~70話~声と新しい仲間
全てが面倒臭くなりウェステンデから逃げるように出発した叡斗達
「ダーリン?少し遠回りになりますが、ヴェステンドルフという村があるそうですがどうしますか?」
「どれくらいかかりそうなの?」
「明日の夜に到着で、ヴェステンドルフから魔の森までは半日ほどだそうです。」
「魔の森の近くで何か困ってるかもだし行くか!」
「かしこまりましたわ!オリーブ?」
「かしこまりました。進路を変更します。」
「次の村は友好的だといいな・・・」
「そうですわね・・・」
メイサと叡斗が遠い目をする
「よし!特訓しようか?」
「わかりました!」
メイサが妨害石で出来たバックルをへそに当てると、身体の魔素が無くなり身体が重くなる。
「『魔力感知』と『魔力吸収』を行いますか?」
突然頭の中に感情の無い声が響くので、思わず「はい」と頭の中で答えると突然身体が軽くなる。
「ダーリン大丈夫ですの?」
「頭に声が響いて楽になったよ。」
「魔王様が言っていた声なのですかね?」
「わかんない・・・」
「今も聞こえますの?」
「一言声を聞けただけで聞こえないな。」
「魔素が無くなったので存在を認識出来たのかもしれませんわね。」
「ふむ・・・」
「ではこのまま魔石作りをして見ましょう。」
「魔素全然戻ってないけど大丈夫かな?」
「ダーリンの魔素量が莫大ですので、周りの魔素を吸っても足りないのですわ。」
「気を失ったら介抱してね?」
「勿論ですわ!これからの目標は魔素をなくして声を認識出来る様にすることですわね。」
「気を失う前提なのね・・・」
「まだまだダーリンの魔素量は増え続けてますので一石二鳥ですわね?」
「わかりましたよ!」
メイサに言われるままに叡斗が両手の魔晶石に魔素を入れて行く
「妨害石を着けてるのにもう慣れたものですね?」
「あぁ!魔素さえあればこれくらいの妨害は余裕だい!」
叡斗が次々と魔石を作り上げて行く。
「告、魔素量が限界値です。」
「聞こえた!魔素が限界だっ・・・」
叡斗が言い切る前に意識を失う。
「おはよう?」
「おはようございますダーリン。」
叡斗が目を覚ますと車の中で対面の席にメイサが寝転び、真ん中の通路にオリーブが寝ていた。
「なんで車の中なの?」
「昨日はダーリンがテントを空間収納したので、ここで夜を明かしましたの。」
「そっか・・・ごめんね?」
「問題ありませんわ!料理の準備とお風呂をお願いしても?」
「わかった!」
叡斗が急いで魔導コンロを用意して、お風呂を作る。
「オリーブおはよう!ごめんね?」
「問題御座いません・・・あっ」
オリーブのお腹がなる
「調理道具も俺の空納だったからな・・・ごめんな・・・」
「いえ、むしろ御主人様に頼りすぎだと痛感した次第で御座います。」
「ダーリンがいないだけで、料理もお風呂も何も出来ませんでしたものね?」
「本当にごめんな?」
「ダーリンは大事な仕事をしているのですから、謝る事は何もありませんわよ?」
「お詫びにマヨネーズ教えるよ・・・」
「あの白い液体ですの?」
「あぁ!万能調味料だ!」
メイサとオリーブにマヨネーズの作り方を教えると、メニューが変わった。
「全部にマヨだ・・・」
野菜サラダにマヨ、パンにもマヨ、サーペントのステーキにもマヨ。
「メイサ!それは駄目だ!」
メイサがスープにもマヨを入れようとしているので、叡斗が急いで止める
「この調味料は何でもあうのでスープにも合うかと・・・」
メイサがマヨネーズを指で掬って舐めながら言う
「マヨラーの誕生を見てしまった・・・」
「御主人様、なんの変哲もないパンが・・・止まりません。」
マヨを塗ったパンを際限なく食べ続けるオリーブ
「ステーキも味に奥行きが出ますわね!」
「マヨ尽くしで胸焼けが・・・」
マヨにご満悦になり風呂でさっぱりとした上機嫌の2人と出発する
「ダーリンまたされるのですか?」
「声が聞けたからね・・・」
「では瞑想して自分の中の魔素を探しては如何です?」
「なるほど!」
叡斗がメイサの膝の上で目を閉じて自分の体の中の膨大な量の魔素に一つ一つ語りかけて行く。
「ダーリン昼休憩ですわよ?」
「もうそんな時間か!?」
「集中してらしたものね?」
「どの魔素に語りかけても返事ないよ・・・」
「語りかけるのではなく命令をしてみればどうですか?」
「昼からはそうしてみるよ。」
「ではマヨネーズを食べましょう!」
「お願いだから昼ご飯食べさせて!」
叡斗が心配したが昼御飯はマヨはパンに塗っただけで、サーペントの唐揚げと
野菜サラダとスープだった。
「唐揚げにもマヨが合うな!」
「え?・・・本当!美味しいですわ!」
「御主人様!これは大発見です!」
「オリーブが珍しく興奮している・・・」
「それくらいにおいしいですわ!」
「野菜にも唐揚げにも!何にでも合いますね!」
興奮したオリーブが唐揚げと野菜をパンに挟んで貪る様に食べている
「食後はプリンを作ってますわよ?」
「いつの間に!?」
「フフフ!私も料理の効率が上がってますのよ?」
バケツプリンを食べて上機嫌のオリーブとメイサと出発する
「ダーリンどうですか?」
瞑想をする叡斗にメイサが問うが
「返答はないな・・・」
目を閉じて集中する叡斗が答える
「やはり魔素が無くならないと駄目なのでしょうかね?」
「わからん・・・しばらくは瞑想してみる。」
「ダーリンがそう仰るならそれでよろしいですわ。」
「で?どれくらいに時間が経ったんだ?」
「もう少しで日暮れですわよ?」
「そんなに時間経ってたの?」
「3時間くらいは集中してらしたわね。」
「そんだけ探して見つからなかったのか・・・」
「となると危ないが妨害石で特訓した方がいいのかな?」
「そればかりはダーリンの感覚ですので・・・」
「・・・妨害石でやってまた二人に迷惑かけても嫌だしな・・・」
「そんな事は考えなくてよろしいですわ!」
「ありがとね?」
「さっさと『魔力操作』を極めて初夜です!」
「あぁ・・・そういう事ですか。」
メイサが鼻息を荒くしてガッツポーズをしている。
「御主人様、何やら慌てた様子の人がやってきます。」
「なんだと?」
「私は応対致しますので、どうぞごゆっくりと。」
「何かあったらすぐに言うんだぞ?」
「かしこまりました。」
しばらくして車が止まりオリーブと男が話す声が聞こえ、すぐに車が出発し叡斗達が来た道を馬が走って行く。
「オリーブ何だったんだ?」
「どうやら魔の森からアースドラゴンが出てきたそうです。」
「ふーん?」
「ウェステンドルフの村を襲う可能性が高いので、ウェステンデに報告と救援の依頼をしに行く人だったようです。」
「なるほど!ならウェステンドルフに急ぐべきだな?」
「では少々揺れます。」
「オリーブ無理はすんなよ?」
「問題御座いません。」
オリーブの鞭の音が2回聞こえると、車の揺れが少し大きくなる
「ダーリン?」
「どうした?」
「感知に大きい反応がありますわ!」
「オリーブ何か見えるか?」
「村が見えてきましたが、人がこちらへ走ってきます」
「反応は村の奥からですわね。」
「おい!アースドラゴンが向かってきてるぞ!?」
「逃げろぉ!」
外から村人が車に向かって叫ぶ声が聞こえる
「御主人様!ラプターが恐がってこれ以上進みません。」
「わかった!行ってくるから車は任せたぞ?」
「かしこまりました。」
「ダーリン行きましょう!」
「俺にも感知できた!行こう!」
叡斗とメイサが車から出て、『風魔法』で村を飛び越えて飛んでいく。
「いましたわ!」
「あれがアースドラゴンか?飛べなさそうな翼だね?」
背中に申し訳無さそうに小さな翼・・・と言っても巨躯なので小さく見えるが十分に大きい翼が生えていて、尻尾の先がスパイクのようにとげとげとした球体が付いたティラノサウルスが走っている。
「地竜ですわ!翼は地面を泳ぐ時の補助器官ですわ!」
「地面に潜るの?」
「空を飛ばない代わりに地面を泳ぎますわ!」
「わかった!俺が行く!」
「ではお任せします!」
叡斗がアースドラゴンに向かって突っ込んで行きそのまま殴りかかる。
「肉弾戦ですか・・・」
叡斗が土煙を上げてアースドラゴンと殴りあっている。
「ゴァァァァ!」
アースドラゴンが咆哮しながら、叡斗を切り裂こうと前足を振るいスパイク状の尻尾を振るが、それをひょいと避けてアースドラゴンにとび蹴りをする。
「さすがは地竜、硬いな!」
叡斗が笑顔で1人ごちてそのままアースドラゴンを殴り伏せて行く。
「ダーリン?潜ろうとしてますわ!」
「大丈夫だ!」
ジャンプして頭から地面に飛び込むアースドラゴンが地面に潜れず、そのまま地面に頭を打ちつけて仰向けに転び、叡斗がすかさず腹の上に乗り、巨体のアースドラゴンに馬乗りになって何度も殴りつけるとアースドラゴンが甲高い声を上げパタリと仰向けのまま動かなくなる。
「ダーリン?なぜ地竜は地面に潜れなかったのですか?」
「俺があいつより上の『竜魔法』で妨害したんだ。」
「なるほど・・・で?殺さないのですか?」
「ペットが欲しかったからテイムしてみた!」
「竜をテイムですか?ダーリンレベル1でしたわよね?」
「やっぱり無理かな?」
「よほどのレベル差が無い限り・・・差は十分ですわね。」
「出来ないかな?」
「起きてからのお楽しみですわね。」
「テイム出来てたら考えてることがあるんだ!」
「何を考えてますの?」
「魔の森の門番。」
「魔物が出てこないように、置きますの?」
「それが出来たら周りの村は安心じゃね?」
「ふむ・・・テイム出来てますかしらね?」
「とりあえず『調教』を発動させながら倒したけどこの後どうしたらいいんだろ?」
「確か・・・ダーリンの魔素を与えるはずですわ。」
「そうすれば、従魔に?」
「『調教』スキルを使うなんて思ってませんでしたので、記憶がおぼろげですわ・・・」
「とりあえずやってみるか・・・」
叡斗が仰向けのアースドラゴンに手を当てて、魔素を送るとアースドラゴンの目が開き甲高い声で鳴き始める。
「キュイキュイ」
「お?喜んでる?」
「巨体に似合わずかわいい声ですわね。」
アースドラゴンが身を起こして、おもむろに叡斗にのしかかる
「おわっ!」
ドスンという地響きと共に叡斗がアースドラゴンの下敷きになり姿が見えなくなる
「ダーリン!?」
「じゃれてきてるのか?」
アースドラゴンの下からもぞもぞと這い出る叡斗
「みたいですわね・・・」
「よーしよーし!」
叡斗が頭を撫でると気持ち良さそうに、目を細めてキュイキュイと鳴くアースドラゴン。
「ガイア!村の向こうまで乗せて行ってくれるか?」
「キュイキュイ!」
アースドラゴンが足を曲げて、乗りやすいように身体を叡斗に傾けてくる
「言葉を理解してる・・・賢いぞ!」
「ガイア?」
「ペットなんだ!名前が必要だろ?」
「まぁいいですわ・・・行きましょうか・・・」
「そうだな!ガイア!村を壊さないように迂回して行って!」
「キュイキュイッ!!」
叡斗とメイサがガイアに乗って指示をすると嬉しそうに鳴いてガイアが走り出し、すぐにラプター車の元へと辿り付き、ラプターを宥めていた、オリーブが意を決して斧を構えるので、叡斗がガイアの頭から顔を覗かせるとオリーブがキョトンとした後に納得した表情をしてすぐにいつもの無表情になりお辞儀をする。
「御主人様、奥様、おかえりなさいませ。」
「戻ったぞ?新しい家族だ!」
「『調教』なさったのですね?さすが御主人様です。」
「ガイア?ラプター達に挨拶して?」
「キュイッキュイー!」
ガイアの声にラプターが小便を漏らすが、俺の顔が見えるからか逃げはしないみたいだ。
「ダーリンでは村人を待ちながら御飯にしましょうか?」
「そうだな?ガイアの御飯どうしようか・・・」
「作るしかないでしょう?」
「とんでもない量になるな・・・」
「さぁ!オリーブ今日から気合を入れますわよ!?」
「なぁ?食事をして魔素を獲得してるんだよな?」
「そうですわ?」
「俺って毎日メイサに魔素を空にされてるのになんで食事量は普通なんだ?」
普通の人より少し多いくらいの量を食べれば魔素が溜まって行く
「それはダーリンの魔素吸収増加指輪の効果で魔素の吸収量が増えているからではないかと思っていましたが?」
「やっぱりそう?じゃあちょっと考えがあるから普通の量を作ってて?」
「ダーリンがそう言うなら・・・」
叡斗がメイサとオリーブに言って、材料を用意して『創造魔法』を行う。
「よし!ガイア待てだぞ?」
叡斗がガイアの前足に木製の巨大な腕輪を着けて、オリーブにも木製の腕輪を渡す。
「御主人様これは?」
「魔力吸収の腕輪だ!」
<魔力吸収の腕輪>
魔力の吸収効率が大上昇
「これで食欲が人並みに?」
「試してみようか?」
「かしこまりました。」
「出来ました!では御飯に致しましょう!」
オリーブがテキパキと配膳を済ませ御飯が始まるが、ガイアは1kgのサーペントの焼肉を食べて腹がいっぱいになり、オリーブは俺よりも少ない量でご馳走様をした。
「成功だな!?」
「さすがダーリンですわ!」
「満腹ですが、少し物足りません。」
「オリーブ嫌ならはずしていいぞ?」
「そうですわよ?」
「御主人様からのプレゼントですので。」
「まぁオリーブがそう言うなら・・・」
「ん?もう大丈夫ですわよ?」
メイサが突然暗闇に向かって声をかけると、恐る恐る1人の男が暗闇から出てくる。
「あの・・・アースドラゴンは・・・?」
「そこにいますが?」
「ひぇぇぇぇ!!」
「大丈夫です!叡斗様がテイムしました!」
「テ・・・テイム!?」
「ですので、危険はありません!他の村人にも伝えなさない?」
「本当に危険は無いんで?」
「ほら?この通り安全ですわ!」
メイサがガイアの頭を撫でながら言う
「わ・・・わかりましたぁぁぁ!」
「ダーリン?本当に安全ですわよね?」
「知らん!」
「ガイア?暴れないですわよね?」
「キュイッ!キュキュイーン!」
「声は可愛いのですがね・・・」
「ラプターも怯えなくなったし大丈夫だろ?」
「それもそうですわね・・・」
「人が集まってきたな?」
「そうですわね。」
メイサが暗闇に向かって行き、村人に説明をすると、村人達は大人しく遠巻きにガイアを見て村へ戻って行く中1人の老人がこちらへとガイアをちらちらと確認しつつビクビクと向かってくる。
「村長さんかな?」
「村長でしょうね。」
「村長だと思います。」
「どうも!ロキマ国冒険者のエイトと申します!」
叡斗が老人に向かって手を差し出して自己紹介をしながら歩み寄る。




