第15話 近所のお巡りさん
不良に絡まれた日から数日経ち、休日。
平日は登下校時に大原さんに会い、大原さんから来るならお昼の二時くらいにね、と言われたのでその時間に交番へと行く事にしたのた。母親には、警官から交番に来るように言われたとは言わずに友達の家に行くと伝え、了承を得たのだ。
何故うそをつくか?分かるだろ?交番に来るように言われただなんて、血相を変えて何の事件を起こしたのかとか言われかねないからだ。
いつもの三つ編みが家を出て、公園前にあるという交番へと向かう。ちなみに、三つ編みは寝る前や風呂の時以外は外すつもりなんてないので、今回もフィッシュボーンなのだ。
閑話休題。
俺は交番前へと着き、俺はそぉっと交番の中を覗き見ると、大原さんは交番の警察官専用の制服を身に纏い、机に向かって必死に仕事をしているのが分かる。交番の中はどうやら大原さんだけ。しかし、他にも机と椅子が数組ある事からこの交番には大原さん以外の人物がこの交番にて勤務しているのが分かった。
でも、やっぱり入るのが不安だ。怖いなぁ、こんな事初めてだし、不安過ぎて俺の眉は八の字のように弱々しい姿へと変貌。傍から見たらやたら可愛らしい女の子が警察の仕事に興味があるのか交番の中を覗いてその表情は怖いけど、やっぱり見たいという好奇心旺盛の子供だろう。が、しかし、実際はそうでは無いのだ。
「あら?どうしたの?お嬢ちゃん。何か用があるのかな?」
後ろから急に声をかけられた事に俺は
「にゅあ?!!」
変な声を出してしまったのだ。
俺は変な声を出した事の恥ずかしさと声をかけられた事の驚きで、顔に朱を浮かべてしまうばかり。
その表情のまま後ろを振り返ると、この交番の警官・・・いや、婦警なのか交番の警官専用の制服を身に纏っている。
俺は背が低い為、まず膝より上5センチ程のスカートが目に行く。そして、上半身に目を向けるとばーんと強調される程の乳。
更に上を見ると、すげぇ色白のお姉さんの顔が見えたのだ。しかも、細い顔で口や目や鼻はバッチリ整っているスゴい美人。
そんな美人に見とれていると美人さんは
「お嬢ちゃん、何か困っているのかな?」
美人さんは座り、俺の目線に合わせてしっかりと俺と美人さんは見つめ合う。それが恥ずかしくて恥ずかしくて
「はぅっ」
多分、俺の顔は真っ赤だろう。
「どうしたんだ、外で騒々しい。」
大原さんは外にいる俺達の存在に気づいたのか交番の外へと出て、俺と美人さんを目撃。
「おおっ、来たのか!美仁香ちゃん」
まず俺がいる事に嬉しがる大原さん。
俺はそんな大原さんを顔を真っ赤にしたままに、そして目をうるうるとさせたままで大原さんを見ると
「うっ!!・・・ぁ、ああ。早く入りたまえ」
何故か俺を見て呆ける。何だろう、俺が泣いていると誤解したのかな?
大原さんのリアクションに戸惑いながらも、俺と美人さんとで交番へと入っていくのだ。
ーーーーーーー
「はい、どうぞ?美仁香ちゃん」
「あ、ありがとうっ」
俺は交番の中にある椅子を用いて座るのだが、その椅子の前にある仕事机がある事に驚きを隠せない。
美人さんは俺の為にオレンジジュースを与えてくれるのだが、何でそんなものがあるのか・・・俺は考えるのをやめた。
「こほん、それではこの前起こった悪い人達に絡まれた・・・いや、怖い目にあった話なんだけどね?」
大原さんは小学生相手にも分かるように時折分かりやすいように言葉を選んで喋っていくのだが・・・俺は一体どうしたらいいんだろうか?素?それとも子供っぽくするか?でもそれなら、演技が必要だが警官にうそだとか演技だとかをやってしまったら、とても悪い気がするのは俺の気のせいだろうか?
「う、うん」
俺は素でいく事にした。が、緊張のあまり子供らしくなったのは俺の気のせいか?
「あの時、遠目だけどハッキリ見えたんだよ。小さい子供が学ラン着た学生を投げた所をさ。しかも、女の子がね?」
ギクリ。それは俺だろう。しかし、知らぬ存じずで通すにはいかない。でも、まだ何かあるかもと信じて大原さんの話を最後まで聞く事にしたのだ。
「で、あとちょっとでその悪い人達の所に着ける場所まで走ったんだけど・・・また、その女の子がもう一人悪い人をやっつけたんだよ。で、その女の子の顔とか髪型とかバッチリ見れる距離だったから見てみたらさ・・・」
もう、無理だ。ここまでハッキリされてはどう言い返そうと無理だ。言い返せる方はどんどん来てくれ、そして何とかしてくれ。
「キミだったんだよ。美仁香ちゃん」
「ええ?!!」
美人さんは驚く。それはそうだろう、まだ小さい女の子が不良共を倒すなんて信じられない話だろう。俺も絶対信じないがな。
「そ、それ、本当なんですか?大原さん」
「そうだ。この目でバッチリ見たんだよ。菜々子君」
大原さんは美人さんを見て名前らしき言葉を言うのだが、美人さんの名前は菜々子なのか?よ、よし、覚えておこう。
「ね、ねぇ、本当なの?」
菜々子さんは上司らしき大原さんの言葉を信じられない様子で、俺の目を見て真相を聞きたがっているので話す事にしたのだ。
「そ、そうなんだ。このおじさんの言う通りだよ」
「?!!そ、そなの・・・わ、悪いけどやっぱり信じられないわ・・・」
当の本人での証言さえも信じられない様子の菜々子さん。ま、それもそうだろうな。大原さんとグルになってからかっていると認識するしかあるまい。
「オレだって信じられないさ。バッチリと見たのにな・・・警察、向いてないのかな~・・・はぁ」
大原さんは頭を抱えてため息を吐きながらも弱音を吐く。それに乗じてか菜々子さんもため息を吐いてしまう。
「只今パトロールから戻りました!異常なしです!」
大原さんや菜々子さんが落ち込んでいる中、新しい警官が参上。そいつも、美男の類に分類される二十代くらいの若い男性。一体、この交番はどうなってんだ?美男美女しかいないぞ・・・まさか、そういう人物しか雇わないのか?この交番は。
「あれ?お客さんですか?それにしても可愛らしいお客さんですね。お嬢ちゃん、お名前は?」
美男の男性は俺の目線を合わせるように中腰になって、俺の名前を聞きたがっている様子。なので、名乗ってやる事にした。
「さ、西園寺美仁香っ」
「そっかそっか。えらいね、ちゃんと名前言えるんだね?」
美男の男性は俺の頭を撫で回し、その笑顔には女性を口説き落とす事つが出来るイケメンの表情を浮かばせていたのだ。く、くそ腹立つ。
「僕は、安藤隼。ここで働いているお巡りさんだよ?よろしくね美仁香ちゃん」
安藤さんは微笑みを浮かべ白い歯をキラーンと光らせるようなエフェクトが見えたような気がしてたまらない・・・マジで苦手なタイプかもしれない。
「よ、よろしくね?」
若干顔を引き気味にしながらも、安藤さんと固い握手。う、うわぁ、なんか・・・イヤ。
何となくイヤ。
「うん♪よろしく」
安藤さんはまたも歯をキラーンとさせる暑苦しさ。なんだかもったいないイケメンだ。
「うん?そいえば、美仁香ちゃんさ。苗字って西園寺だよね?って、事は・・・豪三っていう人・・・家族にいる?」
何とっ!俺の爺さんの名前が安藤さんの口から出た!スゴい顔の広い爺さんな事だな。
「うん、いるよ?爺ちゃんが合気道?のスゴい人だってさ」
俺に興味を持たれたくないので今まで敬語は使わない事に慣れてきた。う、うーむ、少しばかり気をつけないと・・・でも、俺は子供だしいいか。
「や、やっぱり!さ、サインとか貰えないかな?」
「ど、どうだろう?」
安藤さんは大はしゃぎ。大原さんと菜々子さんはそんな安藤さんを見てキョトンとするしか無い。
「いいなぁ、組み手・・・いや、お爺ちゃんに投げられた事は?」
「あるよ?一回だけぶんって」
「いいなぁー!!」
安藤さんは更に大はしゃぎ。大原さんはそれを見かねて、眉間にしわを寄せ威嚇する。
「コラ!安藤!職務中にたるんどるとは何事だ!」
「うっ、すみませんっ!ついっ!」
「まったく本当にのんきな奴だ」
へへー、怒られてやんのー。でも、少しだけ同情してしまった。
「あ、あの、その豪三さんってどなたですか?安藤さん」
「え?!知らないんですか?!西園寺豪三さんの事ですよ?!」
「西園寺?そういえば、この子の苗字も西園寺だな」
大原さんと菜々子さんは格闘技に疎いのか、爺さんの名前を聞いてもキョトンとする。ま、大体の人はこうなるけどな。
「この子のお爺さんは世界最強の合気道の達人ですよ!」
「「ええ?!!」」
大原さんと菜々子さんは驚きの声を上げ、二人は俺を見つめる。まさかとは思うが、爺さんに合気道を教えてもらってその合気道を使った。とか思ってはいないだろうな?
「な、ならこの子もその合気道で?」
「だろうな」
ほーら案の定そうだ。かく言う俺もそういう立場ならそう思うしかない。
「ど、どういう事ですか?大原さん、橘さん」
全く訳の分からないという表情を浮かべるしかない安藤さん。
それよりも菜々子さんの苗字が出たな?でも俺は菜々子さんと呼ぶぞ。異論は認めん。
「実は、この子合気道を使って不良達を倒したんだ」
「ええ?!!この子が?!!でも、ありえる話ですね」
「もう、そうだとしか思えない話になってきたわね」
ここで俺が八極拳を使っているなんて言ったらまた大混乱になるだろう。だってさ、爺さんが合気道使っているのに、なんでまた違う武術やってたのか?だとか聞かれるだろ?俺は合気道を使える少女としてここにいるとしよう。
「はぁ~、しかしいくらその世界最強の合気道の達人の孫だからって、人とか投げれるものか?まだこんなに小さいから怖がると思うけど・・・怖くなかった?美仁香ちゃん」
大原さんは優しい顔で俺に怖くなかったのかと聞いてくるが、ここで怖くなかったと言えば更に俺に興味を持つだろう。だから、俺は
「こ、怖かったよ?でも、友達が怖がってたから僕が助けなきゃ、って思って身体が勝手に」
大原さん達に遺伝子的に不良達を倒す事が出来たみたいな事をほのめかす。これが最大限の言い訳なのだ。他にあるか?バレない方法。
「うん、えらいね。でもね?危ないと思ったら大声だして助けを求めないといけないんだよ?美仁香ちゃんはまだこんなに小さいし、女の子だからね?無理しちゃいけないんだよ」
安藤さんは俺に語るのだが、もし俺が男なら無理してもいいみたいな言い方だな。でも、男ならどうするんだ?まぁ、なんだかんだで説得するからな警官は。
「う、うん分かったよ。今度から助け呼ぶから」
俺は警官達に今度から助けを求めると言ったのだが、そんなに不良達とか絡まれる事ってなくね?と思ったので普通に助けを求める事を誓う。
「うんっ、えらいっ。じゃ、もうこの話は終わりっ。帰ってもいいよ?」
大原さんはニコッと笑い、俺をやっと解放してくれて、俺は大原さん達に一礼して我が家へと帰っていったのであったーー。
「それにしても・・・かわいー!♪何なの?あの子っ。ガマンするの大変だったー!」
「何をですか?橘さん」
「抱きしめるの」
この交番でも俺の人気がある事を俺は知る由も無かったのだーーー。




