最初の村Ⅳ
勇者ノウムが縄を引いた瞬間、罠が作動する。急拵えの捕獲用の網が、アンデットに覆い被さった。
手先が器用であったことにこれほど感謝する日はもう無いだろう。頭を悩ませた勇者ノウムは辺りに落ちていた縄を拾い集めて、荒い網を作り出した。
だが、そう大した足止めにはならない。アンデットは何処からともなく巨大な鎌を取り出すと、網を引き裂く。
そして再び勇者ノウムを無視して、村の方へと進もうとする。アンデットにとっては、まだ勇者ノウムは取るに足らない存在らしい。
そのまま進むアンデットに、勇者ノウムは次の手を用意していた。
僅かな月明かりが雲に阻まれ、辺りは暗闇に包まれる。
そして薄暗い中で、なにやら重々しい音がした。それは勇者ノウムが準備した次の罠_アンデットが落とし穴に落ちた合図だった。
「成功するかどうか不安だったけど、成功したようだね。ならば、することは一つ」
勇者ノウムは躊躇いなく、穴に飛び込む。
勇者ノウムが準備した罠は、単なる落とし穴ではない。相手からは逃げられない、空間である。
急拵えの落とし穴は、全速力で掘ったものの、勇者ノウムの2倍ほどの背丈しかない。アンデットはゆっくりであったが、確実に村へ進んでいた。相手の知力が不明であったため、勇者ノウムは急ぎ複数の罠を準備していた。そのため、一つ一つの罠は荒い。いずれかの罠が成功すればと思い、お陰で勇者ノウムは戦う以前から泥だらけである。
穴の中は狭い。それは狙ってはいなかったものの、幸いしていた。アンデットは大鎌を武器としており、開けた場所でなければ振るえない。それは勇者ノウムも同様であるが、相手と同じ土俵に立つことができた。
穴の中で、勇者ノウムはアンデットの上に立つ。逃げられないように押さえ込む。この罠は勇者ノウム自身が罠の一部となることで初めて、完成するのである。その方法しか勇者ノウムには思い付かなかった。
今回のアンデットはその辺のゾンビなどとは、比べ物にならない。何が原因か分からないが、その姿をみただけでも影響を与えるらしいことが分かっている。それはなぜかノアには効いて、勇者ノウムには効かない。勇者的なパワーなのかどうかも不明だが、今は深く考えないこととする。
勇者ノウムでは、アンデットを討伐できない。であれば、他の人間に倒してもらうしかないだろう。勇者ノウムは、それまでもちこたえる作戦に出た。
どうにかして勝つしかないのである。まさに死に物狂い。アンデットに、死に物狂いである。




