~69話~虚偽報告と決闘
叡斗達が階段を上りきるとベアトリーチェが部屋から出てこちらを見ていた。
「今の音は何でしょう?」
「何かありましたか?」
「今しがた轟音と途轍もない殺気を感じましたが?」
「ハッハッハッ!問題ありませんよ!」
「問題無いですって?ハヤテさんの報告では問題だらけですが?」
「やっぱり?」
「やっぱりではありません!ハヤテさんからの報告を本部には報告させて貰いますからね!?」
「それはこちらの記録係の話しを聞いてから判断をお願いします。」
「え?貴女達はエイトさんと一緒にロックオーガの餌食になったのでは!?」
「そこを記録係から聞いて下さいね?」
「そうします!では部屋へ行きましょうか?」
部屋へ入りリーテとガンツが報告書を差し出しベアトリーチェが読む
「これは・・・ハヤテさんからの報告と違いすぎますね・・・」
「我々は公平に記録しただけです!」
「俺達も公平に記録しました!」
リーテとガンツが言うとベアトリーチェが頷き
「二つの報告に矛盾は見当たりませんね・・・皆さん?この記録は間違いないと誓えますか?」
「ウラジールの誇りにかけて!」
「「「「同じく!」」」」
記録係の5人が胸に拳を当てて、胸を張って言う
「はぁ・・・では明日の朝にハヤテさんと対策会議をする予定なのでそれに参加してもらえますか?」
「朝とは正確には何時でしょうか?」
「根に持ってますね・・・当然ですね・・・9時きっかりにここへお願いします。」
「わかりました!あと素材の売却は?」
「すぐに拝見しましょう!」
みんなで馬車から素材を運び職員が査定を行う
「こんな傷の無い皮を見たことがない!」
「どうやってこんなに綺麗に?」
職員とベアトリーチェが驚いて聞いてくる
「え?首をはねて、リーテ達が剥ぎ取りをしましたが?」
「身体持ちのロックオーガの首をはねる・・・」
「何か素材に問題でも?」
「討伐方法に問題がありますが、いいです!」
「マスター?牙・角・皮全てに傷が無い最良品ですので、金貨84枚では?」
「金貨84枚だそうですが、どうですか?」
「俺はいらない!リーテ達3姉妹に聞いてくれ!」
「問題ないです!エイト様本当によろしいのですか?」
「君達が頑張ったんだ!勿論だよ!」
3姉妹が飛び跳ねて喜び
「俺達エイトさんの記録係したかったな・・・」
「ガンツそれ以上言うな!」
ガンツとハリーが3姉妹を羨ましそうに眺める
「じゃあまた明日の朝9時に!」
「はぁ・・・ではお待ちしています。リーテ?ここに受渡しのサインを。」
「はい!」
手続きをリーテ達に丸投げしてオリーブがこの前泊まった宿に、戻って手続きをしてくれているはずなので宿へメイサと向かうつもりだったのだが
「なんでお前ら着いて来るんだ?」
「いや・・・エイトさんの近くにいないと恐くて・・・」
「恐いってなんだ?」
「不利な報告をした俺達を始末しにこないかと・・・」
ガンツが周りをキョロキョロと見渡しながら言う
「まだ知らないんだから大丈夫だと思うが?」
「冒険者のネットワークを舐めたら駄目です!」
「なら明日までは守ってやるよ!」
「「ありがとうございます!」」
2人が頭を下げてキョロキョロと周りを伺いながら後ろを着いてくる
宿に着くとオリーブが表で待っていて、促されるままに食堂へと行くと、料理が所狭しと並ぶ机へと案内される。
「お手を煩わさぬよう料理と飲み物を注文しておきました。」
「さすがオリーブだ!」
「いえ、当然の・・・もぐ・・・です。」
「わかった・・・集中して食べなさい。」
「もぐ・・・りました。」
口いっぱいに頬張って何を言ってるかわからないオリーブが恐ろしい速度で料理を平らげて行く。
「昼もすごいと思ってたけど・・・」
「そうだな圧巻だな・・・」
「ついでだからおごるから好きなだけ食べろ!」
「アザス!酒もいいですか?」
「今日は特別だ飲め飲め!」
ガンツとハリーが手放しに喜んで酒を注文する
晩御飯を堪能してガンツとハリーの部屋に結界をかけて部屋に戻り、街の外に転移して風呂に入る。
「ダーリン!明日はどうするつもりれふの?」
「どうするつもりとは?」
「あの小僧の事ですわ!」
「何も考えてないよ?」
「御主人様、お許しを頂ければ私が。」
メイサが酔っ払ったらオリーブと3人で入るのが、慣習になって来た。
「まぁ明日のベアトリーチェの対応で考えようか?」
「そうれすわね・・・」
「合図をして下されば私が頭と体をさようならさせます。」
「わかったから!落ち着こうな?な?」
「御主人様私の体を見て興奮なさいましたか?」
「誰だ!オリーブに酒を飲ませたのは!?」
酔っ払ったオリーブが隣から腕に絡んで胸を押し付けてくる。
「ダーリン・・・小僧を一緒に・・・殺して・・・」
メイサが恐いことをいいながら叡斗の胸の中で眠る。
「御主人様!久々に2人きりですね!」
「メイサがいるが?」
「奥様は寝入ってしまいました。2人っきりです!」
「目が下がってるぞ?ほら!上がって寝るぞ!」
「ムゥー!御主人様はいけずです!」
眠たそうな顔で頬を膨らましたオリーブがメイサを抱えて脱衣所に向かって行く。
宿に戻ってメイサを寝かして横に寝るが、なぜかメイサの反対側でオリーブが寝入っている。
「御主人様、おはようございます。」
「うわ!オリーブか・・・おはよう!」
今日は目覚めと共に目の前のオリーブの顔で目覚める
「ダーリン?なぜオリーブに先に挨拶をしてますの?」
叡斗が首を左に振ると膨れっ面のメイサがいた
「ごめんメイサ、おはよう?」
「おはようございます、ダーリン!」
「シングルベッドに3人は無理だろ、寝返り打て無くて体が固まってるよ!」
「酔った行動ですので、お許しください。」
「・・・酔っていたのなら致し方なしですわね!」
酔って失敗しまくりのメイサが言う
「今回はストレスが溜まってたんだろうが、次もあったら酒禁止だぞ?」
「かしこまりました。ではガンツさん達を呼んでまいります。」
オリーブが着替えて部屋を出て行く
「じゃあ俺達は食堂に行こうか?」
「そうですわね!」
食堂に2人で向かっているとビクビクと肩を寄せ合いながらオリーブと食堂へ向かうガンツとハリーがいた。
「大丈夫だったようだな?」
「そのようですわね?」
2人で和やかに話して食堂で5人で食事を済ませギルドに行く
「だ・・・大丈夫ですかね?」
「エイトさんがいるんだ!だ、だ、大丈夫だよ!」
「一応感知はしてるがハヤテっぽい反応は無いぞ?」
「ほほほほらこう言ってるし大丈夫だよ!」
「そそそそそそうだな!?」
「テンパリすぎだろ・・・」
2人は脂汗を流しながら小さく縮こまって辺りを伺っている
「エイト様ぁ!」
3姉妹が手を振りながらこちらへ走って来る
「おぉ!無事だったか!?」
「無事とは?」
リーテが首を傾げる
「この2人は昨日からハヤテが来ないかってビクビクしてるぞ?」
「もう報告してるんですから、口止めにならないですよね?」
「そう思うんだが・・・こいつらが怯えてな・・・」
「肝っ玉の小さい野郎共ですねぇ!」
「ハハハ!3姉妹は強いな!」
「だてに女だけのパーティーで冒険者してません!」
「それもそうだ!ギルドでハヤテをへこませるぞ!」
「「「はい!」」」
意気揚々と進む3姉妹とは対照的にビクビクと縮こまるガンツとハリーを連れてギルドマスターの部屋に入ると、ソファーにハヤテ達が座っていた。
「なっ!?生きてたのか!?」
「おかげ様でな?」
「後ろのガンテとバリーだったか?よく無事だった!これから救援要請の話をする所だったんだ!」
「ガンツとハリーだろ?馬鹿か?」
「ば・・・馬鹿と言ったか?」
「弱い上に頭も悪くて、耳も悪いのか?」
「貴様!?20年冒険者をしていてこんな屈辱始めてだ!」
ハヤテが手袋を投げようとしてベアトリーチェが声を張る
「やめなさい!」
「ちっ!リーチェさんに助けられたな?」
「意味がわからん・・・」
「ではハヤテさん?あなた方の報告をもう一度聞かせて頂けますか?」
「ちっ!このロキマの奴らが作戦を無視して突っ込んでうちの記録者が負傷したから逃げてきたんだよ!そうだよな?」
ハヤテが嘘八百の報告をしてガンツとハリーに同意を求める
「ではロックオーガはまだ討伐出来ていないと?」
「そうだ!あんなロキマの腰抜けにロックオーガが倒せる訳ないからな!」
「昨夜7体分の素材を買取りました。」
「は?」
「昨夜ロックオーガの素材を買取りました。」
「お前らが倒したのか!?」
ハヤテが細い目を見開いて尋ねてくるので、答えようとすると
「状況から考えて推察出来ないのですか?」
「あんな雑魚が討伐出来ないSランクがいるのですね。」
メイサとオリーブがすかさず煽る
「なんだと!?」
「うちのメイドは優秀なのでこの子が討伐しましたのよ?」
「私は3体だけで、残りは御主人様が討伐しましたが。」
「嘘だ!リーチェさん!こいつらは嘘の報告を!」
オリーブが淡淡と答え、ハヤテが立ち上がって憤慨し、連れの猫目の女とメイドは青褪めている
「報告書にはそう書いてあり、素材も剥ぎ取って来てますからね。」
「貴様!どんなズルをした?」
「ハヤテさん!あなたの虚偽報告と逃げるために仲間を囮にした罪は重いですよ?」
「くっ・・・貴様!俺と決闘しろ!俺は認めん!」
ハヤテがそう言って手袋を投げてくるのでとりあえず避ける
「当たらなかったので決闘は不成立ですね。」
ベアトリーチェは口を手で押さえて笑いをこらえつつ言う
「くそっ!どこまで人を馬鹿にすれば気が済むんだ!?」
「決闘の条件は?」
「何でもあり、どちらかの死亡で決着だ!」
「えー死ぬまで?嫌っ!」
「受けましょう!」
「お受けします。」
「メイサ!?オリーブ!?」
「今すぐに練習場だ!」
ハヤテはそう言って部屋を出て行き連れ2人が急いで後を着いて行く。
「メイサ?オリーブ?」
「さ?公然と殺せますわね?」
「御主人様にお譲り致します。」
「俺人殺しになりたくないんだけど・・・」
「行きましょう!」
メイサに強引に手を引かれ、オリーブにすごい力で背中を押されて部屋を出る。
「おい・・・なんだ?この人だかり。」
「見物人ですよ?」
「待てリーテ!決闘って決まって数分も経ってないぞ?」
「冒険者のネットワークを舐めては駄目ですよ?」
「金が飛び交ってるな?」
「賭けが始まってますね。」
「オッズは?」
「みんなハヤテ様のようですね?」
「あとで出すから俺に金貨10枚賭けといて?」
「出さなくていいです!奢りで出しておきます!」
「太っ腹だな。」
「昨日の素材代のお返しです。」
「頼んだぞ?」
「はい!」
リーテが人ごみに入って行くのを見送って、メイサとオリーブに背中を押されて人だかりの中へと押込まれていく叡斗。
「えらい時間がかかったじゃないか?あん?」
腕を組むハヤテが不機嫌そうに言う
「ルールを死亡じゃなくて戦闘不能にしないか?」
「はっ!いいぞ?結果はあんたの死亡に変わりはないからな!」
「ならよかった!俺はこっちに来て日が浅いから人殺しはしたくないからな。」
「俺はこっちに来て20年何人決闘で殺したか忘れたな。」
「お前・・・最低だな。」
「生き残ったやつが正義なんだよ!」
「始まりの合図はいつなんだ?」
「もう少しして賭けが終わったら誰かがしてくれるさ!」
「そうか・・・神に・・・女神か?祈っとけよ?」
「お前が祈れっ!」
「俺負けないから祈る必要ねーし」
「言ってろっ!始まるぞ?」
ハヤテが言うと冒険者達が2人を中心に丸く円を描くように広がり、1人の冒険者が始まりの号令を唱えると、ハヤテが『神速』を使ったのだろう視界から消えるので、叡斗は『身体強化』を最大まで発動すると、こちらへ剣を抜いて走って来るハヤテが見えた。
「ったく・・・毎回『神速』って芸のない野郎だ・・・」
叡斗が1人ごちて『神速』をハヤテのレベルに合わせて発動させ、ハヤテの剣を一文字で叩き切る
「おい、獲物が無くなったけどどうするんだ?」
「なっ!どうやって俺の世界に入ってこれた!?」
「どうやったんだろうな?で?剣が無くなったけどどうすんだ?」
「ちっ!剣はほかにあんだよ!」
「剣はあっても、俺にスピードで負けてるのはどうすんだ?」
「筋肉痛になるから使いたくなかったが・・・マックススピードだ!」
ハヤテのスピードが速くなったのでそれに会わせて『神速』のレベルを上げ、斬りかかって来るハヤテの剣を一文字で叩き切る。
「これがマックスなのか?」
「なんなんだよお前!?」
「じゃあね?バイバイ!」
叡斗が『手加減』を発動させて頭を掴み地面に向かって思いっきり投げる。
『神速』スキルを解除すると、突然地面に頭をめり込ましたハヤテが目の前に現れた、応援していた冒険者達が呆気に取られる。
「死んでないよな?」
心配になった叡斗がハヤテの首に手を当て脈を確認していると、ハヤテが痙攣してズボンに染みが広がり、尻の部分が盛り上がる。
「汚っ!リーテ賭けは勝ちだな?」
「はい!オッズは無くて、我々の全取りです!」
俺に賭けた人はいなかったのか・・・大儲けだが寂しいと感じる叡斗
「あなたは・・・本当に色々と申し訳ありませんでした。」
「ベアトリーチェさん頭を上げてください!」
「私達の対応が杜撰だった事を謝罪いたします。」
「わかっててやってたんでしょう?いいんですよ?」
「あなたはたった今、ウラジール最強の冒険者となりました。」
「え?最強?」
「ハヤテさんが最強のSランカーだったのですよ?」
「あんなのが最強?」
「お恥かしながら・・・」
「まぁいいや!もう関わらないだろうし!」
「やはりお怒りですよね・・・」
「これ以上関わったら俺の連れが暴れそうですしね?ほら?」
「あれは・・・大丈夫ですか?」
「多分大丈夫だと思います。」
気を失ったハヤテをメイサとオリーブがニヤニヤと木を立てかけ吊るし上げている。
「では我々はこれにて失礼します!」
「言っても無駄でしょうが首都の本部に伝えておきますので寄って頂ければ幸いです。」
「気が向いたら寄ってみます。」
「無理強いはしませんのでお願いします!」
「はい!メイサ?オリーブ?行くよ?」
「あなた方?こいつ降ろしたら殺しますわよ?」
「降ろしたらこうなりますよ。」
オリーブが地面にエクスプロージョンで爆発を起こして、メイサと一緒に冒険者を脅して叡斗とギルドを出て行く叡斗達。
「さぁ!?魔の森に行こうか!」
「魔の森・・・身体持ちの魔物で溢れてるのでしょうね?」
「すぐに車を準備いたします。」
「地王龍と会いに行くぞ!?」
「はい!」
メイサが答えて、オリーブは車を準備しに走って宿へと向かって行く。




