表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王子と私とデパコスと  作者: えるぜ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/35

ファースト………

エインズワースにやって来て、ごく穏やかに1ヶ月が過ぎた。デパコスと私は朝食後に毎日散策をする。午後はギネヴィア様から家政を教わる毎日だ。

泥酔した翌日の夜、私はお酒に強くなりたい、とデパコスに宣言した。彼は何だか妙な表情を浮かべていたが「クラレンス様と一緒の時だけだから!それに鍵もちゃんと掛けるし!例えばさ、クラレンス様が側にいない時に王命で盃を賜る、なんて事だってあるでしょ?多少は強くなった方が安心でしょ!?」そうまくし立てる私に渋々と頷いた。鍵もちゃんと掛ける、と言った時に少し残念そうな表情を浮かべたのは多分気のせいだ。


「まあ………そうですね、良いでしょう」


それから忍者は修行を重ねた。今では1メートルくらいの竹を飛び越えられると思う。デパコスは毎日几帳面に私が飲む物を決めて、徐々に度数を上げて行ってくれているようだった。今では「おくすり」のお世話になる事もない。


「そう言えば、母が褒めていましたよ」


ある日の散策中にデパコスが言った。


「母の目の前で、面と向かって貴女を褒めていた、と伝えると母も照れ臭いでしょうから」


ギネヴィア様、ツンデレ体質か!と私は思った。


「一度教えた事は忘れない。質問も的確、税収の割り振りから、増収、減収への対応も見事。辞めて行く者への福利、新しく雇い入れる人材に対する目利き、どこを取っても非の打ちどころがない、と」


え、えへへ、と私は笑った。

いつも淡々としているギネヴィア様がそんな事を考えて下さっていたなんて嬉し過ぎる。


「母からもお墨付きを貰えて俺も誇らしいですよ。1日でも早く、貴女をここの女主人として迎えたい」


デパコスがうっとりするような綺麗な笑顔で微笑んだ。照れる。


「お酒も、随分強くなりましたね。でも、まだまだです。昨夜は少し度数を上げたんですが………」


デパコスが私の耳元にも唇を寄せて小さく囁いた。


「貴女……昨夜俺の唇を奪おうとした事、覚えていますか?」


ええええええ!そんなバカな。1メートルの竹を飛び越せるこの私が、そんな破廉恥な真似を!


「俺はね、酔っ払って記憶もない貴女とキスはしたくないんです。だから、俺から貴女に口付けしたい。もし、嫌だったらこのまま背を向けて館に帰って下さい」


えええええええ!そんないきなり!

正直、嫌じゃない。嫌じゃないけどどう返事をしたら良いんだ。


「あの………嫌ではないと思うんですけれどね、その、心の準備と言うか………『これから右ストレートで吹っ飛ばす』的な事を言われても。ク………クラレンス様は経験豊富かもしれないけどですね」


「キスしたいと思う相手など、今まで1人もいませんでしたよ」


デパコスが軽く首を傾げて微笑んだ。


「貴女は………いたんですか?キスしたいと思った相手が」


目付きが胡乱だ。


「いやいやいや、ないです、これっぽっちもないです。あ、犬ならあります」


そう、では貴女の初めてのキスを俺に下さい。そう言ってデパコスは私を抱きしめた。そろそろ風が冷たいこの季節、デパコスの腕の中は暖かくて安心できた。からのー!!!安心している場合じゃない。お約束の顎クイ、顎クイ来た!


「アルティ、目を閉じて下さい」


そりゃ、どんぐりまなこで見つめられたらやりにくいだろうさ。それに、顎クイ状態は私も恥ずかしい。目を閉じると、唇の上に何かが優しく触れた。そして、直ぐに離れる。瞳を開くと、デパコスが嬉しそうに笑っていた。そしてもう一度、優しく唇が重ねられた。


「もう、酔っ払って俺にキスしても大丈夫ですよ」


何つーデリカシーのない事をファーストキスの後に!後に言うんだ!


「今日のこの瞬間をずっと覚えていて下されば、俺はそれで十分です」


私はぽっと頬を染めた。


「風が冷たい。戻りましょうか」


私は差し出されたデパコスの腕に自分の腕を絡めた。間違いなく距離が縮んだ事を実感した。

館に戻ると、丁度リリが外套を持って玄関に向かって来ている場面に出くわす。


「お義姉様、急に風が冷たくなって来たので、急いで外套をお持ちしようと思ってましたの。何だか…………お顔が赤いですわ。まさか、お風邪でも…………」


「あ、いや、違う。大丈夫だから」


そう言うと、何だかデパコスがリリに向かってウィンクをしていた。


「まあ!まあまあまあ!やりましたわね!お兄様」


何で通じ合ってんだ、この兄妹。私はどんな顔をしてここに立っていれば良いんだ。顔がどんどん赤くなる。

その時だった。

玄関扉が激しく叩かれる。

ホールに居たのは私達3人だけだったので、デパコスがドアを開いた。


「国王陛下からの急使です」


何事か、とデパコスが眉根を寄せた。


「王太子殿下が倒れられました。至急、アルテミシア様に戻って頂きたいとの由です」


デパコスが無表情に返事を返す。


「陛下を使うとは姑息な」


けれど私だけは知っている。王子はそんな姑息な男ではない。倒れて、私を呼んでいるのなら、本当に具合が悪いんだ。


「………国王陛下から、転移陣の利用許可が降りております。至急の転移をお願い申し上げます」


「転移陣の利用許可、なるほど、喫緊の事態のようですね」


デパコスが不機嫌そうに呟いた。



読んで下さってありがとうございます^_^

リアクションとか★とか頂戴出来れば心から嬉しく

更新の励みになります

宜しくお願い致します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ