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王子と私とデパコスと  作者: えるぜ


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ルームガイド

何杯かのお茶々お菓子を頂き、和やかなうちにも会話が途切れ始めた時、デパコスが「では、部屋へご案内しましょう」と言った。


「お兄様!わたくしもご一緒致しますわ!」


うきうきと立ち上がるリリを見て、凄く大人っぽい外見だけれど、中身は年齢相応なんだなあ、と私は思った。可愛い。犬も可愛いが妹も凄く可愛い。

私達は2階へと向かった。館の南側の中心に大きな扉が一つ。


「ここが主寝室になります」


ドアが開かれた瞬間、ハルとハナが嬉しそうにベッドに飛び乗った。


「この部屋に入るのは初めてですからね、嬉しいんでしょう」


2頭は顔を上げて私の目を覗き込んでいる。尻尾をぶん回し、時々右手でタシタシ!とベッドマットを叩いている。そ、そうか、そんなに私と一緒に寝たいのか!私もだ!


「この部屋は、館の主人夫婦が夜を共にする時に使われる部屋です」


「あ、そうなんですか」


「まさか、犬に先を越されるとは思ってもみませんでした」


「ええ、そうですね」


「貴女…………俺の話を聞いていますか?」


「はい、聞いてます聞いてます」


デパコスが何やらため息を漏らした時に、ちっ、という小さな舌打ちが聞こえた。まさかのデジャヴ感。デパコスも綺麗な顔して舌打ちをした事があったが、まさかの妹まで。あの綺麗な桜色の唇から何と言う音を放つのだ。


「お兄様、全然ダメです。何も伝わっていません。そんな遠回しな言い方では伝わりません。今お義姉様の頭の中は犬で一杯です。先ずは搦手(からめて)から攻めるのです」


それからリリは私の両手を取ると、にっこりと微笑んで言った。


「兄が言った事は忘れて下さい」


え?何か言ってたっけ?と私は思った。


「この部屋はお義姉様滞在中、お義姉様とハルとハナの寝室になります。けれど、ご覧の通りソファも椅子もローテーブルも設置されてますでしょう?ですから、お兄様との談話室を兼ねている、と思って過ごして頂きたいですわ」


ふーん、そうなんだ。

旅の間、夕食後に談話室で語り合っていた事を考えると、ごく自然な提案だと思った。


「それから、主寝室の両側に扉がありますでしょう?それぞれ、お兄様のお部屋とお義姉様のプライベートルームへと繋がっています。もちろん、どちらの部屋も廊下との間の扉もございますわ」


「お兄様、ご婦人のお部屋をご案内致しますので、少しお待ち頂けますか?」


言外に「すっこんでろよ」感が凄くて、デパコスが完全に表情を失っている。


「こちらの扉ですね、鍵がありますでしょう?」

言われて見ると、真鍮の鍵が付いていた。落とし込んで、先をくるっと回すタイプである。


「お兄様のお部屋側のドアにも同じ鍵があります。ですから、主寝室側から鍵を掛ければ、お兄様は主寝室にお義姉様の許可なく入る事は出来ません」


そう言ってリリはドアを開けて、隣の部屋に入ると再び扉を閉めた。


「このように、それぞれの自室にも同じ鍵が付いています。ですが、お義姉様は主寝室と私室を両方ご自由にお使い下さい。お兄様とのお話が終わって休む時には、主寝室側からお兄様のお部屋への鍵を掛ければ大丈夫です」


おお、意外とプライバシーが尊重されているんだな、と私は感心していたが、リリの話術に、なるほど、寝る前には談話室を使うんだな、と刷り込まれている事には気付かない。

女主人の私室だと言う部屋は、アイボリーとピンクで誂えられた可愛らしい部屋だった。


「婚約が決まった時に、母が壁を塗り替えらせ、カーテンや調度も全て一新したんですよ」


主寝室より若干狭いけれど、居心地の良い部屋だった。大きなドレッサー、簡単な書き物机、椅子二脚とテーブル。


「女同士でしたら、こちらで秘密の恋バナも出来ましてよ」


リリがうふふと笑った。


「それからこちらがバスルームになります。隣の小部屋がお手洗いです」


「後で、お義姉様のお荷物はこちらに運ばせますね。後、お母様とわたくしで何着かドレスを誂えさせてありますの。後ほどそれも客用寝室から運ばせます」


いや、なんか至れり尽せりで申し訳ないでごんす、と思った。


「では、お兄様の所に戻りましょうか。そろそろ………立ち直っているかと」


何から立ち直るんだ?と私は思った。

そして、主寝室に戻ると確かにデパコスは、いつも通りのしれっとした表情をしていた。


「リリに色々案内して貰ったよ。それに、旅の途中みたいにここでゆっくり話が出来るって聞いて、嬉しいと思った」


「…………そうですか。それは良かった。では、荷物が運び込まれるまで少し庭を散策しませんか?その後、夕食まではゆっくり休んで下さい」


私達が主寝室から出ようとすると、ハルとハナが不満げに鼻を鳴らした。


「ごめんね、まだねんねの時間じゃないんだよー」


私は2頭のビロードのような額をするすると撫でると、そこにチュッと音を立ててキスをした。


「お兄様……………」


ああ、とデパコスが返事をした。


「犬に、負けている場合じゃありませんわよ」

読んで下さってありがとうございました^_^

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