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最初の村

 最初に訪れた村は、名前もない小規模の村だった。住民は三十人ほどで、村総出で果樹園を営んでいるらしい。

 勇者ノウムは最初の村ということもあり、緊張していた。しかし村の雰囲気は温かく、自身の故郷を彷彿とさせた。


「村長はいるかな。勇者として挨拶をしておきたい」

ー村長は急遽王都に行ってます。帰ってくるのもいつになるか…


村長が不在であったとしても、勇者ノウムとして変わることはなかった。国民が困っていれば助ける。それが、勇者である。

 村長が不在のため、代理で村を治めている村長代理に挨拶をした。人当たりの良さそうな好々爺で、根っからの農家らしい。高齢にもかかわらず、ボケもなく力仕事も進んで行うほどの体力の持ち主であった。

 椅子に案内され、座る。すると村長代理は、神妙な面持ちをしていた。その雰囲気に並々ならぬ事情を感じて、勇者ノウムは村長代理の言葉を待つ。


ー最近、突然村民が消息を絶つのです。原因は誰にも分からず、姿が消えてしまって。恐らく魔物の仕業だと思うのですが…

「心当たりは何もないのか。それはただ事ではなさそうだね」


勇者ノウムの初の大仕事は、村民が消える現象の正体を突き止めることだった。

 消えた村民の特徴はバラバラである。老人だったり、幼子だったり。時には集団で姿を消すこともある。共通した特徴は見られなかった。

 人にヒントがなければ、他に繋がるものを見つけるだけ。勇者ノウムは村で聞き込みを開始した。


 その聞き込みで分かったことは、以下である。

 居なくなった人物は村、もしくは近隣に住んでいる。

 住み始めて半年以上。

 一人暮らし、または一人で居ることが多い。

 

これらの情報は犯人を見つけるモノにはならない。しかし、次の被害者になるであろう人物を絞り出すことには役立つだろう。


ー住み始めて半年以上。これは何か意味があるのでしょうか。


 暇つぶしのために勇者ノウムについてきていた、ノアが口を開いた。

 確かに半年以上という期間は、何かの目安になるのかもしれない。その境目で何か特別な変化が起きて、その変化が犯人のターゲットになる可能性があった。


ー半年というと、ちょうどこの村では審議が行われるのです。村中の人を集めて、この村であった事件や事故などについて語り合います。議題は様々ですが、二日前に行われたばかり。議題は確か、村長の代替わりについてだったはずです。


 村長代理によると、審議は昔から行われているらしい。だが、昔は罪人などを捌くためのものであったとか。含みがあるのは、罰された人々の中には無実の人間も混じっていたからだ。

 現在魔人と呼ばれる、人ならざる者がいる。彼らは友好的な性格をしているものの、例外もいる。その例外たちが人に害をなしていた。

 魔人は人と見分けがつかない。そのため人に紛れて過ごすことが出来た。だが、悪を成す魔人にこれは利用されていた。


「その審議の後、行方不明になった村民はいますか」

ー確か、一人いたはずです。鍛冶職人で、村に十年近くなる男です。


 勇者ノウムは最後に行方不明になった男の自宅を訪ねた。工房と家の両方を兼ねているようで、ドアを開けると中には鍛冶に使うであろう道具が置かれている。

 家の中は争った形跡はなく、生活感が感じられる。洗濯物が干しっぱなしになっていて、主人の帰宅を待っていた。


「行方不明になったときのまま、保存しているんですね」

ーはい。行方不明になった村民の家は全てそのままにしてあります。


 その後、再び聞き込みをしたが収穫はなく、勇者ノウムは村の一角を借りて休むことになった。勿論、ノアも共に。


 夜遅くのこと。勇者ノウムは見回りの為、明かりを片手に歩き回っていた。

 原因不明の失踪事件はいつ起きるのか。いまだ不明であり、可能性を減らすために勇者ノウムができること。考えに考えた末に思いついたものが、見回りだった。

 もし犯人がいるのであれば、見回りを警戒して今後人攫いもできなくなるだろう。それが自分の意思から失踪した場合でなければ、の話になるが。

 

ー何か分かったんですか?


 暗がりの中、背後から声をかけられ勇者ノウムは片をビクつかせる。その様子を背後から声をかけたノアは、微笑みながら見ていた。


「いいや。なにもしないよりもマシだと、色々考えて思っただけだよ」

ー休むときに休まねば肝心なときに役に立ちませんよ。気をつけてください。


ノアはしれっと勇者ノウムの隣を歩き始めた。

 勇者ノウムはノアに気を許したわけではない。位の高さと、彼の性格を利用しているだけである。

 勇者になって初めて知ったこと。それは、勇者とてなにでも許された存在ではないことである。例えば検問に当然引っ掛かるし、貴族様に話すときにはマナーを尽くさねばならない。勇者とて所詮庶民にすぎなかった。良かったことといえば、ちやほやされることぐらいだろうか。

 暗闇の中は心細いが、以前ほど不安感はない。いざとなれば武器を使って戦えばいい。そう思えるだけ、勇者ノウムは成長したのだろう。


ー前に木が迫っていますよ。避けてくださいね。

「それぐらい見えているよ。暗闇には慣れっこなんだ」


明かりを持たずとも月明かりが道を照らしてくれる。仄かな光ではあるが、足下を見るぐらい造作もない。

 




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