最初の村Ⅶ
ノアは村に戻ると、勇者ノウムが居そうな場所を探した。まずは村長代理の家、荷物を置いた宿、失踪した村民の家。そのどこにも勇者ノウムの姿はない。
「すれ違った…のかもしれない」
一度外出してから宿にも、姿を見せていないらしい。寝ていた村長代理を叩き起こしたが、寝ぼけ眼で誰も来ていないと答えた。勇者ノウムは完全に姿を消してしまった。
ノアの中で有力だった三か所が外れたとなれば、闇雲に探すしかなかった。夜更けであるため、多くの村民は眠りについている。勇者ノウムがわざわざ、明かりのない家を訪れる理由はない。
そうとなれば、勇者ノウムが居そうな場所はもう一か所あることに気が付いた。
あのアンデットを各個撃破して、ノアのもとに引き返してきた可能性。それは十分にあり、暗い視野でお互いに気が付くことも無かった。そのまますれ違いをして、勇者ノウムは先程までノアがいた場所にいる。おかしな話ではないが、ノアはどこかひっかかっていた。勇者ノウムがノアを忘れて村に帰ってきた可能性も信じたのであれば、もう一つの可能性も信じる価値はあるだろう。
アンデットは夜にしか姿を現さない。それは太陽の光に浄化作用があるため、と言われている。つまり世が完全に明けたら、アンデットは姿を消してしまって手掛かりは無くなってしまう。アンデットが明日また姿を現すかどうか確実ではない現状で、仕留めるのであれば今日しかあるまい。
月光のもと、ノアは司祭服を脱ぎ捨てた。神聖な衣服であるが、非常時においては動きずらく邪魔な服に過ぎない。それに、月光しかない夜の暗闇でも白い服は目立つ。長い髪を結いあげ、視野をクリアにする。多少荒れていても問題ない。暗闇なのだから。
「さあ、金属探知の性能を試してみましょうか」
ノアは今までの気品を脇に捨てた。司祭であるノアではなく、今は一般人のノアである。その辺にいる庶民が何をしても誰も気にしないだろう。
記憶を頼りに森の中を走り回り、先程の縄が落ちていた辺りまで戻ってきた。辺りに変化はない。ここに勇者ノウムが立ち寄ったことは間違いない。問題はここからどこに向かったのか、である。
ノアは勘頼りに動き回ろうと、一歩踏み出した。だが、ふと足を止める。何故か進もうとしている方向に勇者ノウムはいない気がした。
であれば、反対方向に一歩進める。嫌な予感はしなかった。自らの勘に従うのであれば、村とは真反対の方向で間違いないらしい。
信じれるものは勘だけの現状で、ノアに考える余地はない。辺りに耳を澄ましても戦闘音が聞こえないところをみると、何故か嫌な予感がヒシヒシとした。自分が何か見落としている可能性がする。このまま時間を過ごしてはいけないという、警鐘が鳴り響いているのである。
そのとき、風が吹き荒れる。結んだ髪が風に靡いていた。その音に紛れて、木が軋む音がする。
_二時の方向から、気配。その他、複数の敵影あり。
タイミングの悪いことに、勘がそう告げた。




