~58話~アユミンの宴と海底ダンジョン
叡斗が2mの棒を浜に突き刺して固定させる
「さぁ海水を洗い流そうか?」
「そうですわね、ベタベタしますわ・・・これは何かしら?」
メイサが棒を見て聞いてくる
「シャワーだよ!オリーブもおいで、海水を流そう!」
叡斗が棒の中程に着いているコックを捻ると、上部の湾曲した所から水が出てくる
「食器洗いの応用ですのね!」
「これは便利ですね。」
「海に入ると思って作っといたんだ。」
予想通りに役に立ち、嬉しそうにニヤリと笑う叡斗
「サーペント肉楽しみだな!」
「そうですわね?」
「私の分はあるでしょうか?」
「100kgの肉だぞ?食べ放題だ!」
「すぐに行きましょう!」
体を洗い3人は村へと急ぐ。
村の広場に行くとあちことでバーベキューをしていて、広場中に肉の焼ける香ばしい匂いで充満していた。
「エイト様!御早い仕事で感服でございます!」
「村長、歳なんですから走らなくても・・・」
村長が走ってきた、さっき会った時は杖を突いていたのに大丈夫か?
「サーペントの肉まで頂き言葉もございません!」
「俺達が食べたかっただけですから気にしないで下さい!」
「村を上げて歓待させて頂きますのでどうぞお楽しみください!」
「我々の事は気にせず村で楽しんでください!」
「ありがとうございます!では失礼致します!」
「じゃあ2人共?好きに過ごしていいよ?」
「かしこまりました。」
オリーブは小走りに広場の中へ消えて行く。
「ダーリン?怪我人が多いですわね?」
周りには体に包帯を巻き、松葉杖のような木をつく人もいる
「そうだな・・・漁に出て怪我したのかな?」
「あとお酒がございませんわね。」
「メイサは優しいな?」
「私が言い出さなくてもダーリンは動くでしょう?」
「よくわかってるね?樽一個だけだから。」
樽を広場の中央に設置して長老に酒の振分けをお願いして、目に付く怪我人を治して行く叡斗。
「こんなもんかな?メイサはどこかな?」
叡斗が村人にエクストラヒールをかけ終え、いつの間にかいなくなっているメイサを探す。
「御主人様、何も食べてらっしゃらないのでは?」
オリーブがサーペント肉を盛った皿を差し出してくる
「ありがと!柔らかっ!旨っ!」
ワイバーンと違って歯触りは鶏肉のようだが、噛むと上質な豚肉のような肉汁が口の中に広がる。
「奥様はあちらで演説をなさってます。」
「演説だと!?」
村長の家みるとメイサが立っていて、その前に集まっている村人達がメイサに向かって跪き一心に祈りを捧げている。
「お・・・俺は何も見てない!サーペント肉美味いなぁ!」
「おいしいですね。」
叡斗とオリーブがワイン片手にサーペント肉を頬張る。
「御主人様、あちらにはスープがあるようです。」
「よし行ってみよう!」
すれ違う村人が一様に頭を下げるが、サーペント退治と怪我の治癒のお礼だと信じてスルーして歩く叡斗
「奥様の演説の効果は抜群ですね?」
「違うと自分に言い聞かせてるんだ!言うな!」
「さすがは奥様です!」
「サーペントと治癒に対しての頭を下げてるんだ!」
「そろそろ御主人様の神格化を始めてもよろしそうですね。」
「本当にやめて欲しいんだけど・・・」
メイサとオリーブは何処を目指しているのだろう?
「スープも出汁が出ていて美味いなぁ!」
「そうですね、お肉の味が一層引き立ってますね。」
「オリーブ?あっちには骨付きで焼いてるぞ?」
「御主人様行きましょう!」
オリーブが腕に絡まってくる
「どうした?」
「初めてのデートですね?」
上目遣いのオリーブが叡斗に体を預けて言う
「勝負下着だなんだと言わなければいい子なのにな・・・」
「御主人様が受け入れればよろしいだけの話です。」
「受け入れないって言ってるだろ!?ほら骨付き肉だ!」
「ありがとうございます。」
2人で骨付き肉を食べているとメイサが戻ってきて
「ダーリン?オリーブとその様な仲になりましたの?」
「ん?あぁこれか?」
オリーブと手を繋いで骨付き肉を食べていた。
「これは私が無理矢理繋ぎました。」
「まぁよろしいですわ!ダーリン完了しましたわよ?」
「何をだ?」
「神ヨハンの信仰の流布ですわ。」
「本当にそれだけか?」
周りを見ると叡斗に向かって村人が跪いて手を合わせている。
「ついでに少しだけダーリンの凄さも伝えましたわ!少しだけ。」
「ヨハンの教えを広めるだけでいいよ!」
「本当にダーリンは奥ゆかしい方ですわね!」
「お前らは俺をどうしたいんだ・・・」
「ヨハンに次ぐ神の一柱に・・・」
「御主人様の宗教の立ち上げを・・・」
「えーあー・・・ヨハンの教えを広めてから考えような?」
思考が停止してしまい問題を先延ばしにする事にした叡斗
「カオリさん!カリンさん!楽しんでますか?」
丁度2人を発見したので話を変えるために話しかける叡斗
「ええ!おかげ様でおいしいお肉をありがとうございます。」
「あの!頂いてます!」
「それはよかった!ワインも置いてますんでよければ!」
「まぁ!是非ご相伴に預かります!」
「母様行きましょう!」
カリンに手を引かれ広場の中心へと歩いて行く。
しばらく食べ歩きをして
「オリーブ腹はいっぱいになったか?」
「はい、満腹でございます。」
オリーブはひたすら食べ続け、目算だが5kgは食べてたと思う。
「じゃあ浜にでもテント張って休もうか?」
「そうですわね。」
「ではこちらですね。」
オリーブの先導で浜に付きテントを張って一息付き、海を眺めながら風呂に浸かる。
「なぁ?明日はどうしよっか?」
叡斗が大の字で風呂に浸かりいつもの位置に座るメイサに聞く
「とりあえずはサーペント退治ですわね・・・」
「でも俺達捌けないし、捌いたのを空納に入れるのは無理があるよね?」
「丸ごと空間収納に入れてどこかの街で捌いてもらえばよろしいのでは?」
「なるほど!」
「ですが海を歩くにも魔素を消費し続けるのは私とオリーブには厳しいですわね・・・」
「船で行くか。」
「船ですと漕ぎ手も要りますし何より沈められたら結局魔素不足に陥りますわよ?」
「行くのは3人だけだ!手は考えてるよ?」
「ならば問題なしですわね!」
「サーペント退治が終わったら海底ダンジョンだな?」
「海底ダンジョン用に魔素は節約したいですわね。」
「だな。」
波の音を聞きながら浸かる風呂を満喫してから、メイサに魔素を吸われて一日が終わる。
「ダーリン?そろそろ起きてくださる?」
「ん?おはようメイサ、どうしたの?」
珍しくメイサに揺さぶられて目を覚ます
「ちょっと困った事になってますの。」
「困った事?」
「テントを出れば分かりますわ?」
メイサに言われテントを出ると、サーペントに囲まれ、テントの結界にのしかかったり噛付いたりして攻撃していた。
「なんじゃこりゃ!」
「数分前から集まりだしました。」
「オリーブいけるか?」
「問題ございません。」
赤のスケスケのブラにTバックのオリーブが斧を構えて答える
「その格好はなんだ?」
「勝負下着でございます。」
「その格好で戦うのか?」
「御主人様に見てもらおうと着替えてまいりました。」
「緊急事態でその格好で寝てたから出てきたとかじゃねぇのかよ!」
「私はそんな痴女ではございません。」
「どっちが痴女なんだ!?」
巨大な戦斧を肩に担いだエロエロな下着姿のブロンドの美女を見て、混乱する叡斗
「・・・まぁいい!『簡易鑑定』で俺がひきつけるから任せたぞ!」
「かしこまりました。」
叡斗が一文字を構えて『簡易鑑定』をしつつテントの結界から出てると、サーペント達が一斉にのししかかって来るので、海に逃げられないように村の方向へと下がりながら避け、横からオリーブが淡淡と叡斗しか見えてないサーペントの首を切り落として行く。
「終わったか?」
「21体でございました。」
「とりあえず空納しとくか。」
「お待ちください。」
「どうした?」
オリーブが手際よく討伐部位を切り取り胸に切込みを入れ腕を突っ込み魔玉を回収して行く。
「こちらはもういいです。」
「俺も手伝うよ!」
「御主人様はどんと構えていればいいのです。」
「はい・・・」
オリーブに一喝され、萎縮した叡斗がサーペントの死体を全て空間収納にしまっていく。
「お疲れ様でした!では朝食に致しましょう!」
「昨日のサーペント肉のガラ食べてみようよ!」
「では出してくださるかしら?」
「やった!」
メイサに肉が付いた骨を渡して、叡斗は骨を割って鍋で煮る。
「ダーリンは何してますの?」
骨から肉を削ぎながらメイサが不思議そうに尋ねる
「朝食には間に合わないだろうけどサーペントのダシをとってみてる。」
叡斗がそう言って、玉ねぎや匂い消し用の香草を鍋に入れて行く。
「そんなおダシのとり方初めて見ましたわね。」
「成功したら昼か晩に料理に使ってね?」
「勿論ですわ?」
鍋をコトコトと煮込ませながら、朝食を食べて海へ出発する。
「よし行くぞ!」
叡斗が空間収納から船底が銀色の金属で出来た小型艇を取り出し海に浮かべる。
「これはすごいですわね?」
「御主人様オールも帆もありませんが?」
「コツコツ作っていたのだ!船底はチタン製で後ろに取り付けたジェットで動くぞ?」
「ジェットですか?」
「風を送り出す魔導具でな!」
本当はジェットスキーを作ろうと思っていたがオリーブもいるので小型艇にした。
全長5mで1部屋だがキャビンも付けた自信作だ。
「さ!行くぞ!」
「金属が海に浮かぶ・・・沈みませんの?」
「御主人様はなんでも出来るのですね。」
2人が恐る恐る乗り込み船を動かす
「御主人様この操縦は難しいのですか?」
「簡単だぞ?運転してみるか?」
「やってみたいです。」
「曲がりたい方向にハンドルを曲げて、足元のペダルは右が前進で、左が後退兼ブレーキだから間違うなよ?」
「・・・え?それだけですか?」
「それだけだ!あと結界は張ってあるが浅瀬に乗り上げないように気をつけろよ?」
「かしこまりました。」
オリーブに運転を任せて『魔力感知』に専念する叡斗
「ダーリン?なぜ金属が海に浮きますの?」
「なんだっけかな・・・浮力がどうのこうのって難しい理論なんだが船の形なら浮く!」
「ではそれでいいですわ・・・それにしてもサーペントがいませんわね?」
「いないな・・・朝総出で敵討ちに来てたのかな?」
「かもしれないですわね。」
「同じダンジョンから出てきたから群れだったのかな?」
「まずダンジョンから出れないので分かりかねますわね。」
「海底ダンジョンも探さないとな・・・」
「海底ダンジョンならとっくの昔にを通り過ぎましたわよ?」
「え?」
「ダンジョンの入口は魔素の流れが違いますの。」
「じゃあもう少し探して何もなかったら行こうか?」
「そうですわね。」
しばらくしてメイサがオリーブに指示を出す
「オリーブ!あそこに行って・・・もう少し・・・ここです!」
「ここか?」
「はい真下、そうですね10mといった所でしょうか?」
「じゃあ錨下ろすぞ?」
「お願いしますわ!」
叡斗が錨を落として、3人は水着に着替えて海に飛び込む。
「おそらくあそこですわ!」
海底に直径5mの横穴が開いていた
「行くぞ!」
3人は武器を構えてダンジョンに入って行く。
横穴に入り登り坂になっている通路を進んで行くと、水面が見え奥へと洞窟が続いている。
「暗いな。」
叡斗がランプ型の魔導具で照らしながら進む。
「魔物が居ませんわね・・・」
「魔族がいないダンジョンか?」
「魔素の流れを見る限りは生きてるダンジョンですわよ?」
「サーペントといい不思議な現象が多いダンジョンだな。」
「話のできる魔族ならよろしいのですけれど・・・」
30分進むと門に辿り着く
「何も無かったな・・・」
「魔物いませんでしたわね。」
「とりあえず先に進んでみるか?」
「そうですわね。」
門を開けると「水竜の地底湖」の最下層と同じ部屋に出た。
「綺麗ですわね・・・」
「何もいませんね。」
「マスタールームは・・・あそこか。」
「そうですわね。」
叡斗とメイサが壁の一部を叩いて
「おーい!敵じゃないから開けてくれ!」
「水竜さんですか?お話をして頂けますか?」
オリーブが首を傾げて不思議そうな顔をして2人を見ていると壁が開き号泣する青年が出てくる。
「いじめないで欲しいっぺよぉ!」
泣きながら土下座をする青髪の青年。
「おい?苛めないから!」
「そうですわ!落ち着きなさい?」
「メイサ?魔族だし任せてもいい?」
「お任せなさい!」
叡斗が頭を搔きながら言い、メイサが胸を張って答える
「オリーブ?お茶の準備を!」
「かしこまりました。」
オリーブがテキパキとマジックバッグから机などを取り出しテーブルメイキングを済ませる。
「落ち着きましたか?」
「はい。」
「私達はメドゥーサのメイサと勇者のエイトと獣人のオリーブです。」
「勇者だっぺか!?おらを退治しに?」
「違いますわ!なぜサーペントをダンジョン外に?」
「1年前に婆ちゃんが死んでおらがダンジョンを受け継いだだよ。」
「それは・・・御愁傷様です。」
「だどもおら、海中の魔素を集めるのが下手糞で婆ちゃんのサーペント達に魔素を供給できなくて苛められてただよ・・・」
「それでダンジョンの結界を無くして外に出したと?」
「サーペントが暴れて、偶然おらの手が当たって解除しちまったべ・・・」
「なら敵意があったわけではないのですね?」
「そうだべ!おらは楽しく生きたいだけだべ!」
「ですがあなたの様子を見る限り自分の存在も維持しきれないのでは?」
「海中の魔素を集めるのが下手糞だもんで・・・」
青髪の16歳くらいのイケメンが顔を俯かせる。
「メイサ?どういう意味だ?」
「どうもこうもダーリンがこなければ魔素切れであと1年程でこの子は消えてたんじゃないですか?」
「じゃあサーペント問題は解決したが、この魔族は遅かれ早かれ死ぬと?」
「そうですわね。人がこれるような立地ではございませんし。」
「人がいれば問題無く魔素をもらえるっぺ!」
「人が来ればいいんだな?」
「あぁ!問題ないっぺよ!」
「お前はヒトと戦いたくないんだな?」
「喧嘩なんかした事ねぇだよ!平和に暮らしたいっぺ!」
青髪の魔族が真剣な表情で言う
「ならダンジョンをどこまで弄れるか教えてくれないか?あと召喚できる魔物を全て教えなさい!」
「ダーリン案がありますの?」
「出来るかはこれから聞いてからだが水族館作るぞ!」
「水族館ですか?」
「魚の代わりに安全に海の魔物を見れるテーマパークだ!」
「娯楽施設ですの?」
「そうだ!まずはダンジョンの入口と浜を結ぶ方法を考えないとな。」
「勇者様の魔素があればどうにか出来るだよ!」
「成程・・・じゃあダンジョンの改造するぞ!」
「人が来るんなら、勇者様に全部任せるだよ!」
「さすがダーリン、ダンジョンをそんな風に作るなんて考えたことも無かったですわ・・・」
メイサが呟く。




