~50話~慈善事業とユーリ村の復興
違和感を感じて目を覚ますと、いつもいるメイサがいなかった。
「メ、メイサ!?」
「どうしました?」
「テントから顔を出すメイサ」
「そっか!今日は女の子達と過ごしてたのか、大丈夫だった?」
「はい出産も無事に終わりましたわ。」
「メイサにばかりごめんね・・・」
「何がでしょう?」
キョトンとして答えるメイサ
「メイサがいない目覚めは寂しいな。」
「まぁダーリンがそんな事を!」
「正直に思った事だよ?」
「こんなダーリンが見られるならこういうのも悪くないですわね!」
「他のみんなは?」
「大分回復しましたわ!では朝食を作りますので準備して下さる?」
「わかった!俺も手伝うよ?」
「大丈夫ですわ!オリーブはちゃんと食べてますかしら・・・」
「カジノのお金も持ってるし大丈夫じゃない?」
「そうですわね、連絡ないですし大丈夫ですわよね。」
「今日中にユーリの村に着けそう?」
「朝食を食べたら出発出来そうですわ。」
みんなと料理を食べるが、夕食の時よりもみんな顔色もよくなっていて、少し安心して、ユーリの村へ出発する。
「ダーリン?この子は出産して体力がありません、抱っこしてあげてくださいな。」
「メイサいいのか?」
「私だって状況に応じた判断を致しますわ?ユーリン遠慮はいりませんよ?」
「わかった!おいで?」
「ありがとうございます。」
二十歳くらいの茶髪の女性を抱き上げて進む。
女性はすぐに叡斗に身体を預けて寝てしまう。
「よっぽど疲れてたんだな・・・」
「そうですわね、聞くとオーバーフローがあった日の夜にゴブリンに襲われたそうですわ。」
「そんなに早くに身体を持つ物なのか?」
「ゴブリンの大きさでオーガの強さですので、普通のゴブリンでは狩れない大型の動物を狩って・・・なんてありえますわね。」
「ゴブリンの巣は一箇所だったのかな?」
「女性達の話では襲ってくる方向は一箇所だったようですわよ?」
「本当に一箇所だったのか・・・村に着いてから話さないとだな。」
「メイサ様!村が見えました!」
1人から声が上がり、女性達が喜びあって村へ走って行く。
村を囲う塀はボロボロになっていて、入口には人手が足りないのか昨日助けた行商人の男が門番をしていた。
「ユーリンは行かなくていいのか?」
「良ければもう少しこのままで・・・」
ユーリンが顔を赤らめながら言う
「疲れてるんだろ?悪いわけないよ!」
女性達が門番と話をして村へ入って行き、行商人の男がこちらへ走ってくる
「エイト様!お待ちしておりました!」
「ちゃんと村まで辿り着けたようですね?」
「おかげ様で!紹介遅れました。フィリップ商会のジャーニス=フィリップと申します!ジャンとお呼び下さい!」
「エイトとメイサだ!オリーブは?」
「オリーブさんは・・・宿で寝込んでらっしゃいます・・・」
「なんだって!?」
「本人はただの空腹です。と言うばかりで・・・」
「お金は持ってるはずなのに・・・」
「今村には物資も人手も無くて・・・お金があっても食べる物がないのです・・・」
「けが人もいるのか?」
「宿を病院代わりに使ってますが、溢れんばかりです・・・」
「ダーリン?炊出しを行いますか?」
「お願いできるか?」
「オリーブ2人前を作るだけでしょう?」
「ハハハ!そう言うと簡単に聞こえるな!ジャン宿に案内してくれ!」
「はい!」
ジャンの案内で村の宿に行くと廊下に並んで寝る怪我人をシスターが1人で必死に介抱していた。
「これは・・・ひどいな・・・」
「毎日のようにゴブリンが襲ってきていたそうで・・・」
「昨日は襲ってこなかったのか?」
「昨日は私も一緒に待ち構えていたのですが、来ませんでした。」
「ではここはダーリンに任せて表で御飯を作るのでダーリン食材を出してくださる?」
「わかった!」
表にメイサに大量の食材を渡して、看護をしていたシスターの案内で怪我が酷い人から順番にゴッドブレスをかけていく。
25人治して魔素に限界が訪れる
「みんなにはすまないが今日はこれが限界だ・・・」
「神の御業をこんな人数に・・・あなたは女神様の御使い様ですか?」
「しいて言うなら、神ヨハンの使いだね。」
「誰の使いかなど些事ですね、神の御力素晴らしいです。」
シスターが叡斗に熱心に祈りを捧げながら言う
「シスター?表で炊出しを行ってますんで混乱が起きないように誘導と配給指示をお願いしても?」
「勿論でございます!」
「ではお願いします!」
メイサの所へ行くとオリーブがすごい勢いで食べていた。
「オリーブ!危なかったんなら知らせなさい!」
オリーブには、作動させると叡斗に自分の位置座標を知らせる簡易通信装置の魔導具を渡していた。
「ふみまへん」
口いっぱいに頬張って答えるオリーブ
「まぁ無事だったからいいけども!」
「ダーリン治癒は終わりましたの?」
「いや・・・25人治して魔素が尽きたから明日もしなくちゃ。」
「25回も神の祝福を使用できるだけでもすごい事ですわ。」
「あれだな?次の街でまた食材を買わないといけないな?」
「そうですわね・・・村人全員が配給を食べに来ているみたいですわ。」
「落ち着いたら村長と話して復興を手伝うか・・・」
「そうですわね。」
「俺は何をしたらいい?」
「ではダーリンはお皿などの食器を作ってくださる?あと食材の補充をお願いします。」
「合点!」
メイサの指示で食料を空納から出して、用意された木の輪切りを魔力成型でスープ皿の形に変えて行く。
「どうやって皿を・・・」
作業しながらちらりと見ると昨日のジャンの護衛をしていた冒険者がアンナと一緒に驚いて見ていた
「アンナもう大丈夫なのか?」
「はい!あたしは攫われただけで何もされてないんで!本当にありがとうございました!」
「気にすんな!助け合いの精神だよ?」
「あっ、ありがとうございました!俺アンナの相棒のジャックって言います!」
「ジャックか・・・恋人が助かってよかったな?」
「恋人じゃなくてただの幼馴染の腐れ縁です!」
「にしては昨日助けに行くって必死だったが?」
「ジャック・・・」
「あ、あれは相棒として当然でしょう!?」
2人が顔を赤らめる
「ニヒヒヒヒ青春だねぇ・・・ほら!この皿メイサの所に持っていってくれ!アンナはスプーン作るからちょっと待っててくれ!」
「「はい!」」
大量の皿を持ったジャックが歩いて行く
「【無双】エイト様、それはどうやってるんですか?」
木の切れ端をスプーンの形に変えていく叡斗に質問するアンナ
「二つ名も様もいらないよ?『錬金術』の魔力成型で作ってるんだよ?」
「さすがはSランカー・・・すごい・・・」
「君達もSを目指してるのか?」
「あたしはジャックといられればいいんですけどね・・・」
「青春だねぇ!ほい!これ持っていってあげて!」
「はい!」
アンナが大量のスプーンを抱き抱えて離れて行く。
「さすがに疲れたな!」
大きく伸びをして辺りを見回すと、みんな思い思いの場所に座りこみ、笑顔でメイサの作ったスープとパンを頬張っている。
「エイト様お疲れ様です!」
ユーリンがタオルを渡してくれる
「ユーリンもう動いて大丈夫なのか?」
「はい!おかげ様で調子もいいので!」
「もう大体の人に御飯は行き届いたかな?」
「はい!村中の人間がここに集まっています!」
「村中が飢えているのか・・・」
「私も先程聞いたのですが、この1週間毎日ゴブリンが襲ってきて村も人もボロボロで畑も踏み荒らされてしまって、農作物も全てが駄目になってしまって・・・」
「村長、もしくは村の責任者はいるのか?」
「あの・・・父と兄は村を守るために亡くなっていて、私が・・・」
「ユーリンが村長!?」
「そうなるようです。」
「そっか・・・大変だろうけど俺達も手伝うからなんでも言ってな?」
「本当にありがとうございます!」
ユーリンが泣きながら抱きついてくるのでそっと頭を撫でてやる
「ダーリン火の魔石が切れましたわ!」
「わかった!」
「魔石!?そんな高価な物を!?」
「ユーリンは気にするな!行って来る!」
すぐにメイサの所に行き魔石を交換する。
「あれだな・・・大出血サービスで風呂も作るか?」
「確かにこの状況で私達だけ入るのは忍び無いですわね・・・」
「ユーリン?昨日の風呂を作ろうかと思うけどいい場所ないか?」
「そんな事まで・・・では私達が入った門の広場がよろしいかと。」
「なら作ってくるからユーリンはみんなに風呂の入り方を教えてやってくれるか?」
「お任せください!」
ユーリンが走って配給待ちの人のだかりの中へ消えて行く。
「じゃあメイサ俺もちょっと行ってくるよ!」
「魔素切れで倒れたら承知しませんわよ?」
「風呂2個くらいなら余裕だよ!」
「2個ですか・・・本当にお優しいこと!」
メイサが諦めたように呟く
大風呂を2個つくり、それぞれに結界を張り、男湯と女湯と書いた立札を刺しておいたので大丈夫だろう。
宿の前に戻ると配給が終わったメイサとようやく満腹になったオリーブが鍋などの片付けをしていた。
「お疲れ様!」
「ダーリン!遅かったですのね?」
気付けば昼過ぎに到着したのに、今は日が半分以上も山の向こうに沈んでいる。
「力作だぜ!」
「俺達も飯食べて風呂に行こっか?」
「そうですわね!」
メイサと一緒に配給と同じメニューを食べて、密かに門の外に作った風呂に入る。
「あー!今日はお疲れ様だな?」
「そうでしたわね?明日は食材を出せば女性陣が作るそうですわよ。」
「ならメイサは明日はどうするつもりだ?」
「畑が滅茶苦茶になってるという事なのでオリーブと耕そうかと。」
「メイサ畑仕事できるの?」
「『土魔法』で耕せないかと思ってますの!」
「なるほど!俺も治癒が終わったら試してみたいな?」
「では明日はずっと一緒ですわ!」
「そうだね!」
「今日は疲れたし上がって寝ようか?」
「念のために魔素を取らずに寝なければいけないのですね・・・」
「もしゴブリンが攻めてきたら危ないもんね・・・メイサ大丈夫?」
「普通に過ごすだけなら1週間ほどなら行けますわ。」
「やばい時はすぐに言うんだぞ?」
「わかりましたわ!」
風呂から上がり、メイサとテントで一緒に寝る。
「昨日の野宿も始めてだったけど、酔ってないメイサと一緒に寝るの始めてかもな?」
「そうかもしれませんわね?」
「おやすみメイサ。」
「おやすみなさいダーリン。」
軽くキスをして寝る2人。
「ダーリン?ダーリン起きてください。」
目を開けるとメイサとオリーブが立っていた
「2人共おはよう、どうしたの?まだ暗いよ?」
「これから村の女性達が料理を始めるそうですわ。」
「わかった!すぐに行こう!」
テントを出るとユーリンが土下座をしていた
「姿が見当たらないと思ったら・・・英雄様を村の外で申し訳ございません!」
「気にしないでいいから!俺達がテントで寝るの好きなだけだから!」
「御風呂で浮かれてしまい・・・この時間まで気付けず本当に申し訳ありません!」
「ダーリン?埒が明きませんわ、そのまま抱えて村へ行きましょう!」
「わかりました!」
土下座をするユーリンを持ち上げてお姫様抱っこをする
「ユーリン?みんなはどこで料理するんだ?」
「や・・・宿の厨房をお借りしますです。」
「よし!行こう!ついでに治癒もしていこうか?」
「そうですわね!ではユーリンはどうせ地面に這いつくばるのでしょうからこのまま行きましょう。」
「いや!」
「いや?」
「嫌ではありません・・・」
「ユーリン?恋心を抱くのは自由ですが、私敵には容赦しませんわよ?」
「そんな大それた事しません!」
「なんか面倒臭くなりそうだから、さっさと宿に行こうか・・・」
「はい。」
ユーリンがぎゅっとしがみ付いて来るので諦めそのまま宿へ向かう
宿でメイサに言われるままに食材をマジックバッグから出すふりをして空納から取り出し。
驚いている村の女性達に後は任せて、シスターの案内でゴッドブレスをかけて行く。
「ふぅ!これで治療待ちの人間は全員か?」
「はい、ありがとうございました。」
「ダーリンお疲れ様でした!」
「御主人様、お茶の用意が出来ましたので戻ってお茶に致しませんか?」
「オリーブありがとう!メイサ?お茶にしようか?」
「そうですわね!」
テントを張っていたところに戻るとオリーブが手際よくマジックバッグから机と椅子を出して、おやつをとティーカップが並べ、叡斗とメイサが優雅にティータイムを楽しむ。
「ダーリン魔素の余裕はありますの?」
「ゴッドブレスは9人で他はエクストラヒールで済んだからね!大分余裕あるよ?」
「なら昼からは畑の復旧ですわね?」
「御主人様、私は家屋の修理で力仕事があるそうなのでそちらへ行こうと思いますがよろしいですか?」
「いいぞ?怪我しないように気をつけろよ?」
「はい、御主人様が恥をかかないようにがんばります。」
「では私は自分達の御飯を作りましょうか?」
「お任せください奥様。」
「あれ?女性陣が作ってくれてるんじゃないの?」
「オリーブの量は無理ですわ。」
食材をメイサに渡して
「俺が手伝うことはあるか?」
「ありませんわ!そこら辺で寝ててよろしいですわよ?」
「じゃあ朝早かったしちょっと寝るよ。」
「料理が出来たら起こしますわ。」
「よろしくお願いします!」
メイサとオリーブが料理をするなか、叡斗が椅子を並べて横になって寝る。
「オリーブ?今がチャンスですわね?」
「そうですね、奥様。」
「では作戦開始でよろしいのですね?」
「はい。御主人様の視線は奥様に釘付け間違いありません。」
「これで釘付けなんてヒトの興奮するポイントがわかりませんわ・・・」
叡斗が寝ている間にメイサとオリーブがこそこそと準備をする。




