エピローグ
――二百年後。
王都、国立美術博物館。
「教授、例のものをお借りしてきました」
「おお、待っていたよ、エリオット君。例の――“流浪の画家”ガルドの自画像ではないかと目されている作品だね?」
「はい」
「早速、見せてくれたまえ」
エリオットは白い手袋をはめると、箱から一枚の絵を取り出した。
「これが本当にガルドの自画像なら、世紀の発見だぞ」
「ええ。ガルドの自画像は、これまで一枚も見つかっていませんからね」
机の上に、絵を広げる。
「…………」
「…………」
二人は、まじまじと見つめた。
そこには、一人の男が描かれていた。
大柄な体躯。
鋭い眼光。
頬には大きな傷。
「…………」
「…………」
「エリオット君」
「はい」
「どう見ても悪人じゃないか?」
「……そうなんですよね」
「まったく画家には見えんぞ」
「僕も最初、賞金首の人相書きだと思いました」
「やはり、そうか」
「ただ、名前も罪状も何も書かれていないんですよね」
「文字を入れる前だったのでは?」
「なるほど」
「…………」
「…………」
二人はもう一度、絵を見る。
「どう見ても、賞金首の人相ですね」
「うむ。画家の顔ではないな」
「でも、おかしいんですよ」
「なにがだ?」
「この絵、ガルドと生涯親交があった神官の遺品から見つかったんです」
「ああ。ガルドが生涯描き続けた三人の女性、その一人だね」
「はい。しかも、この絵をずっと大切に保管していたようで」
「ふむ……」
「だから、ガルド本人ではないかと思ったんですが」
「…………」
「…………」
二人は、また絵を見る。
「これがガルド?」
「……ないですかね」
「ないだろう」
「ですよねえ……」
エリオットが肩を落とした。
「世紀の発見だと思ったんですけどね」
「まあ、いいじゃないか」
「え?」
「たとえ賞金首の人相書きでも、相当な価値がある」
「ああ」
「なんせ、あのガルドの作品だからな」
「そうですよね。あのガルドの作品ですからね」
「うむ」
「…………」
「…………」
エリオットが首を傾げた。
「しかし――」
「ん?」
「本当に、誰だったんでしょうね。ガルドって」
「ああ」
教授は頷いた。
「誰なんだろうな」
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
最後までお付き合いいただけたこと、とても嬉しく思います。
ガルドたちの旅はいかがだったでしょうか。
少しでも楽しんでいただけたなら、作者としてこれ以上嬉しいことはありません。
そして――明日から、新しい物語の連載を開始します。
『儚げな猫耳美少女奴隷を買ったら、返り討ちで下僕にされました』
ネタタイトルではありますが、中身は至ってまじめです。
「自分だけのヒロインが欲しい!」
そんな甘い妄想を抱いていたダメ冒険者アルジャン。
しかし、その夢は第一話で完膚なきまでに打ち砕かれる。
強烈な関西弁を操る猫耳少女コルネに振り回され、パシリにされながらも、旅の先々で「痛み」を経験し、少しずつ成長していく。
威厳ゼロの下僕男子と、型破りな猫耳少女。
二人が目指すのは、コルネの故郷――ヴァルザック山脈。
明日から始まる新しい異世界ファンタジー旅も、ぜひ読んでいただければ嬉しいです。
それでは、また次の物語でお会いしましょう。
最後まで本当にありがとうございました!




