第二章 助けての声 1
ネオ大江戸での一件から、無事に観光も済ませた翌日。
私、スーさん、カカさんのかしましい女三人の旅路は、順調に次の街へと足を進めることにした。
向かう先は、ネオ大江戸から北の大地、瑠璃の都へ!
……の、はずだったのですが……。どうしてこうなってしまったのでしょう。
油断していた……としか、言いようがありませんね。
思わずひとりごちりたくなるのを我慢して、私は籠の中で揺られていた。
人が一人ようやく入れるかといった小さな籠は、普段は荷物を運搬するのに使われているものだろう。真っ暗な籠の中に閉じ込められているせいで、いったい今、自分がどこに向かっているかもわからない。
……まさか、人攫いに遭ってしまうなんて。しかも、あのスーさんとカカさんの隙を狙った一瞬で……。ということは、相当の手だれでしょうねぇ。
不幸の中の幸は、私を攫った人たちが、私の正体に気がついていないということだった。
だって、そうだろう。大奥の七姫の一人を攫ったとわかっていたら、きっと、私に逃亡される前に、早々に私を売り飛ばそうとするだろう。それか、どうしても私を運搬しなければいけない理由があるのだとしたら、私の拘束をもっと強固なものにして、睡眠薬でも使って眠らせているはずだ。
それなのに、いまの私は、手枷・足枷もなければ。眠らされてもいない。
ただ、籠の中に囚われているだけだ。
……つまり、私の正体には気がついていない。
そのことが、なんとか私の命と安全を保証してくれるはずだ。
少なくとも、いまのうちは、だけれど。
……それにしても、どうやってスーさんとカカさんに連絡をとりましょうか……。
私は着物の半衿の中に隠していた、高速簡易音声伝書鳩を取り出した。これを使えば、確実にスーさんたちと救助連絡を取ることができるだろう。だけど、もしも、デンショバトを飛ばすところを人攫いに見つかってしまえば、私の身の安全は一気に危うくなることも、容易に想像できる。
……ここは、無理に動かないほうがいいかもしれないわね……。
こんな時、前世の私が貴族であったことが役に立つ。貴族の娘というのは、ことあるごとに政治の道具に使われるために、人攫い、夜這い、夜襲に奇襲、なんでもござれなのだ。
もちろん、いまの私、皇凛も七姫の一人。
それ相当の教育を受けている。それは、護身術も然り、だ。
私は、一抹の希望を胸に、一つの案を思いついた。
……遅かれ早かれ、休憩のために籠の歩みは止まるはず。そうなった時が、私のチャンスですね。
その好機を逃さないためにも、私は、じっと耐えることを選んだ。
今はただ、ひっそりと息を潜めましょう。
うっかり殺されないように、祈りながら。
そう、もしかして、彼ならば。いまの私を、容易く救い出してくれるだろうから。




