~89話~叡斗の工作とフェイの出現
「ダーリン?私が『土魔法』使いますわよ?」
「メイサはおとなしくしてなさい!」
「御主人様もう少しで村です。」
「わかった!」
オリーブが迷宮ダンジョンから村までの道中の木を切り倒して、叡斗が木を空納してから『土魔法』で切り株をどかして地面を均しながら進んで行く。
「着きました。」
森を抜けると目の前に村が現れ、中年の男性がこちらへ走って来る
「誰か走って来るぞ?」
「村長のカールさんですね。」
「ダーリン?ここからは任せてくれますね?」
「俺は何も見ない。見たくない。見えてない。」
「奥様行きましょう。」
メイサとオリーブが村長のカールさんの下へと歩いて行き、少し話してそのまま村へと案内されて行く。
「俺は・・・馬車の部品作ろ。」
叡斗が1人ごちって、その場に座って鉄の精製をすすめて純度を高めてから、部品を作って行く。
しばらく部品を作っているとメイサが歩み寄ってくる。
「ダーリン?最後の締めをお願い致します。」
「ハイワカリマシタ」
感情をなくした叡斗がメイサに連れられて村に入ると大歓声と共に手を合わせる村人に出迎えられる。
「モウナレマシタ」
「なぜ片言なのでしょう?」
「どうも、【無双】エイトと申します。」
叡斗が村の中央のお立ち台に立ち、自己紹介をするだけで歓声が起きる。
「ではダーリン?行きましょうか?」
「もういいの?」
「あとはオリーブがしてくれますわ。」
「優秀なメイドだな。」
「ではダーリン?ゼントラムに飛びましょう?」
「了解です!」
叡斗とメイサが転移して行く。
「はぁ・・・ギルド行きたくないなぁ。」
「ですがフェアリーが消滅するのは嫌でしょう?」
「袖振り合うも他生の縁っていうしねぇ・・・」
「では行きましょう?」
「そうだな!」
叡斗とメイサがゼントラムの門を通り冒険者ギルドへ行く
「すみません!新しいダンジョン見つけて報告に来たんだけど?」
「かしこまりました!・・・Sランク!??少々お待ちください!」
受付嬢がギルドカードを見るなり走ってどこかへ走って行く。
「ロキマと違っていちいち 仰々しいですわね。」
「ギルマスが来るんだろうな・・・」
「ほら?来ましたわよ?」
「これはこれはエイト様!新しいダンジョンを見つけたとか?」
「どうも・・・【無双】エイトです、そうですよ?」
「これはご丁寧にどうも!私ゼントラムギルドマスターのケルピーと申します!」
「ケルピーさんよろしくお願いします!」
「あ!我々ゼントラムの民はロキマなどと言う偏見はございませんので!」
「それはウラジールに来て諦めてますんでいいですよ?」
「ゼントラムだけは違いますので!」
「わかりました、迷宮をクリアして手に入れた魔石を持ってきました。」
「これは・・・見事な風の魔石ですね?」
叡斗が風の魔石をケルピーに渡して、受け取ったケルピーが驚く
「円形の迷宮で大体1日で中央たどり着けましたが運が良かったかもしれないので、最低3日分は食料を用意した方がいいかもしれませんね?」
「かしこまりました!すぐに公布致します。」
「よろしくお願いします!」
「こちらの魔石は買取させて頂いても?」
「いくらになりますか?」
「金貨・・・140枚でいかがでしょうか?」
「いいですよ!」
「ありがとうございます!すぐに準備を致しますので!」
ケルピーが用意していたのかと思うほどのスピードで金貨の入った皮袋を持ってくる。
「そういえばオリーブ様はいらっしゃらないのですか?」
「オリーブが何か?」
「Sランクに昇格が決定してますので、是非ギルドにお寄り頂ければ幸いです。」
「オリーブはCランクのはずですが?・・・何段階昇給ですか?」
「ロックオーガ退治などの功績を踏まえてのSランク昇格です!」
「あいつ喜びそうにないな・・・」
「伝えておきますので、彼女が乗り気なら寄らせてもらいますわ。」
「では是非ともよろしくお願いいたします!」
「是非伝えます!では!」
ギルドを後にしてゼントラムの市場に向かう二人。
「ダーリン?何を探してますの?」
「ゴムを探してるんだが・・・」
「あぁ・・・あの雷魔法を通さないだけの用途の物ですわね?」
「いや・・・水も通さないし空気も通さないし、多用途に使えるぞ?」
「そうですの?こちらに御座いましたわ。」
「さすがメイサ!」
「一体ダーリンはあんな物を何に使うのやら・・・」
訝しそうにゴムの塊を見るメイサを横目に大量に買う叡斗
「よし!拠点に戻ろうか?」
「はい、門へ向かいましょう!」
叡斗とメイサがゼントラムの門から出て、ウンテントラムの拠点へと転移する。
「あら!御2人ともお帰りなさい!」
拠点の叡斗達の部屋に転移すると、エイトマジシャンズのメンバーの一人のザッシャがラフな格好で部屋の掃除をしてくれていた。
「ザッシャか、今日は冒険は休みか?」
「はい!屋敷の掃除をする日で御座います!」
「しばらくここで暮らすけど気にしないでくれな?」
「しばらくいらっしゃるのですか!?リーダーに報告しなければ!」
ザッシャが部屋から出て行き、メイサをベッドに寝かせて一息吐く。
「ダーリン?このまま襲われるのでしょうか?」
「期待している所、申し訳ないがお腹の子に触ったら駄目だから無しだ!」
「残念ですわ。」
「てか普通に無理だ!魔素がもたん!」
「はやく『魔力操作』を極めなさいな!」
「努力します!」
「では、あまりにも動かな過ぎるので、料理をしましょうか。」
「本当に気をつけるんだぞ?」
「わかってますわ!」
「じゃあ俺は馬車の改造をしようかな・・・」
メイサが調理場に、叡斗は馬車置き場に行き、それぞれに作業を始める。
「エイト様?これは何ですか?」
「サスペンションだよ?」
「さすぺんしょんですか?」
ソフィアがバネの付いた装置を興味深そうに触っている
「衝撃を吸収してくれる装置だよ!」
「こんな物で馬車の揺れが無くなるのですか?」
「それはやってみないとわからない!」
油圧なんてよくわからないから、バネのみでサスペンションを作ったけど機能するのだろうか?と叡斗も不安顔だ。
「明日か明後日には試作を組んで見るから試乗してからだな。」
「しかも4個あるという事は車輪全てに付けるのですね?」
「そうだ!4輪を独立させる設計にする!」
「車軸を1本ではなく分割ですか・・・耐久性は大丈夫ですかね?」
「部分部分で鋼鉄を使うようになるだろうな?」
「なるほど・・・ですが鉄となると引っ張れる重量で収まるのでしょうか?」
「問題はそのバランスだよなぁ・・・」
「車輪が滑らかに動けばいいのですがね・・・」
「滑らか?ふむ・・・ベアリングを付けてみるか!」
「また聞き覚えのない言葉が・・・」
「確か・・・小さい玉をいっぱい・・・こんな感じだったよな?」
叡斗がおぼろげな記憶でベアリングを魔力成型で作る。
「これがベアリングですか?」
「とりあえずこれに車輪をつけて・・・回してみな?」
「はぁ・・・軽っ!そして止まりませんね?」
叡斗がベアリングを持ってソフィアが車輪を回すと滑らかに回り続ける。
「成功だな!」
「こんな物を簡単に作るとは・・・やはりエイト様はエイト様してますね・・・」
「なんだ?それ?」
「とんでもない事を平然と成す事を「エイト様する」と我々の中で使ってます。」
「なんかとんでもない言葉が出来てる!?」
「いやぁさすがエイト様、エイト様してますね。」
「その言葉を流行らせるなよ!?絶対だぞ!」
「フフフ!ウンテントラムでは当たり前に使われてますよ?」
「すでに手遅れかよ!?」
「さて!馬車が完成して、どれほどエイト様するのか楽しみです!」
「意味がわからん!」
笑顔のソフィアがエイト様エイト様言いながら馬車置き場から出て行く。
3日後、馬車の試作機が完成して試乗会が行われる。
「なんでこんなに大々的にする事になんだよ・・・」
「我々もどれほどの物か見たいじゃないですか!」
「そうですそうです!」
「さて!この馬車はどれほどにエイト様してるかな?」
「カート!その変な言葉を使うんじゃない!」
「さぁ乗ってみましょう!」
「わーい!」
ソフィア達と馬車に乗り、カートの御者で馬車が進みだす。
「カート?みんな乗ったから早く車出してよ!」
「もう走ってるよ!」
「はぁ?・・・本当だ動いてる・・・」
ソフィアが幌馬車の幌を上げて外を確認する。
「全く揺れないですね?」
「大成功だな?カートもう少し速度出せるか?」
「かしこまりました!」
「今までの揺れに比べたら天地の差ですね・・・」
「快適ー!」
「よしよし!これを改良して行くか。」
「御者台も揺れなくて快適ですね!」
「なお良しだな!」
満足顔の叡斗が車から降りると、マジシャンズとアサシンズのメンバーが代わる代わるに試乗をしている・・・と思っていたら馬車の中から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「な!なんやてぇぇぇぇぇえぇぇ!!!」
「なんで・・・いや、いつの間に馬車に乗ってんだよ・・・」
「パトロン!あの馬車なんやねん!どうなってんねん!?」
走ってる馬車から興奮した褐色肌の美女が飛び降りて駆け寄ってくる。
「お前なんでいるんだ?」
「こいつらの修行をして欲しいんやわ?」
屋敷を見ると玄関に20人近い奴隷が立っていた。
「はぁ?めんどい!お前がやれ!」
「パトロン冷たっ!この際しゃーなしや!うちサービスしますやん?」
「いらん!ゼントラムに帰れ!銭勘定してろ!」
「帰られへん!これからカピタールで事業展開やで?」
「ならハンク商店を訪ねて俺の名前を言えば協力してくれるかもな?帰れ!」
「さすがパトロンや!ほなうち行ってくるよってに!」
「おい!白髪の年齢不詳のダークエルフ!奴隷も連れて行け!」
「女の歳は聞いたらあかんのやでぇぇぇぇぇ!」
フェイが『魔力操作』でステータスを発揮させた俊足でカピタールへと走り去って行く。
「あのエセ関西弁が!おいカート、ソフィア!」
「「はい!」」
「お前らでこの奴隷達を特訓してやってくれ!」
「「はい!」」
「少々の怪我は気にすんな!俺が治癒するから!」
「「はい!!」」
叡斗の言葉を受けて満面の笑みを浮かべた2人がチームを引き連れて奴隷の方へと歩いて行く。
「ん?・・・奴隷達!欠損奴隷はこっちに来い!」
叡斗が奴隷達の中に腕や足がない奴隷がいる事に気付いて声をかけると、欠損奴隷達がおずおずと前に出てくるので、ゴッドブレスをかけて欠損を治す。
「エイト様してますねぇ・・・」
「エイト様はエイト様してこそのエイト様ですね。」
「ソフィア!エイトエイト煩い!頼んだぞ?」
「「はい!」」
気合を入れるエイトメンバーと驚き戸惑う奴隷達を置いて馬車置き場に戻る叡斗。
「次は・・・もしもの時のためのエンジンもどき作るかな・・・」
叡斗が1人ごちて、鋼鉄を魔力成型する。
「ダーリンあれは何してますの?」
「メイサか・・・フェイに押し付けられたから、ソフィア達に押し付けた。」
「やはり来ましたか・・・ダーリンは何してますの?」
「タイヤを作ってる。」
「車輪の事でしたわね・・・ですが車輪には見えませんわね?」
「今はワイヤーを組んでタイヤが破れにくくする骨を組んでる所だからね・・・」
「骨・・・車輪に骨・・・意味がわかりませんわ。」
「まぁ見ててよ!」
叡斗がワイヤーを組んで、その回りにゴムを魔力成型で纏わせて行く。
「細かい溝まで・・・『魔力操作』の賜物ですわね・・・」
「おかげ様で大分慣れたよ!」
「ふむ・・・ゴムを纏わせて・・・金属の車輪にはめますのね。」
「それで・・・空気を入れる!」
「また見た事のない装置が出てきましたわ・・・」
叡斗がポンプ式の空気入れでタイヤに空気を入れる。
「さぁ!タイヤの完成だ!」
「ふむ・・・弾みますのね・・・なぜ空気が漏れませんの?」
「そういうもんだ!明日には玩具完成する予定だから!」
「楽しみですわね!」
「でもメイサは危ないから見るだけね?」
「残念ですわ・・・」
メイサが残念そうに馬車置き場から出て行き、叡斗が手馴れた魔力成型をして、フレームを作って行く。
「いやっほーう!」
夕方叡斗が、バイクに乗って馬車置き場から飛び出す。
「ようソフィア!特訓は進んでる?」
「問題無く・・・エイト様その乗り物は?」
「風の魔導具でバイクだ!」
「乗ってみたいです!」
「俺が遊んでからなぁぁぁぁぁ!」
叡斗がバイクに乗って地平線へと消えて行く。
「エイト様してるなぁ・・・」
ソフィア達が口々に「エイト様してる」と呟き、『魔力操作』の特訓を受ける奴隷達は何が何やら理解できずに唖然と叡斗を眺める。
「あぁ堪能した!」
「あの!明日は我々も乗ってみてもいいですか!?」
叡斗が屋敷に帰ると、すぐに目を輝かせたソフィア達が駆け寄ってくる
「いいけど、転んだらマジで危ないから気をつけろよ?」
「はいありがとうございます!」
「な・・・なんやねんこれは!」
「なぜここにいる?カピタールに行ったんじゃ?」
さっきまでいなかったはずのフェイがバイクにまたがって目を輝かしてハンドルをくいくいと曲げて遊んでいた
「晩飯やからな!転移石で戻ってきたで!」
「そんな無駄遣いをするんなら、補充しねぇぞ?」
「ちゃうねん!パトロンと話したかってん!」
「俺は話したくないから、無駄遣いだな。」
「もぉパトロンは素直やないんやから!」
「俺の正直な気持ちだよ!カピタールに飛んでくださいお願いします。」
「さっ!今日の晩御飯はなんやろなぁ・・・」
フェイがスキップをして、馬車置き場から出て行く。
「なんで自分の奴隷にこんなに振り回されにゃならんのだ・・・」
叡斗が1人ごちながら、食堂へ行くとフェイが食堂の真ん中で正座をしていた。
「なぁ?あれどうしたんだ?」
「あ!エイト様!メイサ様がフェイさんをお叱りになられて・・・」
「ダーリンお帰りなさい?」
「ただいまメイサ!フェイどうしたの?」
「どうしたもこうしたも御座いませんわ!」
「メイサを怒らせたら恐いのに・・・フェイご愁傷様。」
「ちゃうねん!メイサはんちゃうねん!」
「煩い!ダーリンに奴隷を押し付けて、転移石を無駄遣いして晩御飯をたかるなんぞ、ダーリンの奴隷失格です!」
「うぅ・・・」
「俺のいう事を聞いてカピタールに戻ってれば怒られなかったのにな?」
「うぅ・・・メイサはん恐いがなぁ・・・パトロン助けてんか・・・」
「学ばない子ですね!なんでもダーリンに助けてもらおうというその性根が駄目と言ってるのです!」
「フェイ?俺はメイサに逆らえない、がんばれ!」
「貴女は明日の朝までそこで正座して反省なさい!」
「殺生や・・・メイサはんは鬼やでぇ・・・」
「では、たかり奴隷以外の皆さん?晩御飯に致しましょう。」
メイサの声に反応してみんなが晩御飯の準備をして、正座するフェイを囲んで晩御飯が始まる
「ほんまにうちの分無いんかいな・・・鬼や・・・」
新人奴隷達の料理の味に感動して咽び泣く声とソフィア達古参奴隷の喜ぶ声に混じってフェイが呟く。




