~84話~ハヤテの悪事と約束の完了
「ダーリン感知範囲を広げられませんの?」
「今広げようとしたけど、情報量が多すぎて頭が割れそうだ・・・」
「まだ感知情報の調節が出来てませんのね・・・」
「メイサ・・・どうやって調節すんの?」
「感覚で必要最低限の情報だけを引き出すのですわ。」
「その感覚がわかんねぇよ・・・」
「みんな!遅れるな!」
「こえーよ!」
「なんであの人達はあんなに余裕なんだ・・・」
屋根の上を感知しながら進む叡斗とメイサの後ろを必死にカイル達が追いすがっている。
「ダーリン・・・反応がありましたわ。」
「本当か!?どこだ?」
「あそこです。」
「貴族街か・・・」
「関係ありませんわ!」
「よし行こう!」
メイサが感知反応を頼りに一軒の豪邸の前に立ち玄関をノックする。
「もし!誰かいらっしゃいますか?」
「生命反応があるけど、反応がないな?」
「では行きますわよ?」
「おう!」
メイサが扉を蹴破り中へ真っ暗な家の中へ入って行く。
「地下から反応がありますのに・・・階段がありませんわね。」
「『罠察知』に反応があるぞ?」
叡斗が反応のある壁を叩くと響いた音がするので壁を壊すと隠し通路が現れる。
「さすがダーリンですわ!」
「行こう!」
「エイト様?好き勝手してますが大丈夫ですか?」
「カイル心配すんな!いざとなったら免罪符がある!」
「なんですか?それ?」
「もし家主に訴えられても、罪に問われない。」
「エイト様は本当になんでもありですね・・・」
「ハッハッハッ!行くぞ!」
「なんだこりゃ・・・」
階段を降りきると、鉄格子が並んだ牢屋に出る。
「奴隷商店のようですわね。」
「エイト様あそこ!」
「ソフィア見っけ!大丈夫か?」
「エイト様!」
「なんで捕まってるんだ?」
「服を買っていたら、いきなり手錠をつけて攫われてしまいました。」
「妨害石の腕輪か・・・」
「そのせいかマジックバッグも反応せず・・・」
叡斗が牢屋の檻を壊して妨害石の手錠を握りつぶして外す。
「他のみんなも大丈夫か?」
「「「「はい!」」」」
「じゃあみんなを解放して・・・どこに通報すればいいんだ?」
「衛兵の詰め所ですかね?」
「じゃあみんなで衛兵の詰め所に行こう!」
叡斗が牢屋の檻を壊して、カイル達が捕まっている人達を救助して、衛兵の詰め所へと向かい事情を説明する。
「なるほど・・・ハヤテ準男爵の家でその様な事が・・・」
「あそこハヤテの家だったの?」
「エイトさんの話しを聞く限りハヤテ準男爵のお屋敷ですな!」
「とりあえず、事情もわからずについでに他の人も連れてきたけどお願いしていいの?」
「こちらで保護致しますのでご安心下さい!」
「では俺はこれで!」
「はい!治安維持にご協力感謝します!」
敬礼をする衛兵に見送られ、オリーブ達と合流して拠点の食堂へと転移する。
「ふぅ!帰ってきたな!」
「ではご飯に致しましょうか!」
「御主人様、何かリクエストはございますか?」
「俺が作ろうか?」
「お願いできますの?」
「前に食い損ねたピザを作ろうか!」
「では生地はオリーブと用意致しますわね?」
「奥様すぐに取り掛かりましょう。」
「ピザを作るのですか・・・」
「見学するか?」
「是非!」
「ならここで具を作ろうか!」
叡斗が食堂の机の上に道具を出して、ソーセージとツナマヨを作って、海老やイカの下拵えやミンチ肉を甘辛く炒めたりして具材を作って行く。
「エイト様手馴れてますね・・・」
「まぁ・・・旅をしてたら作る時も多いしな?」
「メイサ様とオリーブさんも結構な腕前ですが、エイト様も負けてませんね・・・」
「そんなに褒めるなよ!」
叡斗が大量のトマトソースを作り終えメイサとオリーブが作り終えた生地に具材を乗せては空納に入れて行く。
「石窯を出してもいいけど、みんながこの家でも作れるようにオーブンで作ろうか。」
「オーブンで出来るのですか?」
「簡易窯だからな!」
叡斗がオーブンにピザを入れて、焼けたらカイル達に渡して次々と焼いて行く。
「みんな?順次食べていいからなぁ!」
叡斗の声に歓声が上がり、賑やかな声が聞こえてくる
「エイト様焼けましたか?」
「ソフィアもカイルも食べてていいんだぞ?」
「我々はエイト様と一緒に食べたいのです!」
「2人共嬉しい事を言ってくれるな・・・」
嬉しい事を言ってくれる、ソフィアとカイルの手伝いのおかげで50枚近いピザを焼き終わり食堂へ行くと、オリーブが腕輪を外してピザを爆食していた。
「エイト様・・・ピザが残ってませんね・・・」
「俺達飯抜きかよ・・・」
「オリーブだきゃ・・・2人共来い!」
「「はい!」」
叡斗が食堂の端に魔導コンロと鉄鍋を取り出し、鉄鍋に牛脂を引いて、切った野菜とファットバイソンの肉を乗せて醤油と砂糖を入れて焼く
「さぁ!3人で食べようか!」
「エイト様これは?」
「いい匂いだ!」
「すき焼きだ!卵をかき混ぜて・・・こうやって食べるんだ!」
「美味しい!」
「ピザ食べ損ねてラッキーだったかもな・・・」
カイルとソフィアが一心不乱に食べる。
「御主人様、それは何という料理でしょうか?」
「オリーブいい所に!はい、アーン!」
「アーン・・・美味しいです!・・・御主人様何を?」
「サイズが合ってないようだから外れないようにサイズ調整しといたぞ?」
すき焼きに釣られた隙にオリーブの<魔力吸収の腕輪>を腕にフィットさせる。
「すき焼きという魅惑の料理で釣ったのですね?」
「お前のせいで2連続でピザ食い損ねたしな?」
「やはり怒ってますか?」
「またしばらく青太のショーは無いと思っていいよ?」
「そんな・・・殺生です。」
絶望の表情でオリーブが食堂から出て行き、3人ですき焼きを堪能する。
「エイト様達は明日出立なさるのですか?」
「その予定だけど?」
「そうですか・・・楽しみな反面、寂しいですね・・・」
「お前達はもうかなり強いから大丈夫だよ!」
「またここへ帰ってきてくださいね?」
「勿論だよ!安全に転移するための拠点なんだから!」
「では御武運を!」
「カイルとソフィアもな?」
「はい!」
2人と握手を交わして、離れた所で反省しているメイサに声をかけて風呂に入り、ベッドに寝転んでいると
「ダーリン?」
「ん?」
「何してますの?」
「俺達が作ったレシピを文字に起こしてるんだよ?」
「なぜ?」
「こうしておけばあいつらが食べたい時に作れるだろ?」
「本当に優しいのね?これはハンバーグですか・・・」
メイサが叡斗が書いたレシピに加筆をして行く。
「そう言いながら手伝ってくれるメイサも優しいね?」
「ダーリンの手伝いだからしょうがなくですわ!」
「このツンデレめ!」
「ですからツンデレとは何ですの!?」
「ヘッヘッへッ!」
2人は深夜までレシピを文字に起こし続けた。
「あれ・・・メイサおはよう?」
「ダーリンレシピを頑張るのはいいですが、程ほどになさい?」
「寝落ちしちゃったのか・・・」
「さぁ行きましょう?」
「そうだね!」
叡斗とメイサが食堂へ下りると、カイル達が朝食の準備で慌しく走り回っていた。
「どうしました?騒々しいですわね!」
「おい!エイト様とメイサ様がいらしたぞ!」
「いつもより早いじゃない!?カイルおもてなしお願い!」
「わかった!・・・御2人共どうぞ席に着いてお待ちください。」
「あ、あぁ・・・」
カイルに促され席に着くと、なれない給仕係が紅茶を運んでくる。
「なんなんでしょう?」
「送迎会かな?オリーブはどう思う?」
「私も何が何やらわかりません。」
「オリーブいつの間に・・・」
「最初から席に座ってたよ?」
「気付きませんでしたわ・・・」
訳がわからずに3人で待っていると、豪華な朝食が運ばれてくる。
「本日は頂いたお金で作った物ですが、次の機会は我々が稼いだお金で歓待をさせて頂きますので!」
「ソフィア・・・普通でいいんだよ?」
「これは我々の総意ですので!」
「なら頂こうか?」
「そうですわね!」
「では、頂きましょう。」
「いただきます!」
叡斗の声で朝食が始まる。
「このソーセージ美味しいですわね。」
「スクランブルエッグもミルクを入れていてパンに合いますね。」
「スープもしっかり丁寧にダシをとってるな?」
「これならレシピはいらないのでは?」
「まぁそれでも作ったんだし一応な?」
「そうですわね、ソフィアちょっといいかしら?」
「はいなんでしょう!?」
「これを差し上げますので、有意義にお使いになって?」
「これは・・・ありがとうございます!」
ソフィアがレシピを書いた紙を雑に紐で纏めた本を大事そうにマジックバッグに入れて、席へ戻って行く。
「オリーブ?これからの行程ってどうなってんの?」
「はい、アメリアの東端からアラブタニアへ入ると仰ってたので、北東へ向かいアメリア入りをしようかと考えています。」
「ほぅ?で?次はどこへ?」
「まずはウラジールの中心に位置するゼントラムの街へと向かおうと思っています。」
「ゼントラムまではどれくらいだ?」
「直行で4日、途中の村を経由して約1週間です。」
「直行でアメリア入りするか!そのためにカイル達を育てたんだしな?」
「かしこまりました。」
「メイサ?どうしたの?」
黙り込んで何やら考え事をするメイサ。
「ダーリン?出発は明日にしませんこと?」
「どうしたの?」
「魔王様はほっとけばいいと仰っていたのですが・・・「ドラゴンの塔」から救援要請が入ってるそうですわ。」
「ほっとけばいいとは?」
「勇者のパーティだろうけど女神の指令ではないだろうからただの踏破だろうっと。」
「ふむ・・・一応言って見るか?」
「ダーリンに黙っておこうかとも考えたのですが、やはり見捨てたと思われたくないですわ。」
「なら少し準備をしてから、「ドラゴンの塔」へ向かうか!」
「準備ですの?」
「準備と言うか・・・同行人を・・・」
「よくわかりませんが行きましょうか?」
「では私はみんなに事情を伝えて来ますので、終わったら部屋へ伺います。」
朝食を終えて、メイサとオリーブと「水竜の地底湖」へと転移する。
「ここは・・・ダンジョンですの?」
「青太の最下層と似た部屋ですね。」
「カイジン達と攻略したダンジョンだよ?おーいハイドいるかぁ?」
「おう・・・また俺の素材を剥ぎにきたのか?」
叡斗が呼びかけると部屋の壁の一部が開き蒼髪に金のメッシュが入った半裸の細マッチョな男が出て来る。
「違う!竜人紹介してやるから一緒に行くぞ?」
「雷水竜人ですわね・・・?」
「ハイドロアクアドラゴンで、略してハイドだ!」
メイサとオリーブに紹介していると、扉の奥から壮年の男女が出て来る。
「本当かい!?父ちゃん!母ちゃん!ちょっと出てくらぁ!」
「お前大丈夫なのかい!?」
「俺達の息子を騙そうってんじゃねぇだろうな!?」
「おうおう!大丈夫だ!この人はヨハン様の召喚人だから味方だよぅ!」
「なら・・・この馬鹿息子を頼みます!」
「あんた・・・立派なダンジョンを造るんだよ?」
「わかってるよぅ!番を見つけてくるぜい!」
「では息子さんをお借りします!」
叡斗がハイドを連れて、「ドラゴンの塔」へと転移する。
「嵐竜人さーん!?救援に来ましたよー!」
「これはこれは冒険者様!」
マスタールームの扉が開き白髪の美人が出て来る。
「おうおう!この美人がそうなのかよぅ!?」
「この竜人さんは?」
「同じ境遇の竜人だから、気にいればと思ってね?」
「なるほど・・・ではこちらへ!」
「マスタールームに!?いいの?」
「私はあなたに忠誠を誓いましたから。」
嵐竜人の案内でマスタールームに入って話をする。
「まずは、攻略されそうなの?」
「4人組の冒険者なのですが・・・恐ろしく強くて女神教の刺客ではないかと心配で・・・」
「そんなに強いのか・・・」
「ダーリン?」
「どうした?」
「この魔力身に覚えがありますわ?」
「ほほぅ?」
「1人身に覚えがあるような・・・ですが、残りの3人は御馬鹿コンビとゴウの魔力ですわよ?」
「ほほぅ!」
「御知り合いの方ですか?」
「とりあえず心配は無さそうだよ?」
「ならばよかったです。」
「じゃあお見合いの話だけど・・・どうだろ?」
ハイドを見ると、嵐竜人の子供と遊んでいる。
「息子とも仲良くなってますね。」
「嵐竜人さん的にはどうだろう?」
「私のような女でいいのでしょうか?」
「ハイド?どうする?」
「おうおう!問題は俺みたいな男で嵐竜人が満足出来んのかよぅ?」
「問題無さそうだな!じゃあハイド俺達は帰るからな!」
「あっ!お待ちください!踏破ボーナスは何を出せばよろしいのでしょうか!?」
「え?俺のときみたいに金貨でいいんじゃない?」
「あの時にあるだけ出したので・・・」
「ならこれくらいの魔石を作って踏破コインと一緒に入れたらいいと思うよ?」
「そんな物でよろしいのですか?」
「多分喜んで帰ると思うよ?」
「かしこまりました。」
叡斗達が屋敷へと転移して消えて行く。
「これでゴウはわかりませんが、御馬鹿コンビはSランクですわね?」
「Sになれるかもね?」
「予想外にすぐに終わりましたがどうしますか?」
「まだ朝の10時ですのね・・・」
「みんなも気を使うだろうし、出発するか!」
「ではすぐに車の準備を致します。」
オリーブがそそくさと部屋から出て行き、叡斗とメイサはゆっくりと部屋から出て屋敷の前に行くと、ラプター車が待っていた。
「オリーブ早過ぎない?」
「出る準備は朝食の前に済ましてましたので。」
「じゃあ行こうか!」
「そうですわね!」
カイル達に見送られながらラプター車が出発する。
「今回は勇者じゃなくてカイジン達だったけど、将達が大人しいな?」
「もう少しで前回から約2ヶ月間が空きますわね。」
「まぁ平和なのはいい事だけどねぇ?」
「次はもう少し骨のある子達に成長しているかもしれませんわね?」
「間接的に女神側の人間を鍛えちゃってるのかな?」
「我々に勝てないのなら問題ないでしょう?」
「そっか、そうだね!」
「それにしても、さっさとこの嫌な国を出たいですわね・・・」
「そういう事を言うと何か起こりそうで恐いよね・・・」
「ダーリンがよく言われる、フラグというものですか?」
「そう!フラグだよ。」
「ではこのまま大人しく、アメリアへ向かいましょう。」
「そうしよう!」
「ゼントラムはウラジール中の品が集まっていると聞きましたので楽しみですわね。」
「なんで首都が中心のゼントラムじゃなくて西のカピタールなんだろうね?」
「昔ウラジールが東西で別れた内戦があって、西が勝ってカピタールが首都になったはずですわ。」
「なるほど!」
「その時に特別商業都市として栄えたのがゼントラムだそうですわよ。」
「へぇ?楽しみだね!」
ゼントラムへの期待が膨らむ叡斗がいつも通りに車の中で瞑想をして魔素の声を探す。




