~57話~サーペント退治
目を覚ますといつも通り隣に寝て微笑むメイサと目が合う
「おはようメイサ。」
「おはようございますダーリン。」
「ゴブリンは大丈夫だった?」
「何もなく静かな夜でしたわ?」
「そっか!なら安心だね?」
「では出発しましょうか?オリーブが車の準備をしてくれているはずですわ。」
「オリーブも暴走しなければ最高のメイドなのにな・・・」
2人で着替えてテントに出るとジャンとオリーブが出迎えてくれる
「エイト様!邪魔にならないようにしますので宜しくお願いします!」
「気張らずに行きましょうね?」
「紹介が大分遅れましたが家内のカオリと娘のカリンです!」
「「遅れましたが、ありがとうございました。」」
ジャンの後ろにいた女性と少女がお辞儀をしてお礼を言う
「当然の事をしただけなんで、本当に気にしないで下さいね?」
「ずっと宿で炊事や怪我人の看病をしておりまして・・・」
「お気になさらず!それよりも護衛が増えました?」
ジャックとアンナはいいが、なぜかドーラ達治療した冒険者の4人もいる
「是非にと言われまして・・・」
「はぁ・・・ジャンさんが雇ったんなら俺が口を出すことではないですね。」
叡斗が頭を押さえて言うと、ドーラ達がガッツポーズをする
「御主人様準備が整いました。」
「おう!じゃあ出発しようか!ラプターの外套はどうだ?」
「最初は少し嫌がりましたが、着せたら大人しくなったので気に入ったようです。」
「それはよかった!頼むぞお前達?」
叡斗がラプターを撫でると気持ち良さそうに目を細めるラプター2頭
「ユーリンにも伝えていますのでこのまま出発できますがよろしいですか?」
「オリーブすまんな!じゃあ出してくれ!」
叡斗とメイサが車に乗り込み、ジャンの馬車はドーラとアンナが御者台に座り4人の護衛を引き連れてラプター車の後ろを付いて村から離れて行く。
車の中で汗びっしょりの叡斗が『魔力操作』の特訓をしている
「メイサどうだ?」
「大分ましになりましたね?」
「顔が本当に難しいな・・・」
「ほら!顔を気にしすぎてどんどん足と衣装の端が太くなってますわよ?」
「顔が細かすぎるよ!」
「その繊細な操作をしてくださらないと折角の『魔力操作』≪極≫が宝の持ち腐れですわ。」
メタスラの皮膜の特訓の終わりが見えない・・・
昼食になり、3人はいつも通りに料理をして食べるが、ジャン達は干し肉とパンを食べていた。
「はぁ・・・ダーリンのしたいようにすればよろしいですわよ?」
メイサが溜息を吐いて言う
「いいのか?」
「これこそオリーブ2人前作るだけでしょうに!」
「さすがにこの光景は忍びなくてな・・・」
「そう言うと思って作っております!」
「メイサ愛してるよ?」
ツンデレのメイサはやっぱり優しかった。
「ジャンさん!皆さんもよろしければどうぞ?」
「よ、よろしいのですか!?」
「メイサとオリーブが用意してくれてたのでどうぞ!」
「ありがとうございます!」
ジャン達が干し肉とパンと投げ捨ててメイサとオリーブの料理を食べる。
「この野菜スープなんて味が濃いんだ!」
「パンもふかふかだよ!?」
「新鮮なオレンジジュースが飲めるとは・・・」
みんなが口々に驚いている。
この状況に慣れてしまった叡斗とメイサはオリーブの淹れてくれた紅茶で椅子に座ってティータイムを楽しむ。
「すまんな、助けるつもりなのに施しを受けてしまって。」
御飯を食べ終わったドーラが言う
「だから俺に直接返さなくてもいいつってんだろ?」
「そうですわ?ドーラ達が誰かを助ければ巡り巡って私達に帰ってきますのよ?」
「それじゃ俺達の気持ちが収まらない!」
ドーラの後ろに控えていた冒険者が口を開く
「そういえばドーラ以外の人間の名前を聞いてなかったな。」
「では改めてフレイムガーディアンズリーダーBランクドーラです!」
「斥候のピートです!」
「魔法使いのダイアンです!」
「ウォーリアのダニエル!ダニーと呼んで下さい!」
小柄な好青年のピート、ローブを来た真面目眼鏡のダイアン、カイジンと同じくらい恰幅がいいダニーが順番に自己紹介をする。
「ドーラの髪の色にぴったりのチーム名だな、よろしくな!」
「だから何か恩返しを!」
「しつこいぞっ!」
「ですが!」
「あなた達?我々に構わずにジャンさんの護衛に専念なさい!」
食い下がるドーラ達をメイサが一蹴する。
「何かあいつらの仕事を割り振れないかな・・・」
すごすごとジャンも馬車へと戻る冒険者を見ながら叡斗が呟く
「ダーリンは本当に優しいですわね?」
「そこが御主人様のいい所ですね。」
「村に着けば何かあるかな?」
「そんな事よりもサーペントは美味と伺いましたわよ?」
「ワイバーンよりもですか?」
「さぁ?ダーリンと旅をするまでは食事なんてしなかったので。」
「楽しみです・・・出発しましょう。」
オリーブが居ても立ってもいられないという様子で御者台に飛び乗る
「仕方が無い子ですわね・・・ジャンさん出発しますわよ!」
「かしこまりましたメイサ様!」
突然の出発に慌てて出発の準備をするジャン一行をほっといて、サーペント肉に取り付かれたオリーブがさっさと車を出す。
その後も平和に旅が続き次の日、昼過ぎに風に乗って潮の香りを感じ始める。
「海の匂いだ!いい匂いだね?」
「これが海の匂いなのですね?」
「メイサ海は初めてなのか?」
「書物では知っているのですが、見るのは初めてですわね。」
「海はでかいぞ?」
「楽しみですわね!」
「御主人様、村が見えました。」
「どこ?どこ?まだ海も見えてないよ?」
叡斗が御者台に顔を出して見るが、何も見えない。
「まだ遠いです。あと1時間という所でしょうか。」
「わかった!オリーブ大変だろうが頼んだぞ?」
「外套のおかげで全く疲れていません。」
「メイサの助言で作って正解だったな?」
「そうですね。」
しばらくすると、塀に囲まれた数十軒の家が集まる漁村が見えた。
村に着きオリーブが門番と話しをするとすぐに門番の案内で村長の家に招かれ
家の前にラプターを置いたまま、中へと促される。
「村長!サーペント退治に来てくださったSランク様です!」
「おぉ!来て下さった!私はアユミンの村長でございます!」
「どうも!【無双】エイトです!」
「【舞姫】メイサですわ状況を教えていただけますか?」
「半年前からサーペントが現れ始めまして、今では群れを作って、漁に出るとまず襲われますじゃ!」
頭のつるつるな白髭を生やした長老が頭を抱える
「村を捨てる相談もしておる最中ですのじゃ・・・」
「何頭ものサーペントが身体を手に入れるくらいに乱獲したんじゃ漁に出られても漁獲量は激減か・・・」
「村全体が疲弊しきっております。」
村長は疲れきった顔で言う
「そのサーペントはどこから?」
「すこし離れた所にある水竜様の海底ダンジョンからかと・・・」
「最近出来たんですか?」
「大昔からこの村では水竜様を崇めて漁の成功を祈願してましたので・・・」
「それなのに、半年前から突然ですか?」
「そうです。」
「じゃあまだ昼過ぎだし早速海に行ってみようか?」
「そうですわね。」
「よろしくお願い致します!」
「狩れなかったら申し訳ないですが、サーペントを捌ける人をお願いしても?」
「かしこまりました!」
長老が土下座で答える。
浜に着き『魔力感知』を発動させると8体反応がある
「とりあえず『鑑定』してみるか?」
「ダーリンは誘き寄せたらオリーブに任せてもらっても?」
「レベリングか?」
「御主人様お手数をおかけします。」
「気にすんな!斧のお披露目だな!」
「はい!」
オリーブが斧をマジックバッグから取り出して構えると、斧の大きさを見てドーラ達が驚いているが無視して、叡斗は『簡易鑑定』を行う。
「来たな!」
オリーブが身構える
「浜に上がって来ませんわね・・・」
8頭のサーペントが30mくらい沖で首から上だけを水面に出して叡斗にむかって威嚇をしている。
「っち!身体を手に入れて知恵も手に入れたか?」
「そのようですわね。」
「どうされるんですか?」
捌き要因の村人が聞いてくる
「策はある!」
叡斗が魔鉄で作ったワイヤーを取り出す。
「釣るぞ!」
肉を空納から取り出した叡斗が魔鉄製のワイヤーの先に取り付けてある返しの付いたフックの如く巨大な針に肉を刺して、沖へと投げる
「肩つえぇー・・・違っ!旦那食いついたらどうすんだよ!?」
「ん?釣りだから食いついてくれないとダメだろ?」
「んな無茶な!海に引きずりこまれて死んじまうよ!」
「あなた?黙って見てなさい?捌くのが仕事でしょう!?」
メイサが村人に言うと、ワイヤーに力を感じる
「来た来た!来たぞぉ!」
「旦那離せ!海に引っ張り込まれたら終わりだ!」
「よし!よぉしっ!」
叡斗がにやけながらワイヤーを引っ張る
「嘘だろ・・・」
肩を掴んで止めていた村人が呆然と立ち尽くす
「あなたは危ないので離れてなさい?」
「は・・・はい。」
村人が離れた事を確認して
「オリーブ行くぞ?」
「お任せください。」
叡斗がワイヤーを引っ張り後ろに振りかぶると、水中から首長竜が現れて浜に叩きつけられる。
「オリーブ!気をつけろよ?」
「お任せください御主人様。」
オリーブが的確にサーペントの首を3分の1ほど斧で斬り血が噴き出し、サーペントが暴れまわるので、メイサが『風魔法』でサーペントを押さえ付ける。
「なんで首を切り落とさなかったんだ?」
「血抜きをした方が美味しいかと愚考しました。」
「なるほど・・・みんな仕事だぞ!」
「へい!お前ら!すぐに捌くぞ!」
村から総出で村人が出てきてみんなで一斉にサーペントを捌きだす。
ドーラ達は頬をつねって捌かれるサーペントを見つめている。
「来た!準備だ!」
「かしこまりました。」
叡斗が先程と同じようにサーペントを浜に叩きつけ、オリーブが血抜きをして、村人が総出で捌く。
「さすがに3回目になると学習するんだな・・・」
「来ませんわね。」
入れ食い状態だったのに一切の当たりがなくなった。
「なら次の手だな・・・」
「さすがダーリン!あるのですね?」
「考えてあるのだよ!」
そう言って叡斗がワイヤーの付いたフックを返しのついた銛に魔力成型する。
「せいっ!」
銛を力いっぱいにサーペントの反応に向けて投げると、すぐにワイヤーが右に左にと動き始めた
「うしっ!成功だ!オリーブ次行くぞ!」
「お任せください。」
叡斗がワイヤーを引っ張り、ある程度引っ張った所で、後ろに向かってワイヤーを一本背負いすると、背中に銛が刺さった首長竜が宙を舞い浜に打ち付けられ、すかさずオリーブが暴れのた打ち回るサーペントの首を切り落とす。
「皆さん?早く捌いてくれますか?」
オリーブが背中の銛を抜きながら、立ち尽くす村人に言う
「お・・・おぉ・・・おう。」
村人達によってサーペントが捌かれていく。
「捌けたか!?次行くぞ!」
叡斗がすさまじい速度で銛を投げるとすぐにワイヤーが左右に動きだし、同じようにサーペントを引っ張り上げオリーブが仕留め、村人が捌く。
「捌いたな!?次!・・・あれ?いなくなってる。」
サーペントが感知範囲外にまで逃げてしまっていた。
「ダーリン・・・埒があきませんわ!属性付与した水着を着て水の中へ行きましょう!」
「大丈夫か?」
「大丈夫です!」
「なら信じる!」
叡斗とメイサとオリーブが風と水属性を付与した水着に着替えて海へと入って行く
「自殺行為だ!」
「大丈夫だから!浜で準備して待ってろ!」
足にしがみ付いて止めてくる村人を引き剥がして海へ入って行く
「おぉ?息が出来る!」
「不死王様の書物どおりの効果ですわね。」
「普段どおりに動けます。」
海に入ると息が出来る上に浮くことなく海底に地上と変わらない感覚で立てている。
「オリーブ?ダーリンがサーペントの攻撃を防ぎますのであなたは横から倒しなさい?」
「かしこまりました。」
「結界大丈夫だろうけど心臓に悪いから早くやっちゃって!」
感動する暇も無く先ほどの4匹のサーペントが叡斗の結界に噛み付いて、叡斗が必死に結界に魔素を注入している。
オリーブが結界に阻まれひるむサーペントを淡淡と仕留めメイサが浜へ投げて行く。
「やっと終わった・・・」
「オリーブ?いい動きでしたわよ?」
「ありがとうございます奥様。」
3人で浜に向かって歩いて行く。
「とりあえず今日は終わりだ!」
突然4体のサーペントが打ち上げられてんてこ舞いの村人に言うが聞こえないみたいだ。
「ジャン?サーペントの肉は高いのか?」
唖然としているジャンに聞く叡斗
「は?はい!キロ銀貨50枚で売れるでしょうね!」
「サーペント一頭で何キロの肉が取れるんだ?」
3mを越える首長竜だ!期待できそうだ!
「100キロは取れるのでは・・・」
「一頭金貨50枚か!取り分は半分でいい!売ってきてくれないか?」
「よ!喜んで!」
ジャンが頭を下げて唖然としている冒険者に渇を入れて捌かれたサーペントの肉を馬車に積んで行く。
「急げ!鮮度が命だぞ!」
ジャンが急がせる声が響く
「ジャン?一頭分は村で食べるから置いといてね!」
「かしこまりました!夜のうちにレベッカへ運んで朝一で売り切ってみせます!カオリ!カリン!乗れないからお前達は村で待っていなさい!」
「「はい!」」
7頭分のサーペント肉を馬車に積んでジャンがすぐに6人の護衛と共に出発して行く。
「よーし!最後の一頭を捌いたら村で食べるぞぉ!」
村人が歓声を上げてサーペント肉を担いで村に戻って行く。
「ダーリンサーペントの骨は使い道ないかしら?」
メイサが捌き終わって、放置されているガラを見て言う
「サーペントの骨か・・・」
「御主人様、魔玉も残っています。」
「骨付き肉は上手いと相場で決まってる!空納しておくか?」
「そうですわね。」
「御主人様、魔玉と討伐部位のヒレ回収完了しました。」
「ありがとう!海で体を洗っておいで?」
「かしこまりました。」
全身が血だらけのオリーブが海へと歩いて行く。
「内臓を選り分けて骨付きだけ空納しようか?」
「ですわね、内臓は海に捨てれば魚達が食べるでしょう。」
叡斗とメイサがサーペントの内臓を海に捨てながら骨付き肉を空間収納にしまう。
「旦那ぁ!宴の準備が出来ましたぁ!」
村人が走ってくる。
「なんだこりゃ!サーペントの残骸が無いぞっ!」
「片付けといたぞ?」
「Sランカーはみんなこんなすごいんですか?」
「さぁ?」
「まぁいいや!助かりました!行きましょう!」
「体を洗ってから行くよ!」
「わかりました!」
村人が村へと帰って行く。




