3 異世界の洗礼
「あの時、後戻りすればよかった。」
勘太は心の底からそう思った。ケン太とは、引き離された。どうして、こうなったのか全くわからない。
異世界の裏山を下りて行ったら、湧水と同じ場所に小川があった。触ったら、温かかった。
「ケン太、これは温泉だ。でも、あっちでは湧水の場所だよな。」
「ワン。」
温泉は、湧水と同じで左右に溢れている。そして、両側とも池になっていた。湧水と同じだ。
「ケン太、ここって異世界じゃあなくて、パラレルワールドか?」
「ワンワンワン。」
違うのか。でも、これまで温泉以外あっちと全く一緒だ。
温泉を渡ると、見事に花が咲いていて、果物がなっている。まるっきり裏山だ。でも、蜂の巣が無い。違うことにちょっと安心する。
そこを抜けると畑がある。畑にも、見事な野菜たちがなっていた。
畑の先に家があった。家は、さすがに俺んちとは建築様式が違う模様だ。だが、家の位置は同じだ。
「ケン太、誰か住んでるのかなあ?俺たち不法侵入だよな。」
「ワンワンワン。」
違うらしい。でも、どっちの返事だ。
とりあえず、家に向かう。呼び鈴があったので、チリンチリンと鳴らしてみる。返答はない。声を掛けてみるが、やはり誰も出てこない。家を一周したが、誰もいなそうだ。
「ケン太、この鍵を試してみてもいいかなあ。」
「ワ~ン。」
ケン太も迷っているが、勘太は無謀にも台座にあった鍵を使ってみた。そしたら、開いてしまった。勘太は、家の中を見ることなく鍵を閉めた。
「どうしよう。ケン太、開いちゃったよ。」
「ワンワン。」
ドアのことは、忘れることにした。
取り合えず、ちょっと先にある門を出ることにした。門の先は一本道だ。
「ケン太、もしあっちと同じだったら、かなり歩くよなあ。俺は、あんなに歩けないぞ。」
「ワンワンワン。」
ケン太は、違うと言っている。それを信じてしばらく歩くと、街が見えてきた。
「ケン太、街だ。」
「ワン。」
勘太は、街を確認したことで、異世界一日目は、満足した。
「ケン太、今日はここまでで帰ろうか。異世界の街も遠くからだけど、確認したし、帰って美味しいご飯を食べよう。」
「ワンワン。」
ケン太も賛成らしい。
戻ろうとしたが、遅かったようだ。街の中から、数人が走り寄ってきた。地球と同じような格好をしている。ちょっと、安心した勘太だが、裏切られてしまった。
「おい、お前。今、そっちの道から出てきたな。」
勘太とケン太のきた道を指差し聞いてくる。少し怒っている声だ。
「はい。」
「そっちは、さるお屋敷しかない。後は国有地だ。なんのためにお屋敷に行った。」
何の為なんて説明できない。躊躇っていたのが悪かったのか、
「怪しい。ついてこい。」
ついてこいと言うのに、勘太の体は束縛されてしまった。ケン太は、首輪に縄をつけられ、街の外の木につながれてしまった。それでもケン太は抵抗しない。勘太は、ケン太を見て、抵抗しないことに決めた。
「ケン太、しばらく我慢してくれ。何とかわかってもらえるようにするから。そしたら、早く帰ろうな。」
「ワンワン。」
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