最初の村Ⅵ
ノアは頬に触れられた感覚で目を覚ました。体が異様に重く、視界が霞んでいる。記憶を辿り、勇者ノウムの姿を探すがどこにもいなかった。村民を放って逃げた可能性を考えたが、それは棄却する。彼は勇者ノウム。勇者という肩書きの重さを理解している。
そうであれば、勇者ノウムはあのアンデットを引き付けたと考える方が正しいだろう。村から引き離すことを真っ先に考えるだろうが、勇者ノウムらしき声は聞こえない。
もう討伐をしたのかもしれない。勇者ノウムの実力は不明だが、勇者に任命されるほどの力量の持ち主である。倒していてもおかしくはない。
聖職者の証である杖を取り出す。太陽をモチーフにした飾りを施されたそれは、司教であるノアに与えられたものであった。
杖をかざすと、辺り一面が照らされる。それは昼さながらの明るさであった。
「勇者ノウムさん、いらっしゃいますか」
声をかけるが、返事はない。聞こえる範囲にいないのか、もしくは死んでいるのか。ノアは聖職者であるが、生命探知はできない。むしろ無機質なものを探すことは得意ではあるのだが。
司教になるまでの道のりは長く、ノアは信者たちからのポイントを集めて成り上がった。迷子の子供探しから道端の掃除まで。善行を積めるまで積み上げてようやく手に入れたのである。あるときは指輪探し、金歯探しまでした。
その結果ノアは聖職者でありながら、金属探知という謎特技を身につけた。文字通り、金属を探すことに特化しているのである。殆どの聖職者としての術式は会得済。エリートと呼ばれるほどだった。
こんな偶然あっていいのかと思わずにはいられない。勇者ノウムは旅に出たばかりで、持ち金はそれほどない。だが、彼は巡回のために剣を手にしていた。その剣を探知できれば、勇者ノウムを探しだすことは可能である。
ノアの金属探知は特別な道具を利用しない。その体だけで可能である。方法は簡単で、勘に従うのみ。
その勘に従った結果は、森の中。村よりに随分進んだ場所だった。途中刻まれた縄が落ちており、勇者ノウムが何か行った跡だと思われる。方向は間違っていないと思われるが、そこには何もない。明かりで照らして見ても異常はなかった。
辺りには戦闘の痕跡はない。もしやノアの推理は外れていたのかもしれない。とある可能性がノアの脳裏をよぎった。勇者ノウムは、ノアの存在を忘れて村に戻った。一度は否定したが、全くないとも言えない。
ノアは一度村に引き返すことにした。




