第16話 日常とクリスマス
交番へと行って大原さんや安藤さん、それに菜々子さんと出逢って数日が経ったある日。
いつものように朝練、朝シャワーを済ませ、三つ編み姿へと変貌し、飯も食べて赤いランドセルを背負い、小学校へと行く為に地区ごとに編成される集団登校という形をとり、学校へと向かっていた。
俺達の小学校への通学路は公園の前を必ず通る為、おのずと交番も視界に入るのだ。しかも、その交番の前に立っている警官からも俺達が登校する姿もハッキリ見える位置なので、俺を知っている者がいたら俺がいる事なんてバレバレなのだ。
「おーい!美仁香ちゃーん!おはよ~」
俺の姿を発見した安藤さんは歯をキランと光らせ、俺に向かって手を振り挨拶するのだが・・・こんな所で俺の名前を呼んで欲しくないぞ。俺の名前を知りたいロリコンが荒い鼻息で耳を立てるかもしれないだろうが。
俺は無視したいのだが、九重有や一文字ことみと麗香他多数が俺をじっと見つめているので、なんだか挨拶しないといけない雰囲気だったので安藤さんに向かって小さく手を振り
「お、おはよ~・・・」
小さめの声で挨拶。
が、それがいけないのか、安藤さんは俺に向かって猛ダッシュしてくるので、俺達は何事かと棒立ちしてしまう。
「こらこら、そんな小さい声で挨拶するものじゃありません!もっと大きくハキハキとっ!はいっ!もう一回!」
安藤さんは俺のみを見て、もう一度挨拶するようにと説教。はぁ、大きい声ならいいだろ?安藤さんよ。
「おはよっっ!!」
「おおっ!そうだ!その元気いっぱいな声で挨拶だ!はっはっはっはっは~」
安藤さんは俺の赤いランドセルを軽くペシペシと叩き、その顔には歯をキラーンと光らせイケメンスマイル。くそ暑苦しいなぁ。
その暑苦しい安藤さんは笑いながらも交番の前へと移動し、しっかりと持ち場に立ち、にこやかな表情を浮かべ手を振る。やっぱ、暑苦しいが・・・そっとしておく事にした。
「す、すごいっ!美仁香ちゃんお巡りさんとお友達なんだ!いいなっ!」
一文字ことみは興奮している。まぁ、気持ちは分かるな。だって、警官と友達だなんてなかなかいないだろう。
「ぼ、ボクもお巡りさんと友達になりたいけど、どうしたらいいのかな?美仁香ちゃん!」
今度は九重有が大興奮。だが、九重有の質問には正直答えられない。やつらが俺に興味があるだけだからな。はぁ、なるべく俺への興味を示させないように気をつけたのだが、焼け石に水。馬耳東風且つ馬の耳に念仏だった訳だな。
「わ、分からないね~。何だか知らないけど、気づいた時には友達になったんだ」
「「へぇ~」」
「何かやらかしたと思ったわ・・・」
二人は何とか納得してくれたのだが・・・また警官と友達になりたいなんて言ってきたらどうするべきだろうか?うーむ、どう言い返すべきなのか・・・分からん。そして麗香よ、俺が警官の御用になった事を危惧したのか?そんな事はビビリなので無理な話だ。
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学校が終了し、九重有と一文字ことみと共に帰宅する事となり、下校。
またも、公園前を通るので交番もハッキリと見えるのだ。
イヤなら別の道に行けばいいのではないか?と思ったのだが、九重有や一文字ことみも同行しているし、何よりも他の道だと遠回りになって帰る時間が少し遅れるので、九重さん家や一文字さん家のご迷惑になるのだ。
「あっ、美仁香ちゃん!」
俺達が下校していると、交番前付近から聞き覚えのある女性の声が聞こえたのだ。
「あ、菜々子さんっ」
そう、菜々子さんだ。女性としても憧れる存在。しかし、菜々子さんを発見した為か嬉しさのあまり菜々子さんと呼んでしまったのだ。まだそんな関係では無いのにな・・・
「・・・はっ。み、美仁香ちゃん私の名前を覚えてくれたんだ!ありがとう♪」
菜々子さんは俺から名を言われたら少しだけ間を置いたのだが、やっぱりおこがましいのか?うーん、ならば橘さんと言うべきだったのだろうか?
「またお巡りさんとお友達?いいなー」
またも一文字ことみが興味を示すのだが、好奇心旺盛の子供だから興味を示さないなんて事はないだろう。
「その子達は美仁香ちゃんのお友達?」
俺達との目線を合わせる為に菜々子さんはしゃがみこみ、九重有と一文字ことみの存在が気になるご様子。俺は頷いてこいつらは友達だということを示し、微笑む。
「・・・?!!そ、そぉなんだ~。じゃ、気をつけて帰ってね?みんな」
「「「うんっ」」」
俺達は奈々子さんに手を振り、我が家へと向かっていったのであったーーー。
「きゃっ♪ホントにガマン出来ない~♪次、会ったら抱きしめたいな~」
奈々子さんは両手をクロスして肩を抱き寄せる形をとりクネクネと可愛らしく動いていた事を俺が知る由も無かったのだーーー。
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時は流れて、12月25日。所謂、クリスマスである。
身が凍える程寒い季節となり、コートだとかマフラーだとかあらゆる方法を用いて暖をとる街の人々達。
俺達西園寺家の兄妹及び母親は商店街へと足を運んでいたのだ。父親はそんな日でも仕事なのだが、仕方ないと思う。何故なら命を救う医者という職業だから。
俺達は九重さん一家と一文字さん一家に遭遇し、母親達は雑談を交わしていく。
その話が長くなりそうだったので暇になったのか九重有と一文字ことみは俺の姿を発見し、ニコニコした表情で近寄る。
「ねぇねぇ、サンタさんに何をお願いした?」
「サンタさんはいい子にしていないと来ないんだって」
一文字ことみと九重有は子供らしく無邪気にサンタという存在を信じきっていた。いやいや、だってサンタは・・・いいやっ!ここで子供の夢を奪ってはいけない気がするぞ?!俺は今欲しいモノがあるのか脳内で検索し、ある答えがヒットしそれを口にした。
「強さ。誰かを守る事が出来る強さ。僕は、そんな強さが欲しい」
「「・・・」」
二人は絶句。普通の女の子ならば可愛い洋服だとか可愛い人形だとか可愛いぬいぐるみだとか言う筈だろうが、俺は女の子だけど女の子じゃない、その矛盾さ。だからこそ、変な願いとなったのだ。
そして、サンタはそんな願いなんて叶えられる事は不可能だ。どうやって強さをプレゼント出来るものだろうか?強さをプレゼント出来るサンタがいるのならば今すぐ来い。
「わー!いいなー!私もそれ欲しい!」「ボクもっ!」
二人は大興奮。ちょっとサンタを困らせる願いなのだが、俺の願いが心に響いたのか強さというプレゼントに心躍る。
「いやいや、そんなモノ無理でしょう美仁香」
「ホントにお前ってやつは・・・」
麗香と透は反論を言うのだが、本当に無理なのか?サンタはいい子にしていたやつにプレゼントするのだろ?それも、そのいい子の願っているプレゼントをよ?
「えー?!無理なのぉ?!サンタさんだから大丈夫だよー」
「そうだそうだー!サンタさんはきっと強さをプレゼントするんだー」
子供達は何故かサンタは神様か何かと勘違いしているのだろうか?強さをプレゼント出来ると主張するのだ。
「わ、分かったからっ。そうだね、サンタさんなら出来るね。ね?透」
「おう、サンタに出来ない事なんて無いだろうな」
仕方なくサンタが強さをプレゼント出来る事を証明する。はぁ、ごめんよどっかにいるサンタさんよ・・・俺のせいで何か訳の分からない事を言ってしまうかもしれない九重有と一文字ことみをどうか宥めてくれ・・・
俺達は買い物を済ませ各自我が家の方角へと足を運び、帰っていく。九重有と一文字ことみは母親らしき人物と手をつなぎ、サンタのプレゼントに期待していたのであったーー
「ねぇ、有君。サンタさんから何が貰えるかな~?」
「強さ!強さが欲しいよ!お母さん!」
「ことみちゃん?サンタさんに貰うプレゼント何に決めた~?」
「強さ!強さだよ、ママ!」
九重家、一文字家の母親達の反応はというと・・・
「「は?」」
キョトンとするしかなかったのであったーーー




