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王子と私とデパコスと  作者: えるぜ


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24/35

前公爵夫人

アキは以前使った事のある名前なのでハルとハナに変更致しました

2人に向かって私は大きく手を振った。

立ち上がると、ぱんぱんと軽く土を払う。ハルとハナがドレスを軽く咥えて、デパコスの方へと誘う。大好きなご主人様と私を合わせたいんだろうか。デパコスも我に帰ったようにこちらに向かって走って来た。


「…………すみません、驚かせてしまいましたね」


怪我はありませんか?とデパコスが私の手を取った。


「全然大丈夫!凄い賢い仔達だね。多分一頭は加減してくれたし、もう一頭は頭を庇ってくれた」


「………飛びついた方がハル、庇った方がハナです」


ハルの方が若干茶色が濃いかな?ハナは白っぽい。


「本当に、一度もこんな事は無かったんですけれど………」


申し訳なさそうに言うデパコスに、私はにかっと笑って「多分、私の犬愛が伝わったんだと思う」と答えた。その時、歩いてこちらへやって来たお嬢さんが丁寧にお辞儀をしてくれた。


「初めまして、アルテミシア様。お会いするのは初めてですね。エインズワースが長女、リリベット・テレーズにございます。王都でのお見合いのお話は母から聞いておりましたが、想像以上に素敵な方でとても嬉しいです」


そうはにかみながら言うけれど、いや想像以上に素敵なのはアナタでしょう、と私は思った。デパコスそっくりの髪と瞳。でも眼差しは少し優しげかな?デビュタント前と聞いていたけれど、驚く程大人っぽい。そして、馬車から降りるなり中腰になって「よし!来い!」と叫んだ私を「素敵」だと言うこの感性。兄妹揃ってキワモノ好きなのか?と私は思った。


「さあ、どうぞ中に!私は待ちきれなくて玄関ホールに居たのですが、母は客間で待っております」


何だかすっかり仲良しのように手を引かれ、両脇には足並みを揃えて歩く大型犬。ここは天国か?と思うほどである。


やがて私達は客間の前にやって来た。執事さんがノックをして「クラレンス様、並びにアルテミシア様御着到にございます」と告げる。


「お入りなさい」


中から静かな声が届いた。

ドアが閉められると中にいた婦人が立ち上がった。


「ただいま戻りました。長い間の不在、ご心配とご苦労をおかけ致しました」


鷹揚に頷きながら、ご婦人は「まあ、そう畏まらずとも良い。現公爵は其の方なのだし、特に今回は婚約者を連れて来てくれた。もう立派な当主だ。そして、アルテミシア、遠くまで良く来てくれた。エインズワースを挙げて歓迎する」


私は、最大の敬意を払って礼を取ったが、果たして上手かったかどうか自信はない。顔を上げてご婦人を見る。とても背の高い、真っ直ぐに伸びた背中と首筋が印象的な女性だった。髪は、白い物が少し混ざっているせいか兄妹よりふんわり柔らかい印象、そして瞳は3人そっくり。

…………血統書付きの犬みたいな家族だな、と私は失礼な事を考えた。

執事さんに案内されて席に着く。椅子の両側にはハルとハナがぴったりとくっついて座った。

その様子を見て、前公爵夫人が少し目を見張った。


「あの…………」


私は思い切って尋ねた。「滞在中、どうお呼びすれば宜しいでしょうか。肩書きでお呼びした方が良いですか?」


でもなあ、いちいち「前」を着けると、まるで「『先の』副将軍」みたいで「え?先?じゃあ今は」感が否めない。


「名前で呼んで構わない」


「ありがとうございます。では、ギネヴィア様と呼ばせて頂きますね」


ギネヴィア様は薄っすらと微笑むとデパコスの方を向いた。


「クラレンスは、アルテミシアを何と呼んでいる?」


「俺は………アルティ、と」


「アルティ、可愛らしいな。では私もそう呼ばせて貰おう」


「お兄様!ではわたくしも!」


いきなり叫ぶリリベット。


「アルティお義姉様!と!呼ばせて頂きますわ!お義姉様は、わたくしの事をリリと!是非!」


意外と行動的でびっくりした。いや、まだお義姉様じゃないんだけどなーとは思ったけれど、デパコスとリリが頷き合い、何故かデパコスに至っては「グッジョブ!」という表情をしていたので、ま、いっかーで流す。


「クラレンス…………随分と表情が豊かになったな。それに良い目をするようになった」


「そうですね、自分でも最近の感情に戸惑ったり驚いたりしています。それに母上だって………」


そう言ってデパコスはくすりと笑った。


「アルティの側を離れないハルとハナを見てかなり驚いていらした」


「確かに驚かされた。そうだな、アルティは予想外だった。見合いの席では感じなかった生命力を今は感じる」


え?さっきのちょっと目を見開く、がかなりの驚きを表現していたのか。表情筋の動かない親子だなあ、と私は思った。


「アルティの変わりようは、其の方からの手紙でしか分からないが、例の『記憶の混濁』とも関係があるのだろうか」


「母上」


デパコスがギネヴィア様を制した。


「今回のエインズワース来訪は、アルティの静養も兼ねています。先ずは今の彼女をゆっくりと見守って頂ければ」


「そうだった。すまない、デリカシーのない事を初日から尋ねてしまった」


え、いや良いんですよ。本当のアルテミシアで、記憶が無い事に悩んでる訳じゃないですから、と私は心の中で頭をぽりぽりと掻いた。


「アルティの荷物だが、当初一階の客用寝室を使って貰う予定であったが…」


そう言ってギネヴィア様はちらりと犬達へと視線を走らせた。


「1人と2頭では客用寝室のベッドは狭いだろうな」


え!?まさか!!犬と一緒に寝て良いんですか!?何ていい人、ギネヴィア様!


「アルティが嫌でも、犬達が離れないと思いますよ」


デパコスも笑っている。


「そうすると…………」


また、先生!はい!はい!はい!の調子でリリが叫んだ。


「2階の家族用の部屋の、主寝室だったら寝苦しくないと思います!」


「ああ………まあアルティがそれで構わないと言うのならそれでも良いが………」


何となく奥歯に物が挟まったような言い方。そして、デパコスが再びグッジョブフェイスを妹に送っていた。

何でもいい。どこでもいい。犬2頭に挟まれて眠れるなら屋根裏でも馬小屋でも構わない。


「お任せします。宜しくお願い致します」


私はそう返事をした。




読んで下さってありがとうございます^_^

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