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最初の村ⅴ

バタバタと暴れられ、勇者ノウムは徐々に傷が増えていく。体力はもう底をついている。これは意地の張り合いであった。

 アンデットの体は脆いというイメージがあったのだが、意外と硬く感じられる。手首は勇者ノウムの手で掴むことができるほどだった。肉がソゲ落ちた骨に等しい。

 とはいえども、体力勝負ではアンデットに利がある。残念ながら、アンデットには体力という概念はない。


「これは救援を呼ばないとダメかな」


聖職者の助けをかりられればあっという間に形勢逆転にまで持ち込める。だがしかし、夜も更けた頃合い。皆が眠っている頃合いに、勇者ノウムの声は届くだろうか。

 並々ならぬ気配に誰も顔を出さないところを見る限り、外に出ないようにしているのか、もしくは全員が深い眠りについていると考えている。完璧な戸締まりが裏目に出てしまった。救援は望めない。

 同じ体勢で数十分経過した。血からを込め続けた体は、ピリピリとした刺激が伝わりはじめた。体勢を変えたいが、隙を見せるわけにもいかない。根性のみで耐えてきたが、夜明けまで二人きりは辛い。

 どうすることもできず、勇者ノウムは空を見上げた。巡回の明かりが見られればと望みをかけた行為だった。すると、見上げた顔に何が覆い被さる。それは口に入り勇者ノウムは、咄嗟に口の中の異物を吐き出そうと咳き込んだ。なんともいえない粒感と、無味な塊が口の中に広がる。

 片手で拭うと、月明かりに照らされてそれが土であると分かった。


「誰かいるのか」 


穴の外に声をかける。村人であれば助けてもらえるかもしれない。ノアを引っ付かんで来てもらえば事件は無事解決だった。だが、声に返事はない。無言で土をかけられる。


「私は勇者だ。ノウムという。誰だ、名乗ってくれないか」


もう一度声をかけた。しかし返事はない。

 村民であれば、事情を知っているはず。にもかかわらず動きを止めないということは、こちらに害意があるとみて確かだろう。

 生き埋めになる前に脱出することは容易である。だが問題は別にある。今抑えているアンデットがどう行動を取るか読めない。

 手を離した途端、逃走するまたは勇者ノウムに襲いかかれば僥倖。村に向かわれては、体力にそこがついた勇者ノウムは追い付けない。

 それまでにノアが追い付いてくれればいいが、最悪の場合多大な犠牲を出すかもしれない。勇者ノウムは選択を迫られたが、声を張り上げ続けた。その声を聞いて村人かノアが駆けつけてくれることを願っていた。

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