仁香ちゃん♪」
その女の子というのは俺である。
何故小学生にもなって桃太郎をやるのか・・・その話は数週間前の事だった・・・
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「はいっ!文化祭が近づいてきたね!という事で私達のクラスは劇をやる事になりましたっ」
俺達は教室にて担任の先生に文化祭の詳細な決め事を聞いていくのが目的で、これからやる劇の内容について聞いていくのだが、とんでもない劇なのだ。
「劇は桃太郎をやります!」
『え?!!』
何故小学生にもなって幼稚な劇をやらなければならないのだという疑問が頭の中に渦巻いていく。その疑問を目にとった担任は
「あのね、今回の文化祭は幼稚園の生徒だとか保育園の生徒がいっぱいくるのよ。だから、その子供達に分かりやすい劇を。という案を校長先生が出してきて、私のクラスがやりますって私が代表として立候補しましたっ。それを校長先生は許可しました~」
自分勝手に事を進める担任に生徒達は不満そうな表情をする。それもその筈、誰が好き好んで桃太郎をやらないといけないのだろうか?だが、担任は
「でもね?普通の桃太郎をやるのもつまらないから、台本とかいじってもいいわよ。ただし、いじる場合はすぐに私に相談する事ね」
台本を改ざんしてもいいという案を出してくれた。その案を聞いた生徒全員は
「え?!!いいの!!」
「それ面白そう!」
無邪気な笑顔を浮かべ、賛成の意を表す。確かに、普通の桃太郎ではなく、オリジナリティを加えた桃太郎をやれるとなると、興奮するかもしれないな。
「それでは、桃太郎の役は誰がやるかな?男の子でも女の子でもいいわよ~。オリジナルの桃太郎だからね」
早速、役決めをするようだが、生徒全員は俺を見つめる。な、なんだ?主役をやれってか?
「み、美仁香ちゃんっ。桃太郎やって?」
「へ?な、なんで?」
一文字ことみは早速俺に桃太郎役を押し付けるが、何故俺がやらなければいけないのだろうか?
「ぼ、僕も賛成っ。だって、桃太郎って戦うんでしょ?だから、強い美仁香ちゃんが適役かなって」
九重有の発言はごもっとも。だが、桃太郎って武術習っているのか?剣を持って、鬼を斬っている描写があったと思うのだが・・・武術を習っているという設定にするのか?
「え~と、美仁香ちゃんでいいのかな?」
俺達の会話は担任にも筒抜けだったようで、皆に俺が桃太郎役が適役かと聞いたのだが、生徒達は
『さんせ~い』『やったー♪』
異口同音。以心伝心で俺を桃太郎役に任命。ここで異議を唱えると皆がっかりするかもしれないから、異議を唱える事はそっと胸にしまっておいたのだ。
「いいわね?美仁香ちゃん」
「・・・ハイ。ワカリマシタ・・・」
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という事であれよあれよと時が流れ今至るのだ。
主人公が女の子なので桃太郎という名前は不適切という事で桃香ちゃんという名前にして劇の名前も桃太郎から桃香ちゃんという名前へと変貌していたのだ。
「桃香ちゃんっ。桃香ちゃんっ。お腰に付けたきび団子くださいなっ」
「うん。だったら、鬼退治に協力して?」
「うんっ。分かったー♪」
一文字ことみはサル役、九重有は犬役、キジ役は以前林間学校にて一緒の部屋だった女子である宮川綾という人物だ。
宮川綾は宮川由希さんの妹だそうで、姉から俺の事を聞いてそれはそれは大変俺に興味を抱いたそうで、俺に懐いてくるのだ。見た目は宮川由希さんとそっくりで、髪はボブで顔の作りは普通。
「桃香ちゃん、桃香ちゃん。私にもお一つくださいな」
「うん。だったら、鬼退治に協力して?」
「うん♪」
そんな普通の顔を持つ宮川綾は俺からきび団子をもらったという演技をして、何故か俺に抱きついてくる。もちろん、宮川綾のアドリブだ。
「そ、それ、台本にないよねっ」
「えー。これくらいいいじゃん」
宮川綾は頬を膨らませながらも、俺を開放せずに抱きついてくるのだ。
「わ、私もぎゅってする~」
宮川綾が俺に抱きついているのを見かねて、一文字ことみは抱きついている宮川綾ごと俺を抱きしめるのだ。
「ちょ、ちょっ。なんで二人とも抱きつくんだよ」
俺は懸命に二人を引き離す事に成功し、二人の言い訳を聞く事にするのだが・・・
「だって、小さいから守ってあげないと」
「うん。それに、妹っぽくてかわいいから」
聞き飽きた言い訳だ。何故お前達が姉らしくするのか分からないが、いつから俺が妹になったのだ?意味が分からないぞ。
「それよりさ、三つ編みは解いてよ。絶対似合うから」
そして急に無茶な欲求をする一文字ことみ。俺はずっと三つ編みで居たいのだが、ダメなのか?三つ編み解いたら髪が邪魔になってうっとうしんだよ。
「ヤダ。これがいい。爺ちゃんが似合ってるって言ったからこのままがいい」
俺は言い訳を放つ。だが、この言い訳は真実なのだ。この前、爺さんに勝負を挑んで負けた時に、少しだけ俺の髪型について雑談したのだ。すると爺さんは『似合っているよ~。かわいい、かわいい』と微笑みながら俺の頭を撫でてくれたので、俺は無邪気な笑顔を浮かべて笑って、その笑顔を見た爺さんの生徒・・・主に女子が俺に抱きついたり、頭を撫でたり・・・あれは今でも恥ずかしい。
閑話休題。
「え?美仁香ちゃんっておじいちゃんっ子?かわいー♪」
「で?で?そのおじいちゃんの前で美仁香ちゃんはどんな顔をするの?かわいいの?」
爺さんの話題に食いついたようだ。俺は、仕方なくその話題に付き合う事にしたのだが、宮川綾の質問である爺さんとの接し方は恥ずかしくて言えないのだ。それもその筈、俺は爺さんの前では無邪気な子供なのだ。そんな無邪気な俺を見たら一体どうなるのだろう?考えるだけでも頭が痛くなる。
「ほ、ほら、それより、劇の練習やろっ。ね?」
俺は慌てたフリをして二人を急がせるが、何だか釈然としないと二人の表情が手に取るように分かるが・・・これからは爺さんの話題は控えめにしておこうと誓う俺なのであったーーー。




