~52話~隠れ魔族とオリーブの気持ち
「お久ぁ~」
叡斗が魔王城へ転移して、京平に手を振る
「叡斗さん!?どうしたの?」
「京平お久ぁ~」
「お、お久~?」
「どう?俺の働きは?」
「よくしてくれてると思うよ?明日働いてもらうつもりだったし。」
「え?何々?何すんの?」
「今日の昼に勇者がダンジョンに入ったから、今日メイサが来たら明日来て貰おうと思ってたんだ。」
「ほほぅ・・・丁度いいタイミングだったね?」
「多分昼くらいに最下層にくるだろうから明日の午前中に来てね?何か用事があったんじゃないの?」
「俺から獲得できる魔素でおいしい酒造ってくれない?」
「酒なんて造れないよ・・・」
「うわっ!この魔王使えねぇ!」
「魔王にそんな口聞ける人は叡斗さんだけだよ?」
「じゃあさぁ?超便利な斧作れない?聖王の槍並みに便利なヤツ!」
「聖王の槍レベルの武器ってかなりの魔素使うんだけどね・・・」
「俺がいるくらいじゃ賄えないレベル?」
叡斗が放出する魔素量を増やすと京平が驚く
「出発時なら一瞬で気絶するレベルの放出を平然と・・・」
「メイサの助けを受けて成長してるからな?」
「その様だね・・・ほい!」
ポンッと音がして巨大な両刃の斧が出現する
<魔王の斧>
装備すると魔力を強制的に吸い続ける斧
「今の叡斗さんから獲得した魔素で作ったよ?」
「ほほぅ・・・これオリーブは使えないな・・・」
「あれ?叡斗さん用の武器じゃないの?」
「俺達のメイド用の武器が欲しかった・・・」
「まぁ叡斗さんが使う分には恐ろしい破壊力だと思うから使ってよ?」
「じゃああともう1つ!ゲント国のヴォルドーに飛びたいんだが誰かいないか?」
「またピンポイントで行きたいんだね?」
「メイサの好きなワインが切れたから買出ししておきたい。」
「見事に尻に敷かれてるね・・・」
「敷かれるくらいが丁度いい!」
「まぁメイサの愛を受け止められるのは叡斗さんくらいだろうし、何も言わないよ。」
「で?誰か行った事ある魔族はいないかな?」
「ヴァンパイアが行った事あるんじゃないかな?」
「京平様つれて参りました。」
いつの間にかいなくなっていたセバスチャンがヴァンパイアと連れて玉座の間に入ってくる
「セバスチャン仕事早すぎない?」
「ホッホッホッエイト様、執事として当然の仕事で御座います。」
「セバスチャンいつもありがとうね?」
「京平様勿体無いお言葉です。では私は雑務をこなして参ります。」
セバスチャンが礼をして部屋を出て行く。
「ヴァンパイア久しぶり!転移の手伝いをしてもらっていい?」
「久しぶりですね。エイト君また強くなったかい?」
中世ヨーロッパ風の貴族服に身を包んだヴァンパイアが貴族式の礼で答える
「ヴォルドーに飛びたいんだけど?」
「なぜ?」
「おいしいワインを買いたくてね、前にメイサが気に入ったワインがヴォルドー産だったんだ。」
「それならば私も欲しいですな・・・ではヴォルドーではなくバッカスに行きましょう。」
「バッカス?」
「アメリアにある国なのですが、酒の国と言われている所なのですよ。まだあればですが・・・」
「まだ?あぁ、ヴァンパイアが旅してたのは100年以上前だったか。」
「魔王様少しばかり観光したいのですが魔素をよろしいですか?」
「いいよ!叡斗さんのお守りお願いね?」
「承りました!」
「お守りってなんだよ!ヴァンパイア行こうか?」
「はい!もうバッカスをイメージしておりますので転移していただいて結構ですよ。」
平原の高台に転移した。
遠くに夕暮れに浮かぶ強固な壁に囲まれた巨大な城塞都市が見える。
「あれがバッカス?」
「変わってなければ酒の国バッカスですな!」
「あれ?町から転移した時は夜だったのに」
「時差ですよ?」
「あぁそっか!俺は酒わかんないから任せてもいい?ヴァンパイアの分も買うからさ?」
「おぉ!なんと嬉しい!予算は如何程?」
「金貨・・・100枚かな?最低でワインを樽で2個は欲しいかな?」
「メドゥーサが驚く品を探して見せましょう!」
「一応フードをして顔を覚えられないようにしような?」
「勿論でしょう?私はその様な愚直な行動をすると?」
「いや魔族って少し抜けてるから・・・」
「メドゥーサと同じにしてくれないでくれたまえ!」
「すまなかった!行こう!」
ヴァンパイアとバッカスへ向かい、身分証を紛失した事にして通行料が2人で銀貨20枚もかかったが無事入ることが出来た。
「すげぇ・・・」
門を抜けると広場になっており、大通りには樽を模した建物が立ち並んでいる
「すべてお酒を取り扱っている店ですよ?」
「酒選びは任せたぞ?」
「馴染みの店がまだあればいいのですが・・・」
そう言ってヴァンパイアが裏路地へと入って行く
「おい!馴染みって100年以上昔の馴染みだろ?もういないに決まってるだろ!」
「エイト君は魔族の事をまだわかってないようだね?ありましたよ。」
ヴァンパイアが裏路地に並ぶ、看板も何も付いてない扉を叩く
「ジル?私ですヴラドです!」
「ヴラドって言うんだ?」
「大昔の名です。」
「ヴラドだと?嘘吐きが!友人の名をかたるのはどこのどいつだい!」
扉が乱暴に開かれ、ブロンドの髪を結い上げた細身の女性が怒鳴って出てくる
「久しぶりだね?入っても?」
「本当にヴラドなの!?入って!連れの方もどうぞ?」
ヴラドがフードを取ると、女性は驚いたような嬉しいような複雑な表情で中へ招き入れてくれる。
家に入ってすぐにあった机に促され、紅茶を準備してくれた金髪の女性と話をする
「で?ヴラド130年ぶりくらいかしら?どうやって?」
「こちらの勇者様のおかげでこれたのですよ。」
「勇者だって!?」
「大丈夫!味方です。」
「まぁ会えたのだからいいわ?用があるんでしょう?」
「ここに来たのですから用事といえば1つでしょう?」
「本当にこの勇者は大丈夫なのね?」
「大丈夫ですよ?でなければここに連れてきませんよ。」
「わかったわヴラドを信じるわ・・・ジルです」
「始めましてエイトです。えっと・・・この女性は・・・何を聞いたらいいのやら・・・」
「この女性もヴァンパイアで酒が好きすぎてここにダンジョンを作った変わり者ですよ。」
「え・・・大丈夫なの?」
「この家は持ち家だし表向きは『変化』スキルを使ってヒトに変装して生活してるから、バレてはいないわ?」
「リスク大きすぎない?」
「だから先ほど魔族の事がわかってないと言ったのだよ?」
「世界中のお酒が集まる国よ?そのためなら死んでも悔いはないし、手間も惜しまないわ!」
ヴラドがやれやれといった様子で言い、ジルが胸を張って答える。
「で?予算と要望は?」
「金貨100枚、最低量でワインを樽3個分。」
「豪快な買物ね・・・ちょっと待ってて!」
ジルが部屋を出て行く
「ヴラド?注文はあれだけでいいの?」
「ジルの舌は確かなので、今まで任せて後悔した事はありません。」
「なら信用するよ!」
「ジルもエイト君も信用してくれてありがたい限りだね。」
ヴラドとジルの用意した紅茶を飲みながら待っていると
「準備できたよ?こっちにおいでよ!」
ジルの案内で奥の扉を抜けると
「なんだこれ・・・」
奥の部屋は幅10mの通路のような部屋で、両脇に酒樽が等間隔にずっと並んでいて、明るいのに部屋の端が確認できないほど奥まで続いている
「ここはジルのダンジョンですからね。」
「これが見繕った品々だけどどうかな?」
目の前の光景にばかり気を取られていたが、入口の隣の空間に所狭しと酒樽や瓶が並べられていた。
「ほほぅこの量・・・金貨100枚で足りるのかね?」
「無名のおいしいやつを選んだからね!」
「エイト君?これでいいかね?」
「俺は文句はないですよ!はい代金です!」
「確かに!これは持って帰れるのかい?」
「問題ないです!」
叡斗が金貨100枚を数えてジルに渡して、酒を一瞬で空間収納する。
「さすがは勇者だね・・・」
ジルが呆れた顔をして納得したように言う
「ジルさん?次からは直接ここ転移してもいいですか?」
「転移だって?ヴラドも連れてなら歓迎だよ!」
「じゃあまた酒が欲しい時はヴラドとお邪魔しますね!」
「ジル?元気でよかったですよ、また来ますからね?」
「ヴラドが生きてるってわかって嬉しかったよ待ってるからね?」
「エイト君そろそろ戻りましょうか」
「そうだね!ジルさんありがとうございました!」
叡斗とヴラドは魔王城へと転移する
「さてっと!ヴラドはどの酒が欲しい?」
玉座の間に酒を出して叡斗とヴラドと京平が話し合う
「こりゃまたたくさん買ったね・・・樽5個に・・・瓶は何百本あるんだよ。」
「金貨100枚、1000万円分の酒だよ?」
「叡斗さん金銭感覚ずれてない?」
「最近自分でも思う・・・」
「まぁいっか!僕はヴァンパイアが選んだのを少し貰えればいいや!」
「では私はこれとこれと・・・これを頂ければ。」
ヴラドがワインを10本選ぶ
「それだけでいいのか?100本くらい持っていっていいよ?」
「ハハハ!保管が出来ませんのでな?ではまた魔王城に来た折に頂けませんか?」
「時間経過の無い空間収納って反則だよね・・・」
「羨ましいだろう?ヘッヘッヘッ!じゃあ2人共ありがとうね?」
「叡斗さん?明日の午前中にきてよ?」
「わかってるよ!じゃあまた明日!」
「がんばってね!」
京平とヴラドに見送られながら、町の外に戻るとメイサが文字通り『風魔法』で飛んできて、そのまま叡斗の腹に頭から着地する
「んごべぁ!」
数メートル地面に跡を残しながらメイサを受け止める叡斗
「ダーリン!どこへ行ってまひらの!?」
「・・・・・・」
「感知にも反応がありませんし寂しかったれふのよ!?」
「メ゛・・・メ゛ィ・・・ゴホッ!ゴホッ!ゴブッ」
メイサが馬乗りになって吐血する叡斗を揺さぶる
「ダーリン?血を吐いてどうなさったのれふか?」
「エ゛・・・エ゛ク゛………ぃー…」
「ダーリン?」
「いなくなったのは悪かったけど加減を覚えようか?」
口元の血を拭い、さっきの詠唱で発動してよかったと思いつつメイサを怒る。
「まさか旅に出て初めて死を感じたのがフレンドリーファイアとは思わなかったよ?」
「私に怪我が無い様に自分の体をクッションにして受け止めて下さったのれふね・・・」
「いや、防御する暇がなかった。」
「れわダーリン!行きまひょう!」
「どこに?」
「お酒が待っれましゅわ。」
「メイサ!明日は昼過ぎまで魔王城に行くからな?」
「なんれれすか?」
「勇者が攻めて来たから迎撃だ。」
「かひこまりまひた!ではお酒が待っれまふわ!」
メイサに引き摺られるようにして町の宴に参加させられる叡斗
「エイト様!どこへ行かれてたのですか!?」
「ごめんユーリン、酒の買出しに行ってた。」
「そんな!あんなに高級なワインを振舞った上に買出しなんて・・・」
「酒は足りたのか?」
「エイト様のお酒はおいしくて、1時間もしないうちに無くなってしまいました。」
「そうか・・・出血大サービスだぞ?」
叡斗が料理の隣に酒樽をひとつ取り出して置く
「これもいい酒だから心して飲むように!」
「な!感謝の言葉もありません・・・やはり今晩お礼に夜伽を!」
「本当に大丈夫だから!ユーリンはちゃんと村長になれる人を探しなさい!」
「一晩だけ!一晩だけです!」
鼻息を荒くしたユーリンが叡斗へ詰め寄る
「お礼の気持ちはどこへ行った?」
「ゴブリンに弄ばれた私の体では不満ですよね・・・」
「そんな事はない!メイサに殺されたくないだけだ!」
「一途なのですね・・・メイサ様が羨ましいです。」
「じゃーりんはわらふひにむちゅーにゃにょでひゅ!」(訳:ダーリンは私に夢中なのです!)
「久々に泥酔するメイサを見たな・・・」
「じゃーりん!いまわらふひはとれもあちゅいでふわ」(訳:ダーリン!今私とても暑いですわ!)
謎の言葉を言ってメイサがチャイナ服を脱ぎだす。
「メイサやめなさい!」
必死に止めるが半分脱いで胸が服から飛び出す
「あちゅい!あちゅいのれす!じゃーりんはにゃれにゃしゃい!」(訳:暑い!暑いのです!ダーリン離れなさい!)
わちゃわちゃと胸を揺らして暴れるメイサをお姫様抱っこして
「ユーリン?すまんが俺達は離脱だ・・・宴楽しんでな?」
「はぁ・・・メイサ様が羨ましいです。」
抱っこされて暴れるメイサの胸を見て前屈みになった村人の歓声を受けながら門の外に出て、メイサをテントに寝かしつける。
「メイサ今日もお疲れ様・・・」
服をいつもの踊り子の服に着せ替えると大人しくなり素直に寝てくれて助かった。
俺はメイサにぶつかられた時の吐血の血が気持ち悪かったので風呂を作って入る。
「あー生き返るな!」
天を仰いで、大の字に体を伸ばすと言葉が漏れ出す
「そうですね、一日がんばった体がほぐれるようですね。」
「なんでお前いるんだ?最近存在感消しすぎじゃないか?」
対面にオリーブが湯船に浸かっているが全然気付けなかった
「普通に背中合わせに体を洗って入りましたが?」
「なんだと?そしてはしたないから足を閉じなさい。」
オリーブはなぜかM字開脚をして風呂に浸かっている
「なぜですか?御主人様と大差無い体勢かと。」
「女なんだから恥じらいなさい!あとタオルで隠しなさい!」
「え?湯船にタオルを浸けるのはマナー違反だと伺いましたが?」
「それは男風呂のマナーだ!女性は胸と股を隠すのがマナーだ!」
「わかりました、ですがこの姿勢はこの後のテントで致しますのでご安心を。」
「1人でそんな事して風邪ひくんじゃないぞ?」
「御主人様はここまで覚悟を決めた女に恥をかかせるのですか?」
「恥よりも俺は命をとる!メイサに殺されたくない。」
「そうですか・・・では手段を変えます。」
「変えなくていい!俺にそんな尽くさなくていいんだぞ?」
「私を買って腕を生やした時から、心さえも御主人様の所有物でございます、そんな御主人様が毎日欲求不満でおられるのですから、当然です。」
「そんなに欲求不満そうか?」
「気付けば鼻の下を伸ばして私を舐めるように見ているではないですか。」
「見てません!」
「今も体は反応しているではありませんか。」
「反応してますん!」
「ではテントでお待ちしておりますので。」
オリーブがそう言って風呂から出て行こうとするので
「オリーブ?明日は俺とメイサは用事で転移しなきゃダメだから留守番頼むな?」
「かしこまりました。」
やっとゆっくり出来るなと一息つき、叡斗も上がり風呂から上がり『土魔法』で作った脱衣所に入ると
「御主人様!このような所でいけません。」
オリーブがM字開脚で待っていた
「オリーブ・・・断腸の思いで断わってるのも察してね?」
「断わる必要はないのでは?このようなタイミングは早々ありません、さぁどうぞ。」
「メイサがいなくて俺だけが行動してる事って滅多にないからって張切りすぎだよ・・・」
どっと疲れが出た叡斗は真っ直ぐにメイサの隣で寝るのだった。
何回も書き直してたらオリーブが壊れてしまいました。
どうしてこうなった・・・




