~72話~魔の森の歓迎と地王龍
「ガイアのおかげで大儲けだねぇ!」
「そうですわね!」
「私は暴れ足りませんが。」
ガイアに乗って村へ帰る叡斗とメイサが嫌らしく笑い、オリーブは不満そうに答える。
「今日はまだまだ日が高いですがどうしますの?」
「ガイアを村に置いとくのもあれだし、魔の森に行こうか?」
「かしこまりました、村に戻りすぐに車の準備を致します。」
「頼んだ!ガイア村の外で待ってような?」
「キュイッ!」
「理解してますのね・・・」
「竜って賢いんだな。」
「王龍でもないと造れませんから、知らなかったですわ。」
「でも「水竜の地底湖」ではウォータードラゴンいたよ?」
「ウォータードラゴンは下位竜ですわ。」
「そうなんだ・・・」
「アースドラゴンはれっきとした竜ですもの。」
話しているとガイアが村の外で止まり伏せる
「到着したので、私は行って参ります。」
「お願いしますわ!」
「待ってるよ!」
「ではダーリン鉱石の抽出を致しましょうか?」
「え?そんな事できるの?」
「『錬金術』の魔力成型の応用で出来るはずですわ?」
「ふむ・・・」
「不死王様の書物によれば、魔力成型で成分を分けると書いてありますわね。」
「とりあえずやってみるか・・・」
叡斗が鉄鉱石を取り出して、魔力成型を行う。
「あーなんとなく成分の違いがわかるね。」
「抽出は出来そうですか?」
「成分を分ける感じ・・・こうかな?」
鉄鉱石が光り、黒い塊と銀色の塊が染み出てくる
「鉄と銀ですわね。」
「成功かな?」
「こちらはただの石になってますわね。」
メイサが石の塊に『土魔法』で調べながら言う。
「じゃあガイアが取ってきてくれた鉱石全部やっとくか!」
「無理はなさないでね?」
「分かってるさ!」
叡斗が鉄鉱石を山のように積み重ねて抽出を始める
「平原だったはずなのに・・・ここは岩石地帯でしたか?」
オリーブが車に乗ってくる時には、あたりに抽出が終わった岩が転がる岩石地帯になってしまっていた。
「これは確かに不味いかな?」
「そうですわね・・・ダーリン?『土魔法』で木っ端微塵にしておきましょう。」
「わかった!」
叡斗が地面に手を置き、『土魔法』で辺りに転がる岩を砂に変え、風を起こして吹き飛ばし、土煙が飛んで行くと元の平原へと景色が戻る。
「よし!じゃあガイアはゆっくりと着いておいで?」
「キュイッ!」
何事も無かったように車が出発して魔の森へと向かって行く。
「ダーリン結局鉱物は如何ほど手に入りましたの?」
「とにかくいっぱいだね?」
「半日の成果としては十分すぎますね。」
「ガイアのおかげだね!」
「地竜をあんな使い方する人はいませんので、驚きましたわね。」
「魔の森でガイアの仲間が出来たらいいなぁ・・・」
「まぁ!なんて事を企んでらっしゃるのかしら?」
「ガイアだって一頭で番をするのは寂しいじゃん?」
「相変わらずお優しい事でらっしゃいますわね。」
メイサが諦め半分の優しい笑みで叡斗を眺めて言う。
「御主人様、魔の森に到着したのですが様子が変ですがどうしましょうか?」
「様子が変って?」
「見てくださればわかります。」
叡斗とメイサが御者台に顔を出すと、目の前に森が広がり道が続いている。
「何かおかしい事があるのか?」
「普通に森への入口があるだけですわよね?」
「地図ではここに道などありません。」
「地王龍からの招待かな?」
「罠と言う可能性もありますわね?」
「どういたしましょうか?」
「メイサ?感知に反応ある?」
「私の感知には反応はありませんわね。」
「ある程度進んで囲まれるという可能性もありますね。」
「一応ここで夜を越して朝入ろうか?」
「そうですわね!」
「ではすぐに準備を致します。」
「ガイア!今日はここでゆっくりするぞ?」
「キュイ!キュッ!キュッ!キュッ!」
ガイアが頭を振り森の入口で短く何度も鳴く
「ガ、ガイアどうしたんだ!?」
「ラプターが仲間を呼ぶ声に似てますね。」
「ガイアの産まれた地ですし、任せてみましょう。」
「そうだな・・・何かあればすぐに対処するぞ?」
鳴き続けるガイアを3人は車から降りて油断なく観察していると
「ダーリン・・・」
「でかいのが来たな?」
「5体ですわね。」
「アースドラゴンだよな?」
「反応は地中からしますので地竜だと思いますわ。」
「ガイアはどうするんだろうな?」
ガイアが鳴くのをやめて、突然飛び上がり地面に頭からダイブして潜って行く。
「御主人様、ガイアが地中に潜りました!」
「5体の反応と戦ってるみたいだな?」
「地中では手助けのしようがありませんわね。」
叡斗とメイサは臨戦態勢のまま感知でガイアと地竜らしき反応の動きを伺いながら待っていると、ガイアと5体の反応がこちらへと向かってくる。
「来るぞ!」
「「はい!」」
3人武器を構えると、目の前の地面から地竜を咥えたガイアと4頭の地竜が姿を現し、ガイアが叡斗の目の前に息絶えた地竜を置く。
「群れのボスを倒したのでしょうね。」
「じゃあ後ろの4頭はガイアの部下か?」
「キュイッ!」
ガイアが一鳴きすると4頭の地竜が頭を地面に付ける
「そのようですわね。」
「ガイアえらいな!自分で仲間まで見つけてきて!」
叡斗が地竜を空納にしまって、ガイアを撫でながら傷を治す。
「キュイ!」
ガイアが鳴くと地竜が森へと振り返り、ラプターが車を引いてきて叡斗達の目の前で車が止まる。
「行くのか?」
「そのようですわね?」
「御主人様の判断に任せます。」
「ペットを信じられない飼い主は駄目だよな・・・」
「では行きましょう!」
「かしこまりました!」
「いざとなったら即行転移だからな?」
「わかっております!」
「心得て御座います。」
5頭の地竜が先導してラプターが車を引いて行く。
「辺りが暗くなってきたが魔物はいないみたいだな?」
「いえ、がんばって隠れてますがたくさんいますわ。」
「そうなの!?」
「そこにはオーガの村落のような物がありますわね。」
「本当だ!火が見えるね。」
「あちらにはバジリスクの群れがいますわ。」
「隠れてるって事は大丈夫なのかな?」
「隠れても逃げはしないので敵意は無さそうですわね・・・」
「感知系スキルは俺の方がレベル高いのに俺にはわかんないな・・・」
「あれもこれも練習してますから、少しづつですわ。」
「そうは言っても焦るよな・・・」
「私は何百年もかけて培ったものをダーリンは数ヶ月で身につけているのですよ?」
「何百年も生きてるんだね。」
「ハッ!」
「歳なんていいじゃん!重要なのはあとどれだけ一緒に生きられるかじゃない?」
「ダーリン・・・」
「メイサ!今はまずい!魔素を吸うのはまずい!」
興奮したメイサは膝枕をする叡斗へと被り付く。
「御主人様、奥様、到着したようです。」
「本当か!?助かった!」
「ダーリン・・・」
メイサから必死に抵抗していた叡斗が安堵の表情を浮かべる。
「メイサ降りるぞ!」
「はい・・・」
意気消沈したメイサと車から降りると目の前に大木がそびえ立ち、その前に肩にかかる白髪をなびかせた老人が仁王立ちをしていた。
「地王龍・・・さんですか?」
「如何にも!お主はヨハンの使徒でいいのじゃな?」
「そうです!」
「ならばよし!腹が減っておろう?飯にしようぞ!」
「え?あ・・・はい!」
地王龍と名乗る老人が大木の根元にある、扉へと入って行くので3人が付いて行く。
「それで?何をしにここへ?」
「まず魔の森からの魔物が出てこないようにしてくれないかと。」
「あぁ・・・群れのボス争いで敗れた者がはぐれて出るが無理だな。」
「じゃあガイア、あの地竜達を森の入口付近に配置してもいいですか?」
「構わんぞ!」
「ありがとうございます!でもなぜこんなに身体持ちの魔物が?」
「女神との戦争に向けての戦力じゃよ。」
「戦争するんですか!?」
「今女神の動きを止めとるでな?時期を見計らっておるのじゃ!」
「動きを止めるとは?」
「南の女神教信者を騙して精霊を集めさせ、世界の魔素を薄めたのじゃ。」
「あんたが原因かよ!」
「我の研究では、魔素が少ないと女神は顕現出来んのでな。」
「精霊を解放して頂く事は?」
「ふむ・・・解放してもよいがダンジョンを持たぬお主は真っ先に狙われるぞ?」
「神には勝てないか・・・」
「ちょっと待て!『鑑定』!」
地王龍が鑑定を始めると、叡斗の全身を悪寒が走りつづけ身震いさせる。
「ほほぅ・・・お主面白いな!不死王とは語り合ってみたいものよな!」
「『上級鑑定』だって!?情報を処理しきれるんですか!?」
「1000年も生きとるとこういう事も出来ねばな?フォッフォッフォッ!」
「それで?俺はどうしたら?」
「とりあえず今のまま世界を見て来い!」
「え?精霊の解放は?」
「我に会いに来るタイミングは自ずと分かる時が来るはずじゃて!」
「なんだよそれ・・・」
「我の考察が正しければ、時が来れば分かるはずじゃ!」
「考察とは?」
「1000年の苦労の成果を簡単に教えるわけなかろうが!さぁ飯を食えっ!」
「わかりました!頂きます!」
「「頂きます」」
3人は地王龍が用意してくれた料理を食べるが
「うまっ!?」
「美味しいですわね。」
「絶品です。」
「そうじゃろそうじゃろ?暇なんで料理の研究も余念がないからの!」
晩御飯が終わり、メイサとオリーブは地王龍に料理を教えてもらって、叡斗はガイアの部下の地竜用の<魔力吸収の腕輪>を作る。
「それで?お主は何を望む?」
突然対面の椅子に座りながら地王龍が尋ねて来る
「望むとは?」
「お主の記憶を『鑑定』したが、お主の望み、欲望が見えんかった。」
「今が充実してますしね?」
「生物は欲で動く、欲の無い生物は信用出きんのう?」
「しいて言えば、魔王達も含めてみんなで面白く自由に生きたいですかね?」
「フォッフォッフォッ!なんと欲の無い!」
地王龍が叡斗を品定めするように見ながら、快活に笑う
「ならば我はお主の味方じゃ!困った時は尋ねて来なさい?」
「ありがとうございます!でも俺達が来る事をどうして?」
「地王龍じゃぞ?地が続く限り我の領域じゃて?」
「さすがは地王龍ですね。」
「地王龍様?」
「どうした?蛇の子よ。」
「地王龍様の知っている歴史を教えて頂きませんか?」
「よかろう!」
地王龍が語り始める
「まずは我々は人が絶滅しそうになっていた折にヨハン様によって造られたのじゃ、そして方々へ散って眷族を造り魔物を退治して行ったのじゃ・・・」
地王龍が話しを止める
「どうしました?」
「いや、その折に魔物の魔素を取り込んだ眷属が知恵を付け始めた。」
「竜人・・・魔族の起こりですか?」
「そうじゃ。方々に根を張り魔物を退治するが野良の魔族達も根を張って我々から逃れ始めた折に、ヨハンから4人の召喚者が送られてきたんじゃ。」
「それが4人の勇者ですね?」
「そうじゃ、我々が勇者を鍛え管理区域を決めて方々へ散り魔族を従えて行ったのじゃが・・・女神が現れ全てを滅茶苦茶にしおった。」
「4人の魂の制約ですね?」
「その通りじゃ、そこからはお主達が見た日記の通りじゃな。」
「ここから南にも国があるんですか?」
「精霊を捕らえて女神の動きを止めた途端に女神教の勇者が現れだして、今は女神教の巣窟になってしまっておるが、国があるぞ。」
「今は行けないんですね?」
「今はその時ではないじゃろう・・・さぁ!今日はもうゆっくりして明日はカピタールへ向かうがよい!」
「そこに何かあるのですか?」
「フォッフォッフォッ!面白い事になっておるぞ?」
「何が起こってるんです?」
「お主らが女神教相手にどうするか楽しみじゃて!」
「どういう意味ですか?」
「久々に長話をして疲れたので、老人が寝るでな?」
地王龍が無視して部屋を出て行く。
「あの爺・・・言いたいことだけ言いやがって・・・」
「女神教相手にですか。」
「ウラジール、ミサト=コウラクの嫌がらせですかね?」
「わからんが行くしか無いんだろうな?」
「いざとなれば私が全て玉砕致します。」
「そうですわね?3人で力を合わせれば敵無しですわ!ではダーリン!」
メイサが叡斗にかぶり付き叡斗がぐったりとなる。
「ふう!気が治まりましたわ!」
「奥様ずっと我慢してたのですね。」
「さぁ寝ましょう!」
「はい。」
薄れる意識の中2人の声が聞こえた気がした。
翌朝、地王龍の朝御飯を堪能しつつ、地王龍にあれこれと質問するがのらりくらりとかわされ、ガイア達に先導されて魔の森の入口へ帰ると、見覚えのある面々が待っていた。
「ベアトリーチェさん?リーテ達にガンツ達も?どうしました?」
ガイア達に怯えるベアトリーチェ達の後ろに10台の馬車が並び、馬車を守るように震える冒険者達がこちらの様子を伺っている
「アースドラゴンの報告を受けて避難のために駆けつけたのですが・・・」
「解決しましたよ?」
「そのようですね?こちらへ向かったと聞いたので伺いました。」
「魔の森の調査をしてましてね?」
「よく戻ってきましたね・・・その地竜達は?報告では1頭のはずですが?」
「ガイアの部下です!こいつらが魔の森を見張ってくれますよ?」
「では魔物は出てこなくなると?」
「全部は無理かもしれませんが、減ると思いますよ?」
「人は襲わないのですか?」
「一応そうお願いしてますが、保証は出来ませんね。」
「そうですか・・・これは報告させて頂いても?」
「どうぞ構いませんよ?」
「わかりました、他にも詳しく報告を頂けたらありがたいのですが・・・」
「いいですよ?言えない事もありますがね!」
「構いません!」
「ではヴェステンドルフに戻って頂いてよろしいですか?」
「問題ないですよ?」
「ありがとうございます!ではすぐによろしいですか?」
「では行きましょう!」
「はい!」
ベアトリーチェが馬車へと走って戻って行く。
「エイト様!馬車が無いので乗せて貰えないですか?」
3姉妹がその場に残って言う
「え?ハヤテの馬車は?」
「気がついたハヤテさんが目にも留まらぬスピードで盗んで行きました・・・」
「本当に最低な野郎だな!」
「連れの2人は、本部へ連行されました。」
「1人で逃げたのかよ・・・乗りなよ!」
「ありがとうございます!」
3姉妹とメイサと叡斗が乗込み、叡斗が見えなくなるまでガイアに手を振りながら車がヴェステンドルフへと進んで行く。




