2 異世界への第一歩
湧水でケン太が水を飲み一声。洞窟では、手水舎の間でお清めして、霊廟へ。相変わらず、ヒカリ苔が洞窟を照らしてくれる。
この洞窟は、手前は暗いんだが、奥はヒカリ苔が生育していて明るい。手水舎の間は、苔からの水が溜まっているところがあり、神社にある手水舎に似ているから勝手に手水舎の間となずけた。手水舎は腰高のと低いのがあり、ケン太もお清めできるんだ。ケン太は足まで清めている。だから、俺も長靴ごと入って、お清めしている。その奥にお墓があり、異世界の扉がある。
霊廟では、ご先祖様にご挨拶。初代様のカイジンに、
「これから初代様の世界に行ってきます。ご報告を楽しみにしていて下さい。」
「ワンワン。」
すると、初代様の台座にカードと鍵が置かれてあった。
「太ンタ、また鍵だ。今度はどこの鍵だろうな。カードは何だろう。でも、持って行けってことだよな。」
「ワン。」
扉は、鍵を差し込むと開いた。でも、俺のビビりが発動して、鍵を閉めてしまったんだ。もう一度深呼吸して鍵を開けようとしたら、鍵を使うことなく開いた。二度目は持っているだけで良いみたいだ。俺は、またもや躊躇しちゃたんだよ。この期に及んでね。情けない。
けん太が不思議そうに俺を見ている。扉を少し開けたまま動かない俺に呆れたのか、ケン太が見えざる地に一番乗りしっちゃったんだ。
「ケン太、俺を置いていかないで。」
思わず、叫んでしまった。
「ワン。ワン。」
早く来いとばかりに吠えている。向こうに行ってもケン太には変化がない。大丈夫そうだ。でも……。俺は、未知の世界に足を片方だけ踏み入れる。二歩目が続かない。そんな俺を見かねてか、ケン太が飛びついてきた。俺とケン太は、現実世界に尻餅だ。戻ってしまった。
「ワ~ン。ワン。」
ケン太が、情けなさそうだ。俺も情けない。意を決して再度挑戦だ。一歩、二歩と足は出た。俺は、見えざる地に立っている。
立っているんだが、薄暗い。よく見ると洞窟だ。ヒカリ苔だろう苔が光源になっている。肩透かしを食らったようで、緊張がなくなった。
「ケン太、ここを通って行くのかなあ。」
「ワン。」
異世界の扉を開けると、広い洞窟だった。その洞窟を抜けると小さな洞窟がある。まるで、裏山の洞窟みたいだ。ただ、お地蔵さまはいない。手水舎はあった。ケン太が水を飲もうとしたから止めた。用心には越したことは無いからね。その先は、暗い。でも、何となくわかる。きっと、裏山と同じだ。ケン太の案内で先に光が見えた。そこを目標に静かに歩く。用心、用心だよ。
洞窟の外は、裏山そっくりだった。やはりと言うか予想通りだった。
勘太は、既に疲れていた。精神疲労が半端なかった。
「ケン太、ちょっと休ませてくれ。」
「ワ~ン。ワ~ン。」
しょうがないなあとでも言っているようだ。勘太の隣におそわりして、勘太の手をなめている。
水筒の水を飲んで、ケン太にも飲ませる。一瞬、このまま戻ろうかと頭をよぎる。また、くればいいのだ。今日はここまで。
俺は、こんなに臆病だったのか?己の小ささに驚愕する。反対に、ケン太は期待で目が輝いている。
「そうだな。お前がいるんだ。」
「ワンワン。」
「行こうか。」
「ワン。」
「引き返せばよかった。」
「ワ~~ン。」
切実にそう思ってしまった。
読んでいただいて、ありがとうございます。




