表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/158

~85話~嵐娘との邂逅

「御主人様、なにやら様子のおかしい馬車が見えます。」

ウンテントラムから出発して何事も無く3日経ち、平和な空気が広がる車内にオリーブの声が響く。

「どうおかしいんだ?」

「馬もそのままに停めて、馬車の隣で奴隷が呆然と立ち尽くしております。」

「とりあえず隣に付けなさい?ダーリンが首を突っ込みたそうですわ。」

「ばれた?」

「面白そうだと、顔に書いてありますわ!」

「えへへ!」

すぐに様子のおかしい馬車の隣に着き、叡斗とメイサが車から降りると、ラプター車が見えてないかのように呆然と遠くを見る隷属の首輪をした、茶髪の青年が馬車の隣で立ち尽くしていた。


「おい!大丈夫か!?」

「えっ!?あ・・・大丈夫です。」

「何があった?主人はどこだ?」

「お嬢は・・・先程突然来た奴隷商人に連れて行かれました・・・」

「人攫いか?」

「いえ!身の覚えのない借金のかたに連れて行かれました。」

「でっ?お前はここで何してる?」

「お嬢から、絶対に戻ってくるから待っとけと言われたので。」

「従順な奴隷だな・・・」

「あなたお名前はあるのかしら?積荷を見るに主人は商人ですわね?」

「ハンです、お嬢はアメリアで活動する商会主です!」

「どこへ連れて行かれたかはわかりますの?」

「連れ去った人はゼントラムの奴隷商人だったと記憶してます。」

「そのお嬢ってのは本当に無実なんだな?」

「間違いないです、お嬢がそんなへまをする訳がありませんから。」

「借金はいくらだって?」

「金貨2000枚と言ってました、後これで金貨1000枚の儲けだ!とも。」

「ふーん・・・」

「ダーリン?とりあえずいい時間ですし夜営しながら話しを伺いません?」

「そうだな!晩御飯食べるだろ?」

「エイト様達の夕食ですか・・・楽しみです。」

「ん?俺達名前言ったっけ?」

「あなたのような有名人を知らなければ商人失格です。」

「中々見所にある奴隷のようですわね・・・」

「あと奴隷に対して、寛大な方とも伺っておりますので、期待しても?」

「こんな状況なのに、しっかり自分の状況を把握出来るみたいだな?」

「どんな時でも冷静であれ、お嬢の教えですので。」

「続きはご飯を食べながら話そうか?」

「かしこまりました。」



ハンと一緒に晩御飯を食べて詳しく話しを聞く

「ふむ・・・つまりお嬢はダークエルフでアメリアの商会の人間に裏切られた可能性が高いと?」

「はい、副商会主のヤーコブと言う男はかなりの野心家ですので。」

「奴隷商人は金貨1000枚の儲けと言ったのでしたね?」

「はい、確かに聞きました。」

「奴隷商人もグルの可能性がありますのね・・・」

「でもなんで、借金奴隷を捕まえて金貨1000枚の儲けなんだろうな?」

「さっぱりですわ。」

「どうしよっかな?」

「お嬢とやらを助けて、商会を経営させれば、一般市民にも布教を出来ませんこと?」

「それに上手く行けば、これから先資金に困る事はなくなりますね。」

「上手く行けばいいけどね・・・」

「ハンを見る限り、問題御座いませんわ。」

「言われて見れば確かに・・・ハンはどうしたいんだ?」

「ここであなた方に会ったのは神の導きでしょう、着いて行きますそれに」

「それに?」

「駆け出しですが商人の勘でお金の匂いがします。」

「決まりだ!明日ゼントラムに着いたらまずは奴隷商店に行くぞ!」

「かしこまりました、夜明け前に出れば夕暮れ前に到着致します。」

「よし!明日は朝一に出発だ!」

叡斗の号令でみんなが立ち上がり、テントに入って行く。

「エイト様?」

「なんだ?」

「本当に僕も同じテントで寝ていいのでしょうか?」

「問題ない!オリーブだって首輪が見えないが奴隷だ!」

「本当に奴隷に寛容なのですね・・・」

「奴隷だって人間だろ?」

「奴隷は人であって人ではありません。」

「禅問答か?さっさと寝て明日はお嬢を探すぞ!」

「かしこまりました。」

男女に分かれてテントで寝る事になり、ゆっくりと眠りにつく叡斗だった。




「御主人様ゼントラムに入りました。」

「オリーブ車と宿をお願いしてもいいか?」

「お任せください。」

「じゃあ奴隷商店に行くぞ!」

「僕が案内します。」

この前までゼントラムで商売をしていた、ハンに案内されて奴隷商店へと向かう。

「こちらです。」

「奴隷商店って商業地区とスラムの間にあるのな・・・」

「レーマン商店もパブロフ商店も同じような立地でしたわね。」

「奴隷を扱っているので、目立つ所と言う訳には・・・」

「そうだよな・・・」

「うだうだ言ってる間にもお嬢が売られているかもしれませんわ!」

メイサがズンズンと奴隷商店へと入って行く。

「いらっしゃいませ!本日はどういった奴隷を・・・」

店に入ると、質素な作りの部屋にカウンターが置かれていて、笑顔で挨拶をするおっさんがハンを見た途端に顔を歪めて言葉に詰まる。

「あなたが店主かしら?ダークエルフを買いたいのですが?」

「ケッ!うちにはそんな奴隷いねーよ!」

「ではお嬢はどこですか?」

「ハッ!今日の8時から始まる教会競売に行けば買えるかもな?」

「借金奴隷を競売に・・・?」

「ダークエルフは珍しいから高く売れると思ったんだよ!」

「そういう事にしておきましょう・・・時間がありません行きますわよ!」

「そうだな?オリーブを向かえに行こうか!」

「宿はこちらです。」

「諦めなっ!お前らが買える値段にはならねぇよ!」

悪態をつく店主を無視して宿へと走る



「お帰りなさいませ、お嬢は見つかりましたか?」

「あぁ・・・面倒なことになった。」

「では八時まで時間がありませんので、オークション会場へ行って見ましょうか?」

「教会競売って言ってたな?」

「教会のカジノの隣に会場があります。」

「女神教って色んな事して金集めてるな・・・」

「きれい事だけではやっていけませんものね・・・」

「ではこちらです。」

ハンに案内されて会場に向かい、入口をくぐると受付の黒服に止められる


「御客様、競売への参加でしょうか?」

「そのつもりだ!ダークエルフは今日出品されるのか?」

「えー7品目中、4番目の出品で御座いますね。」

「ならオークション参加だ!」

「では参加料に金貨1枚お願い致します。」

「高っ!」

驚きながらも金貨一枚を出すと、番号札の付いた棒と人数分のマスクを渡される。


「マスク?」

「誰が落札したなどでトラブルにならないためでございます。」

「なるほど・・・」

「入札の仕方はわかりますか?」

「私が分かっておりますので問題御座いませんわ!」

「かしこまりました、では直に開始ですので席に着いてお待ちください。」

「ダーリン行きましょうか?」

マスクをしたメイサとオリーブが優雅に会場の席に着き、促されるままに席に座る叡斗とハン。



「ふむ・・・一品目は宝石ですか・・・」

「綺麗ですね。」

中央のステージに豪華な台車に乗せられキレイに飾られた、でかい宝石が付いた指輪やネックレスが運ばれて来て、進行係が元々どこかの公爵夫人が持っていた品だなんだと長々と商品の説明をしている。

「いるのか?」

「あんな物見る物であって着ける物ではございませんわ。」

「戦闘中に邪魔でしょうが無さそうです。」

「現実的な子達だな・・・」



「それでは42番!金貨1300枚で落札です!」

進行係がハンマーを叩いて台車の上の貴金属に42番という札を置いてステージの脇へと運ばれていき、次の商品が運ばれてくる。



「次も貴金属か・・・」

「先ほどよりも明らかに宝石の数が多いですわね。」

「キレイですね。」

「金貨1980枚だってよ・・・金ってある所にはあるんだな・・・」

「ダーリンよりも持ってる人がこの中にいますのかしら?」

「私もそう思います。」

「次は・・・全身鎧だな?」

「こちらは女神教会秘蔵の一品!精霊の加護が付いておりまして、魔法を掻き消しそこらの剣では傷1つ付きません!金貨500枚からスタートで御座います!」

進行係の説明が終わると共に番号札が次々と上がり、値段が見る見る間に上がって行く。


「58番2040枚!他はいらっしゃいませんか!?」

「89番2100枚!2100枚!落札です!」

「ダーリンのマジックアイテムを売ったら倍の値が付くでしょうね?」

「え?さっきの全身鎧よりもすごいの?」

「あれは・・・鎧ではなく、胸に付いてた宝玉の効果ですわ。」

「鎧は飾りか・・・」

「それにダーリンの物には足元にも及びませんわ・・・」

「マジか!」

「さぁ!いよいよですわよ?」

全身鎧が下げられ、鎖に繋がれた半裸の褐色肌の白髪のエルフが歩いてステージの中央に出て来る。


「こちらはアメリア国のフェイ商店の元経営者でございます!」

「嘘は言ってないみたいだな?」

「商売をさせるもよし!珍しいダークエルフを夜のお供にもよし!金貨1500枚からのスタートです!」

「あいつ高っ!」

「それだけの借金を背負わされたのですからね。」

「金は気にすんな!メイサに任せる!」

「かしこまりましたわ!」

メイサが番号札を上げて、ハンドサインを出す。

「103番1500枚入札です!」

「14番!1600枚!」

「103番2000枚!」

「14番2100枚!」

めまぐるしく値が上がって行く。


「メイサ大丈夫か?」

「あの子が本当にやり手なら余裕で取り戻せますわ!」

「なら任せた!」

「これでどうかしら?」

メイサがハンドサインを出すと、進行係がメイサの手を二度見する。

「ひゃっ・・・103番3100枚です!」

「いきなり金貨1000枚か・・・」

「14番は何かあるのでしょうね?私の勘が当たっていれば予算は3000枚ですわ。」

「奴隷商人が言ってた、1000枚の儲けってやつか?」

薄暗い会場の中で14番の番号札が小刻みに震えているのが見える。



「14番3150枚です!」

「ひゃっ、103番・・・4000枚!無いですか?無いですか?・・・落札です!」

「メイサ容赦無いね?」

「後姿だけでは分かりませんがヤーコブに見えますね。」

14番の札を持っていた、共を連れた男が怒りを露にしてズカズカと会場を出て行く。

「一応この後も見てみようか?」

「女の勘ですが何もありませんわよ?」

「私もそう思います。」

2人の言ったとおりに、この後の3品は巨大なダイヤがはめられたティアラ、水鉄砲みたいな水が出るマジックアイテム、テイムされたグリフォンだった。



「さて!フェイって言ったか?とりあえず宿に向かうぞ?」

「俯いていては顔がわかりませんわ、後喋りなさい?」

メイサが奴隷契約を済ませたダークエルフの顔を持上げると、褐色の肌に白髪が映える美人なエルフだ。

「お嬢!お怪我は無いですか!?」

「ハン!?なんでここにおるんや!?」

ハンがフェイに経緯を説明すると、安心したのか笑顔になり話し始めるフェイ。


「まさか今日のオークションでうちが最高値とは恐れ入ったわ!」

「とりあえず今日は宿でゆっくりなさいな?」

「あの額をポーンっと!エイト様達は何者やのん?」

「ただの冒険者だよ?」

「ふーん?商人の勘が鈍るくらいに金の匂いが充満してまんな・・・」

「で?ハンの説明で合点は言ったかな?」

「うち、フェイ言います!損はさせませんよってに!」

「なら今日は急いだから疲れたし、風呂に入るぞ!」

「そうですわね!とりあえず黙って着いていらっしゃい?」

メイサに言われ黙って着いてくる2人と宿の部屋から転移をする。


「なんやてぇ!?さっきまで宿でしたやん!?」

「俺達の能力は絶対口外厳禁だからな?」

「言えば・・・金貨4000枚が勿体無いですわね・・・」

「でへへ!これを利用すればフェイ商会なんて目じゃないがな・・・」

フェイが恍惚の表情で算盤を叩き始める。

「フェイ?これを渡しておきます、明日までに草案を出せますか?」

「この本なんやのん?レシピかいな?」

「ダーリン空間収納に何かありますかしら?」

「ハンバーグと・・・唐揚げにラーメンがあるぞ!」

「全部出して差し上げて?」

「へい!」

叡斗が空納から熱々の料理を出して、長くなりそうなのでオリーブに説明を任せてメイサと風呂に入る。



「いいお湯でしたわね?」

「そうだな!」

「御主人様、奥様・・・後はお願い致します・・・」

結界から出ると、なぜか疲れたオリーブが入れ違いに風呂に入って行く。

「ちょい!ちょい!パトロン!?これはなんですのん!?」

「何がだ!」

「この料理達や!」

「だから商会と共に料理屋を展開する草案を考えろよ?」

「任せてや!これでこける方が難しいで!資本金は本当に・・・?」

「1万枚で足りるんだろ?」

「十分すぎるでっ!うちが奴隷を雇う権限ももろてええかぁ?」

「従業員か?」

「そや!これだけのレシピや、死んでも漏らさん人材がいるで!」

「なら草案待ってるぞ?」

「なんちゅうこっちゃ!今日は寝られへん!」

フェイが算盤を弾き、草案を作り始めハンが静かにフェイの助手をする。


「仕事をするのは有難いが風呂に入れ!」

「いやや!今いい所なんや!」

「商売の種が風呂にあるぞ?」

「まだあるんかいな!?」

「オリーブ?悪いがシャンプーとかの使い方を教えてやれ!」

「かしこまりました。」

「なんやシャンプーとトリートメントなんぞうちでも扱っとったちゅうねん・・・」

フェイが少し落胆した様子で風呂へと入って行く。


「さて!あの様子だと明日は忙しくなりそうだな?」

「案外あの様子なら、全部自分でしそうですわよ?」

「彼女のエネルギーには気圧されますね。」

「な、なんやてぇぇぇぇぇぇ!」


突然頭が泡だらけのフェイが裸で風呂の結界から叫びながら出て来る。

「なんで裸なんだ?つか泡流せよ!」

「パトロン!このシャンプーなんやねん!?」

「俺が作ったシャンプーだが?」

「髪が喜んでる・・・貴族相手に金貨1枚・・・いや2枚は取れるで!」

「いいから風呂入って来い!風邪引くぞ!」

「驚きの連続やな・・・」

フェイが興奮冷めやらぬ様子で風呂へと戻って行く。


「本当に騒がしいヤツだな・・・」

「アメリア訛りもひどいですしね。」

「俺には関西弁にしか聞こえんがな・・・」

「やっぱり明日は忙しくなりそうですわね。」

「な、なんやてぇぇぇぇぇぇ!」

素っ裸のフェイが手櫛をしながら走って来る。


「予想してたよ。」

「パトロン!?このトリートメントなんやねん!?」

「お前は少し落ち着け!」

「これはセットで金貨3枚は・・・恐ろしい人に買われてしもたで・・・」

「とりあえず俺達は寝たい!さっさと風呂に入れ!」

「わかったがな!時は金やからな!」

フェイが手櫛をしながら風呂へと戻って行く。


「あんなに嬉しそうなお嬢は始めて見ます・・・」

フェイの殴り書きを清書していたハンが静かに感動していた。

「次は魔導具でなんやて、くるかな?」

「私、少々後悔致しておりますわ。」

「御主人様、私を先に宿に戻してもらえないでしょうか?」

「オリーブ!?俺達はいつも3人だぞ!」

「そうですわ!オリーブ力を合わせましょう。」

「・・・かしこまりまし「な、なんやてぇぇぇぇぇぇ!」

フェイがドライヤーで髪を乾かしながら、裸で走って来て、普段は無表情のオリーブが顔を歪める。



「もう宿に戻ったらいいんだな?」

「そのようですわよ?」

「すぐに戻りましょう。」

「ちょっ!待ってん!すぐに着替えるさかい!」

裸のフェイが風呂へと走って戻って行く。

「珍しいダークエルフの裸を見すぎたな・・・」

「肌を見せる事を嫌う種族だったと記憶してますのに。」

「今の所、ただのオーバーリアクションな露出狂ですね。」

「普段は本当におしとやかな方なのですが・・・」

ハンがフォローを入れるが、説得力は0である。


「お待たっ!パトロン?あのシャンプーとかは卸してもらえへんの?」

「俺も旅があるから、定期的ってのは無理だな。」

「ほな、錬金室作るからちょくちょく来てや!転移でこれるやろ?」

「・・・メイサ達用のを作るのにも便利だな・・・」

「商店の奥に作るさかいに材料も使い放題でっせ?」

「なら不定期でよかったら、作ってやるよ!」

「むしろその方が価値が出るでぇ!」

フェイが恐ろしい速度で算盤を弾き始める・・・

「それ計算出来てんのか?」

「もちのろんやっ!」

「ダーリン?宿に戻りましょう?」

「そうだな!」

風呂とフェイが食べた料理の食器を片付けて、宿に転移して各々の部屋へ戻る。



「パトロン?ここなんやけど・・・」

「寝させてくれ!」

「自分の部屋にお戻りなさい!」

「ちゃうねん!パトロンに確認せな草案ができへんやん!」

「お嬢、ここの計算が間違ってます。」

「あ!こら興奮しすぎて算盤が乱れたんやんな!」

「お前らの思うようにしていいからぁ!!!」

本日の叡斗の一日はまだ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ