~49話~王都出発とゴブリン退治
「ダーリン?起きて下さい。」
「メイサ?まだ暗いよ?」
メイサに夜明け前に起こされる。
「今日中に次の町に着くにはこの時間に出発しなければ駄目と話したでしょう?」
そういえばブルーノとオリーブがそんな事を話していた。
「次はユーリだろ!?覚えてるって!」
「ダーリン?凛々しい顔は格好いいですがしっかりして頂かないと駄目ですわよ?」
「はい・・・行こうか。」
「行きましょう!」
宿を出ると
「御主人様ギルドマスターと車が待っているようです。」
「え?まだ暗いし車がゴマくらいにしか見えないけど見えるの?」
「目がいいので、数少ないとりえです。」
オリーブの事がまた1つわかった。
「ブルーノさんわざわざありがとうございます!」
オリーブの言う通りブルーノさんが1人で車の横で待ってくれていた。
「ハハハ!英雄の出発だからね!私だけで申し訳ないくらいだよ!」
「いえいえ!目立つのは好きじゃないですからこれくらいがいいです!」
「あ!早く乗りたまえ!」
ブルーノが大通りを見て何かに気付き背中を押して急かしてくる
「ど、どうしたんですか!?」
「内緒にしてたのに、メイサファンクラブとライラ応援隊にばれたみたいだ!早く出発したまえ!」
大通りを見ると大勢の人間がこちらに走って来るのが見える
「ライラ応援隊は昨日聞いたけどメイサファンクラブってなんだよ!?」
「エイト君は知らないほうがいい!さぁ!早く出発したまえ!」
「メイサ行こうか?」
「そうですわね、オリーブ出して頂戴!」
「かしこまりました。」
「ブルーノさんありがとうございました!」
「多くの人々を救ってくれたまえ!」
叡斗とブルーノが手を振り、離れて行く。
遠くから「ライラを連れて行け!」と聞こえるが気のせいだろう。
門を無事にくぐり街を出るとメイサが
「オリーブ?あとは任せてよろしいかしら??」
「はい奥様、私にお任せ下さい。」
「ではお願い致しますわよ?」
「かしこまりました。」
「ではダーリン今日からメタスラの皮膜の特訓は人型に挑戦致しましょう?」
「わかった!」
「私が見本に立った方がよろしいかしら?」
「いいよ!今日はメイサのなんとなくな形を作れるのを目標にがんばるよ!」
「わかりましたわ。」
人型に膨らますが、昨日まで練習していた剣や斧と違って凹凸が多すぎて難しい・・・
昼食を食べ、出発してしばらくしてようやく人と言える形になってきた。
「ダーリン?私はそんなにずんぐりむっくりではございませんわよ?」
「わかってる!これでもがんばってるんだ!」
「フフ、わかってらっしゃるのならいいのです。」
「あれ?車が止まった?」
「オリーブ?何か問題発生ですか?」
「はい、前方にゴブリンに襲われている馬車がありましてラプターが怯えております。」
「ラプターがゴブリンに怯える!?」
「昨日ブルーノさんが仰っていたゴブリンかしら?」
「その可能性が高いな、すぐに助けに行かないと!」
「お待ちになって!オリーブと私が行きます!ここは森の中ですのでダーリンは車に居て他に魔物がこないか注意しておいてくださいな?」
「大丈夫か?」
「駄目な時はダーリンが助けてくれればいいのです、オリーブ行きますわよ!」
「かしこまりました」
メイサとオリーブが車から降りて襲われている馬車へ走って行く。
御者台に出て前方を確認すると、横転した馬車の陰からぐったりした馬を持ち上げた一匹のゴブリンが現れ、街道脇の森へと走って行く。
「ゴブリンが一匹で馬を持ち上げるっておかしいだろ・・・」
怯えるラプターを撫でながら、思わず1人ごちる叡斗
馬車の中でごそごそと物色していたゴブリン達がメイサに気付いて、ゴブリンとは思えない速度で斬りかかって行くが、メイサは舞うようにゴブリンの攻撃を避け、杖でなで斬りながら進む。
隣を抜けられたゴブリンがメイサの背中から襲い掛かって挟み撃ちしようとするが、オリーブが槍で抜けたゴブリンを一突きにする。
「オリーブは聖王の槍か?メイサは【舞姫】の二つ名は伊達じゃないな・・・おい!まだ来るぞ!?」
離れている2人に大声で言うと、メイサの『魔力感知』にも反応したのだろう、メイサがこちらを見て頷く・・・が反応が20匹はある。
「メイサ大丈夫か!?」
「問題ございません!」
メイサが言い、オリーブが無言で頷く。
「無理すんなよ?普通のゴブリンじゃないぞ!?」
メイサが返事をする前にゴブリンが恐ろしく速い速度で近づいてくる。
森から一斉にメイサに襲い掛かるゴブリン達。
地面を走るゴブリンに木から飛んだのだろう、高い位置からメイサに向かって飛んで行くゴブリンもいる。
叡斗が心配する暇も無くゴブリン達はメイサが杖を一振りすると、バラバラに切り刻まれながら森へと吹き戻されていく。
ゴブリンが全滅して怯えなくなったラプターを、ぎこちない操作でなんとか進め襲われていた馬車まで進めると、手を血だらけにしてゴブリンの耳を回収するオリーブに気付いたので
「オリーブ?無理に回収しなくてもいいんだよ?」
「いえ、御主人様の功績を無には出来ませんので。」
オリーブは礼をして答えるが、君達の功績だよ。
俺は討伐証明部位の回収を女性陣に任せて、生存者達の元へと向かう。
倒れた馬車の下敷きになった冒険者がいるので車を起こして治癒してやり車にもたれかからせておき、ゴブリンが来た方向とは逆の森へ声をかける
「おーい!もう大丈夫だ!出てきてもいいぞ!」
恐る恐ると言った様子で痩せ型の男を先頭に家族が現れる。
「ダーリン終わりましたわよ?」
「2人共ありがとう!」
「それで?あなた方はユーリの村に向かう行商人の親子といった所かしら?」
「はいそうです。危ないところをありがとうございました。」
痩せ型の男が答える
「オリーブ?彼らの車を引っ張る事はできるかしら?」
「人が乗って無ければなんとか行けるのではないかと思います。」
「では仕方がありませんね・・・ユーリまで歩きましょうか・・・」
「そうだな!メイサ抱っこしようか?」
「まぁ嬉しい!ならこれからの旅はずっと歩きで行きますか?」
「いやそれはキツイ!」
「では今回だけのお楽しみですわね!」
メイサがピョンと飛んで来るので、受け止めお姫様抱っこをする。
「では行きましょうか?」
「それでユーリまで行くんですか・・・?」
「魔物が出たら降ろしますよ?」
「そうでは無くて!ユーリまで遠いですよ?」
「限界がきたら降ろして一緒に歩きますから!」
「ダーリン?そういえばそこで寝てらっしゃる方がいますわね?」
「忘れてた!おい!起きろ!」
足で小突くと目を覚ました冒険者が自分の状況を確認して
「アンナ!?アンナはどこですか!?」
「アンナ?他に人はいなかったぞ?」
「ゴブリンにさらわれたんだ!行かないと!」
「お前じゃ無理じゃね?あれはゴブリンの姿だが中身はオーガ並の強さだぞ?」
「そんな・・・」
「しょうがねぇな!オリーブ?この人達を頼んでいいか?」
叡斗達の車と行商人の車を連結させているオリーブが答える
「お任せください。」
「頼んだ!急げばさっき馬を持って行ったゴブリンが見つかるかもしれない、メイサ行くよ?」
「いつでもいいですわよ!」
メイサを抱っこしたまま『風魔法』で馬を持ち上げたゴブリンが逃げた方向へ飛んで行く。
「ダーリンいましたわ!ここから前方200m先ですわ!」
「よし!ばれないように付いて行こう!」
「一瞬木の間から見えました!馬を担いでますわ!」
「よし!予想通りだ!にしても馬を担いでこのスピードかよ・・・」
馬を担いでるのに、一般人の全力疾走ほどのスピードで移動していて、すぐに洞くつの中へと入って行った
「入口に3匹、見張りがいますわね。」
そう言ってお姫様抱っこされていたメイサがピョンと叡斗の腕から離れて、落ちて行きゴブリンを音も無く着地し瞬殺する。
「8階建てくらいの高さなんだけどな・・・俺は恐くて出来ないな。」
「中に結構な数がいますわね、人の反応も10人以上ありますわね。」
「そうだな!気を引き締めよう!」
「今回は私の華麗な戦闘をお見せしてダーリンに惚れ直して頂きたいです!よろしいですか?」
「いつも惚れ直してるよ?そう言うなら俺は大人しくしとくよ!」
「ダーリンったら、もう!それにたまにはダーリンからの魔素を発散しませんとね!」
「え?存在維持のための魔素・・・発散・・・?」
「・・・ぺちゃくちゃせず行きますわよ!」
突然不機嫌になったメイサが洞窟へ入って行く
「絶対に怒って誤魔化しただろ・・・」
「ダーリン!ゴブリンに気付かれますわ!」
「はい」
メイサは音も無くゴブリンを斬りながら一本道の洞窟を進んで行く。
「一本道で分かりやすくていいですわね」
「そうだな?突き当たりは反応が纏まってるから部屋になってるみたいだな?」
「ゴブリンと人の反応が一塊・・・どうなってるか簡単に想像出きますわね。」
「やっぱりこの世界のゴブリンは人と交尾するのか?」
「産まれて来る子はオスの魔物ですわ。見たくはありませんが、助けないと駄目ですわね・・・」
ヒソヒソと話してると、部屋の前に着く。
しばらく前から、汗やゴブリンの臭いに混じって、生臭いすえた臭いがしている。
「部屋に入ったら俺が『簡易鑑定』でおびき寄せるからあと頼めるか?」
「かしこまりました!ダーリンは部屋の中を見ては駄目ですわよ?」
「わかった、裸の人ばかりだろうしメイサに任せるよ。」
「ダーリンお願いします!」
「へい!」
叡斗が部屋内に向けて『簡易鑑定』を発動すると、ゴブリン達の叫び声と共に足音が近づいてくる。
「ダーリン後はお任せくださいまし!」
「わかった!」
10秒程でゴブリンの声が無くなり
「ダーリン?終わりましたから入口に戻ってお風呂を作っておいてくださる?」
「はい!メイサ無理してないよね?」
「ふふ?これくらいなんでもないですわ!」
「わかった!じゃあ風呂作って待ってるから!」
入口に戻りお風呂を作っているとぞろぞろと布を見に纏った汚れた女性が出てきたので、ボディータオルやシャンプーの使い方を教えて風呂に張った結界の中に入ってもらう。
「ダーリン完了しましたわ。」
血がぽたぽたと漏れ出ている皮袋を持ったメイサが洞窟から出てきた
「証明部位まで・・・俺がしたのに・・・」
「ついでですわ!あとこの子はかろうじて魔手から逃れたみたいですわよ?」
メイサの後ろについて、赤毛の女性が出てくる
「魔手から逃れたねぇ・・・もしかして君がアンナか?」
黙って頷くアンナ
「もう大丈夫だ!風呂に入って来い?」
伏し目がちのアンナが頷いて結界の中へ入って行く
「亡くなっていた女性もいましたわ・・・」
メイサが悔しそうに言う
「俺達が通らなかったら全員死んでたかもしれないんだ!」
「そうですわね・・・」
「ポジティブに考えて行こうぜ!さ?手を洗お?」
証明部位の耳を切り取ったメイサの左手が血だらけなのでウォーターボールを出して洗うとメイサが嬉しそうに
「ダーリンは優しいですわね。」
「メイサがいつも協力してくれるからだよ?」
「ふふ!私がいないともうダーリンは駄目になってしまったのですね!この調子で行けば目標はすぐに達成ですわ・・・」
メイサが自分の世界に入ってしまったので、叡斗は非常用に持っていた服を空納から適当に10着ほど取り出して結界の中に置き、ゴブリンの討伐証明部位が入った皮袋を空納へ仕舞う。
「メイサ?」
「どうしましたの?」
「簡単な物でいいから作ってやってくれない?」
「わかりました、スープを作り置きしてるのでそれを温めてパンを焼きましょう。」
「ありがとうね?メイサ?」
メイサにキスをして御礼を言うと
「ンフー!では少しばかりお肉も焼いてあげましょう!」
鼻息を荒くしたメイサが手際よく料理をする。
「そんなに興奮すること?」
「私からする事はあってもダーリンからして下さるのは少ないですわよ?」
「そう言えばそうだな、俺がしたいと思う前にメイサがしてくるから・・・」
「ではダーリンが私よりもしたいと思えばいいのです!」
「したいと思わせてくれればいつでも喜んで!」
手際よく料理するメイサに貴族の礼をして答える。
「それで?あなた方は話は出来まして?」
振り返ると、顔を赤らめてこちらを見る若い女性達が並んでいるがすぐに顔を俯かせ、まだ会話が出来るほど立ち直れてなさそうだ
「みんな大変だったと思うがもう大丈夫だ!とりあえずゆっくり休んでいいよ?」
ワンタッチテント改を広げてみんなを中へ入ってもらう
「どうぞ?ゆっくりと座るなり寝転んで貰っていていいよ?すぐに御飯が出きるからね?」
見た目は普通だが中は16畳という初めて見るテントに入り不思議そうに中を調べる女性達に言う。
料理を食べ、大分回復した女性達はポツリポツリと口を開き始める
「みんなユーリの村の子達なのか・・・ユーリまでは遠いのか?」
「ここから歩いて3時間ほどでございます。」
身重の女性が答える
「じゃあ今日中に帰る・・・無理か、日暮れだしみんなの体力が持たないか。」
「そうですわね、それにこの子、今日辺りに産まれそうですわね。」
「え?攫われたの1週間前だよ?」
「ゴブリンの子は1週間程で産まれます。」
「早っ!」
メイサが身重の女性に近づいて、頭を抱いて
「ご安心なさい?これから人間との子は普通に成せます!この1週間と今日1日の事は忘れるのです!」
女性がメイサに抱き抱えられ泣いている
「ダーリンは離れて寝て下さる?ヒト族には繊細は問題なのでしょう?」
「そうだな・・・メイサかなり勉強したんだな?」
「フフ!まだまだですけどね。」
「明日は隣で寝てくれるよな?」
「あら!ダーリンからそんな事言われるなんて!」
メイサが喜んで腕の力が強まり胸に抱かれている女性がぐったりしている
「メイサ!力を緩めろ!」
「あら?私としたことが!」
「じゃあ俺はテントの隣で寝るから何かあったら呼んでね?」
「わかりましたわ!皆さん?テントでご自由になさってください!」
女性達は一様に頷いてテントに入って行く
テントの隣で横になってるとメイサがやって来て後ろに寄り添って横になる
「メイサ?どうしたの?」
「ダーリン私は上手くやれてますか?」
「メイサは満点だよ?」
「そうですか・・・ヒト族の心は難解でわかりません!」
「何かあったらすぐに起こしてくれたらいいからね?」
「ダーリン、おやすみになる前に5人ほど神の祝福をかけてやって頂いてもよろしいですか?」
「勿論だ!」
女性達の指や手の欠損部位を治してやりテントから出ると防音機能はしっかり効いているようで外に一歩出ると女性達の驚きの声がぴたりと止まる。
そういえばテントも無い野宿って初めてだな、なんて思いながら眠りにつく。




