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最初の村Ⅲ

 アンデットが通りすぎるまでは、心臓の鼓動がうるさかった。今までにない緊張感に、勇者ノウムは震えを抑えきれない。

 勇者ノウムが隠れる木の丁度横を通るとき、アンデットは不意に足を止めた。何があったのか様子を伺うことはできなかった。ただ息を潜めて、心から見逃してくれることだけを願う。

 数分後、どういう訳かアンデットはまた動き出した。ゆっくりと歩いていく。動きに合わせて、何かを引きずるような音が聞こえていた。

 緊張感が薄れ、勇者ノウムは膝から崩れ落ちた。勇者ノウムにしがみつくようにして堪えていたノアだったが、そのとき限界に達してしまったらしい。ノアの肩に頭を預け、動かなくなってしまった。

 勇者ノウムは息を整えながら、ノアに触れる。息は乱れ、顔色は悪い。震えは収まったようだが、このまま目を覚ますかどうかも怪しい。一刻も早く医者に診せる方がいいだろう。

 森の中での戦闘は、武器を振り回せない。だが、村の中では十分に戦えない。ではどこで戦うべきか。勇者ノウムは考える。




 アンデットはふらふらと彷徨っていた。

 右も左も分からない。自分が誰だったかも、何をしたかったのかも。全て忘れてしまった。ただ、ぼんやりと憤りを覚えていた。それがアンデットとして生きる理由だった。

 村人を襲った理由は分からない。そう、言葉にするのであれば、寂しそうだったからである。死にそうな顔をして仕事をしている、勉強をしている、料理している。その姿が可哀想に見えた。

 だから、そっと囁いた。


ーこっちに来れば、楽になる。


目の前で命の灯火を揺らしただけなのである。それに彼ら彼女らは従っただけ。その後は朽ちようが死のうが気にはしない。命はもとから儚いのである。

 今夜は迎えに行くべき村人はいるのだろうか。それが誰か分からないが、考える必要もない。アンデットは、思考すらできないからである。今までの行動全て、自動化されていた。


「ちょっと待った!」


ふと、アンデットの背後から声をかけられる。だが、アンデットは足を止めない。わずかに指先が震えるぐらいだった。

 アンデットは生きている者の気配を感知した。だが、まだ迎えには早い。だから、相手にはしなかった。

 勇者ノウムは声をかけたものの、反応はなく、それは予想通りだった。一応の確認、話し合いという平和的手段を取れるかどうかの確認だった。

 そして、確認を終えた勇者ノウムは手にもっていた縄を引いた。

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