~88話~大迷宮とメイサおめでた
「何々!?何でここがばれたの!?」
しばらく森の中を歩くと、手の平サイズの妖精が俺達を見て驚いている。
「こいつ・・・魔族?」
「フェアリーですわね。」
「ふ、ふん!この妖精王様に勝てるつもり!?」
パタパタと飛ぶ妖精が震えながらファイティングポーズをとる。
「プルプル震えてかわいい魔族だな・・・」
「魔族に進化したてでしょうか?」
「あんた達!あたちを無視すんじゃないわよ!」
「魔族の扱いはメイサに任せた!」
「わかりましたわ!あなた?いつ自我を持ったのかしら?」
「え?・・・気付いたらこの森にいたけど?」
「ふむ・・・ダンジョンは作ってないようですね。」
「ダンジョン?何それ?教えなさいよ!」
「ええい!うっとおしい!」
妖精がパタパタとメイサの顔の周りを飛び、メイサにはたき落とされ地面でバタバタともがいている。
「さぁ!魔族の事を教えて差し上げます、そこに座って大人しくなさい!」
「痛い!なんなのさ!あんたに魔族の何がわかる・・・お願いします!」
人化を解いたメイサを見て、顔面蒼白になったフェアリーが地面に正座して三つ指を立てて土下座をする。
メイサがフェアリーに魔族についてレクチャーをする間にオリーブを呼び寄せて、二人で晩御飯を作る。
「ダーリンどうしましょうか?」
「ん?何が?」
「この子のダンジョンです。」
「やっぱり作らないとやばいの?」
「魔素が無くなって消滅するでしょうね。」
「じゃあ作ればいいんじゃない?」
「この子の能力を調べましたが、ゴーレム作りくらいしか出来ませんの・・・」
「確かゴーレムを召喚するのって燃費が悪いんだっけ?」
「そうですわね、普通のダンジョンを作ってもゴーレム用の魔素で収支が合わずに、結局消滅してしまってもおかしくはありませんわね・・・」
「で?妖精はどうしたいって?」
叡斗がスープ皿に入ったシチューに顔を突っ込んで食べる、妖精を見やる。
「ダンジョンは作りたいそうですわ。」
「で?どんなダンジョンを?」
「人が驚いたり困る姿が見たいそうです。」
「今までもそんな感じで遊んでたのか?」
「森で人や動物を迷わせて楽しんでたようですわ。」
「ふーん・・・どこに作る?」
「オリーブと相談しましたが、ここでよろしいのではなくって?」
「もう少しインダッテの村の近くに作れば、インダッテはゼントラムから半日程の距離ですので問題ないかと。」
「ならどういうダンジョンを作るかだな・・・」
「何か策がありますのね?」
「さすがは御主人様です。」
「飯を食べ終わったらゴーレムの事を教えて欲しい!」
「もちろん喜んで!」
「つか自分の事だろ!参加しろよ!」
「メドゥーサ様に任せとけば安心だからね!」
顔がシチューだらけでベタベタの妖精が自信満々に答える。
「はぁ・・・とりあえず、今日のうちにダンジョンを作って俺とオリーブから魔素を取り始めるか・・・」
「そうですわね。」
「ではすぐに場所の見当をつけます。」
晩御飯を食べ終わり、みんなと見当を着けた場所に向かう。
「メイサ?フェアリーは魔石は作れるのか?」
「生まれたばかりですが、魔族ですのですぐに作れるでしょう。」
「属性は何が作れそう?」
「フェアリーは戦闘が苦手な代わりに器用な種族ですから、作ってみないとわかりませんわ。」
「そうか・・・あとゴーレムって人型じゃないと駄目なの?」
「人型以外でもコアと魔玉があれば問題ないはずですわよ?」
「なるほど・・・」
「ただ人型以外のゴーレムは見た事ありませんわね。」
「獣や平面ゴーレムも作れるわけね?」
「何か思いつきましたのね?」
「どこまで再現出来るかな?楽しみだ!」
「何を作りますの?」
「大迷宮!」
「だい・・・めい・・・きゅう?」
「大きい迷路だよ?」
「迷路ですか。」
「そのためにも景品の魔石が何々作れるか重要だからね?」
「御主人様、ここら辺などは如何でしょうか?」
「インダッテまでは?」
「徒歩1時間と行ったところかと。」
「ではフェアリー?ダンジョンを作成なさい?とりあえず洞窟でいいですわ。」
「ほいほーい!チョチョイのチョイサー!」
フェアリーが両手を突き出すと、地面がもこもこと動き出して、目の前に洞窟の入口が出来上がる。
「ダンジョンってこうやって出来るのか・・・」
「魔法とは違う、不思議な現象ですね。」
「さっさと入りますわよ!」
メイサを先頭に洞窟へ入ると5mで行き止まりになっていて、小さな椅子が置いてあった。
「これはマスタールームの操縦席か・・・」
「さぁフェアリー?席に座って、魔素の管理をなさいな?」
「はい!」
フェアリーが小さな席にちょこんと座り、空中に出現した青いボードを操作する。
「では我々は寝ましょうか?」
「合点!」
洞窟が狭いので、テントをひとつだけ展開して、3人川の字で寝る。
「ダーリン?まずは何をしますの?」
「とりあえず俺は設計図を適当に書くからメイサは魔石の確認して!」
「かしこまりました。」
叡斗が紙にさらさらと地図のような物を書き始める。
「ダーリン?風・土・光の魔石が作れましたわ。」
「なるほど!じゃあとりあえずこれ作って?」
「・・・迷路ですか?」
「それで・・・ここの壁とかここの壁をゴーレムで・・・」
「なんと!?ゴーレムにその様な使い方が・・・」
「あとはメイサの方が作るの上手そうだし任せる!」
「かしこまりました!フェアリーとりあえず1階層を平面で出来る限り広げなさい!」
「ほいほーい!」
フェアリーが青いボードをポチポチと弄ると、一瞬で洞窟の壁が広がり粗末な洞窟の入口からは想像も出来ない明るい広い無機質な空間が広がっていく。
「ダーリン?どこらへんに作りましょうか?」
「この部屋を全部使えばいいんじゃない?」
「かしこまりました!」
メイサがフェアリーと相談しながら青いボードを弄り始め、にょきにょきと至る所から壁が生える。
「よし!俺はこれだな!」
「御主人様、私は何をすれば?」
「オリーブは・・・ゆっくりしてな?」
「自分の無能感を感じますね・・・」
「じゃあオリーブの役目があるよ!」
「役目ですか?」
「先にラプター達と村に行って宣伝してきてくれない?」
「なるほど、かしこまりました。」
昼食を食べてからも全員がもくもくと作業に没頭する
「ダーリン!完成しましたわ!」
「完成したか!」
「明日試しに潜ってみましょう!」
「そうだな!上手く行けば、人は来るし迷宮だからずっといてくれるって寸法よ!」
「さすがはダーリンですわ!」
「じゃあこの前の作り置きで晩御飯にしようか!」
「御主人様、私が配膳を致します。」
いつの間にか帰ってきていたオリーブがテキパキと配膳をすませる。
「で?予想でいいが迷宮はクリアまでどれくらいだ?」
「迷わず徒歩で中央に行って半日といったくらいですわね。」
「ふむ・・・なら迷えば2,3日かかるかな?」
「そのつもりで作りましたわよ?」
「なら人が死なないように緊急脱出できるシステムを作りたいな・・・」
「ふむ・・・上はフェアリーが困ってる人間をみるために透明な真壁で覆ってますしね・・・」
「さて・・・どうするかな・・・」
「あたち転送出来るよ?」
「マジか!なら入口に説明看板を置いてSOSサインを出したらフェアリーが入口に転送って感じで行くか。」
「あとゴーレムはどうなってる?」
「一定時間で壁ゴーレムが動いて迷路が変わるようにしましたわ。」
「上手く動いたか!」
「明日潜ったついでに動作確認をお願いしますわ。」
「後はあれだな・・・迷宮の宝を守る守護者が欲しいな・・・」
「ふむ・・・フェアリー?魔物は何を作れますのかしら?」
「ゴーレム以外はまともなのは作れないわよ!」
「どんなのが作れるんだ?」
「悪戯ニンフとか戦闘能力はないやつばかりだよ!」
「戦闘じゃなくて嫌がらせに使えばいいんじゃないか?」
「何々!?おもしろそうじゃん!」
「例えば宝箱を開けるとゴーレムが動いて閉じ込められるとか・・・」
「ウフフフ!その時の冒険者の顔は是非見たいね!」
「ニンフ達を追わせて迷わせるとか・・・」
「なら魔物用の通路を作らないと駄目だね!」
「あとあれだぞ?定期的に迷路を変えろよ?」
「マッピングだっけ?されたら簡単にクリアされちゃうもんね!」
フェアリーがオリーブが作ったラーメンを食べながら、うんうんと頷く。
「あとは素行の悪い冒険者がいた場合にどうするかですわね・・・」
「・・・出したくないが、オリハルコンゴーレム作るか?」
「大判振舞いですわね・・・」
「出会ってしまったからにはきっちりとプロデュースしないとな!」
「そんなゴーレムいたらあたちのダンジョン最強だわ!」
「その代わりにわかってるな?」
「わかってるわよ!ヨハン様に説得された友好的な魔族を演じるんでしょ!?」
「そうだ!だからオリハルコンゴーレムで遊んでもいいが、人をいたぶったりはするなよ?」
「勿論だわよ!困ってる顔が好きなだけで、痛いのは嫌だもん!」
「ならこれでゴーレムを作っていいぞ!」
叡斗が空納からオリハルコンの塊を取り出して、フェアリーの隣に置く
「これ食べたらすぐに作るわよ!」
小さいフェアリーが丼に被り付いてラーメンを一生懸命食べる。
「御主人様、村で少々問題がございまして・・・」
「俺達が行った方がいいか?」
「それには及びません、大金槌はございませんか?」
「何に使うの?」
「井戸が枯れて困っていたので、井戸掘りを手伝ったのですが岩盤に当たってしまい、私の拳では砕けませんでしたので。」
「ならこいつを使えばいけると思うよ!」
叡斗がオリーブに<大地の槌>を渡す
「ありがとうございます。」
「威力結構あると思うから崩落して埋まったりすんなよ?」
「心遣い痛み入ります。」
「明日は別行動だが、がんばろうな?」
「そうですわね。」
「かしこまりました。」
オリハルコンの塊に四苦八苦してるフェアリーを横目に、風呂を堪能してテントに入る叡斗とメイサ。
「ダーリン?」
「ん?」
「村はいいとして、ギルドへの宣伝はどうしますの?」
「ゼントラムに一回戻るかな・・・」
「フェイはセクンカピタールだといいですわね・・・」
「いれば、逆にフェイに丸投げって手もありかな?」
「何にせよ明日からの宣伝が失敗すればフェアリーは消滅ですわね。」
「出会っちゃったから、消滅は寝覚めが悪いな・・・」
「大丈夫ですわ!きっと安全に一攫千金を目論むヒトでいっぱいになりますわ!」
「だといいがな?」
「では!」
メイサの不意打ちにより一瞬で魔素を吸い尽くされる叡斗だった。
「ダーリン?置いて行きますわよ?」
「待って!俺の作業量が多すぎない?」
「ちょっと!このアイテムはどうなのよ!?」
「この気まぐれコンパスいいんじゃないか?」
気まぐれコンパス、迷宮専用アイテムで蓋を開くと、魔素が尽きるまではゴールの中央を指すが、コンパス内の魔素がなくなると適当な方向しか指さなくなるアイテムだ。
「こっちの地図はどうなのさ!?」
「気まぐれマップか・・・もう少し大雑把でもいいんじゃないか?」
気まぐれマップ、魔力を流すとランダム時間、迷宮の地図が浮かび上がるが、現在地がわからないので、位置情報をわかってないと使い物にならないが、現在地がわかればかなり便利だと思う。
「なら壁ゴーレムは表示しないようにするわね!」
「それくらいでいいと思うぞ!」
「ダーリン?何をしてますの?」
「なんでアイテムの評価をしながら、壁ゴーレムの整備まですんだよ!」
「しょうがないじゃない!足代わりの車輪なんて見た事もないんだもん!」
叡斗が壁ゴーレムを発見するごとに前後に動かして、壁ゴーレムの動きを確認して行く。
「エイトしゃん!オリハルコンゴーレムの成型もさっさとしなさいよ!」
「お前の魔物なんだから自分でしろよなっ!」
「あたちじゃ形を変えられなかったんだから、やってよね!」
「この前から、ブラックな頼み事ばかりだよぉぉぉ!」
更にフェアリーがオリハルコンゴーレムを作れないと泣き付いてきたので、魔力成型をしてオリハルコンでゴーレムの骨格を作る叡斗。
「フェアリー?ここからはどう行きますの?」
「えっと・・・左左真っ直ぐ右左左真っ直ぐ右で中央のはずだわよ!」
「覚えられねぇよ!」
「行きましょう!」
メイサが迷い無く歩みを進めて行く。
「メイサは覚えれるんだね・・・」
叡斗がオリハルコンゴーレムの骨格を作りつつ、壁ゴーレムの車輪を確認して着いて行く。
「ふむ・・・迷わずで5時間ですか・・・」
中心の円形の部屋にたどり着いてメイサが時計を確認する
「もう少し広くするか?」
「いざ冒険者達が入るとどうなるでしょうかね?」
「予想も付かないな・・・」
「まずはこれで行って、人がくるならもう1つ新たにもっと難しい迷宮を用意すればよろしくなくって?」
「それでいいかもな!景品もフェアリーが魔力成型出来るから魔石付きの魔導具でも置いたらいいんじゃないか?」
「なら魔導具つくりの練習だわよ!」
「では外に出てご飯に致しましょう!お腹が減りましたわ!」
「最近メイサお腹減ったってよく言うけど、魔族って腹減らないんじゃ?」
「そういえば・・・なんとも思ってませんでしたがそうですわね・・・」
「あと最近メイサ太った?」
「え・・・魔族が太るなどと・・・」
「チャイナ服のお腹部分ムチムチになってるけど?」
「最近着づらいと思ってましたが・・・」
「体重計乗ってみる?」
「そう・・・です・・・わね」
メイサが体重計に乗って、顔を青くしている
「5キロ増えてますわ・・・」
「一緒にダイエットしよ?」
「ベスト体重に戻さねば・・・」
「メイサ?俺は気にしないよ?」
「ダーリンのためでもありますが、私自身のために痩せるのです!」
「なら昼御飯から量を考えないとな?」
「・・・思考が鈍ってますので、昼御飯を食べてから考えましょう。」
メイサがダイエット失敗する人あるある、丸出しの思考だ。
へこんだメイサと迷宮から出るとオリーブがご飯を作って待っていた。
「おかえりなさいませ。」
「ただいま!オリーブどうだった?」
「滞りなく井戸を開通させ、村からの信頼を得て帰ってきました。」
「さすがはオリーブだ!」
「勿体無いお言葉です、奥様はどうなさいました?」
「少し太っててな・・・」
「魔族で太る・・・もしや御懐妊では?」
「オリーブ?今なんと?」
「太った原因は御懐妊では?っと申しました。」
「お腹の減るのは、この子が欲しがっているのですわね・・・」
メイサが愛おしそうに自分のお腹を撫でる
「よくわからんが、10日くらいでそんなに変わるもんなのか?」
「奥様は魔族なのでなんとも言えませんね。」
「自分の事ですが、メドゥーサの妊娠は情報が無いので・・・」
「ならどうする?メイサはしばらく魔王城で妊休しとくか?」
「車の振動は身体に障るを伺いますし・・・それが得策かと。」
「冗談おっしゃい!ダーリンと離れるなど言語道断ですわ!」
「わかった!揺れないように車を改造するぞ!」
「では・・・どこへ向かいますか?」
「ダーリン・・・私のワガママのために・・・」
「んー・・・ゼントラムか・・・ウンテントラムの拠点?」
「では御主人様はインダッテの村の掌握を済ませたら転移でどうぞ、車は私が責任を持って拠点へ戻ります。」
「オリーブも私のために・・・いいパーティに恵まれて幸せですわ・・・」
「じゃあ昼飯食べたら、インダッテに行ってから転移するぞ!」
「その際に少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
「どうしたんだ?」
「道すがらにダンジョンで武者修行をしたいです。」
「危なくなったら簡易通信機で連絡するんだぞ?」
「かしこまりました。」
「ではすぐに配膳を致しましょう!」
「メイサは座ってろ!」
「奥様はご自分を労わってください。」
叡斗とオリーブが配膳をして涙ぐむメイサがもりもりとご飯を食べ始める。




