~43話~【二つ名】と王と奴隷
お揃いの外套で2人共フードを深深と着た怪しい2人組みがギルドに足を踏み入れる。
顔を見られてまた人が群がると何も出来なくなるので、メイサが叡斗の錬金中に<ワイバーン皮の外套>そっくりの外套を作って、ペアルックになった叡斗とメイサである。
2人はこそこそとギルドの階段を上り2階のカウンターへ、行き受付嬢にそっと耳打ちをすると、階段を指差され、こそこそと階段を上がっていく。
3階へ上がると扉が2つしかなく、大きな両開きの扉と普通の部屋の扉があり、フードを被った2人は小さな扉を開き入って行く。
部屋は15畳で縦長の部屋となっており奥にブルーノが机に座り、机の前に対面してソファが置かれていた。
部屋がかなり広いが家具や配置は今までのギルドマスターの部屋と変わらない。
ソファに座っている人物が声を発する
「来たかぁ待ってたぞ!なぁ兄貴!?ガハハ!」
「バッケに髪があるだとぉ・・・」
快活に笑い呆然自失となっているビッケの肩を叩くバッケ。
部屋に入った2人はフードを取る
「なんでバッケとビッケがいるんだ?」
「お前に会いたかったからだ!ガハハ」
バッケが上機嫌に話す。
「まぁいいや!ギルドカードを返却して頂けるんですね?」
叡斗がブルーノへ向き直り聞く
「まぁそこに座れ!ワシが渡してやるから!」
バッケに言われるままに叡斗とメイサが席に着くと
「まずは【舞姫】メイサだ!特例で3段階昇進のSランクの鉄色だ!」
「【舞姫】?いいないいな!カッコいい!」
「ダーリンにそう言って貰えるのならばSランクにも価値がありましたわね!」
メイサがカードを受け取りながら、喜ぶ
「叡斗!お前の二つ名は会議が長引いて困ったぞ?」
「んなもんで長引く会議って平和すぎだろ!ギルマスって暇なのか?」
「マリンは【非常識】ブルーノは【理解不能】ワシは【常識外れ】で三竦みよ!」
「全部却下!」
「安心しろ!ほれ!カードだ、【無双】エイト殿、Sランクの金色だ!」
「安心したよ!つかなんで全部、日本語で2文字なんだ?この世界の文字は違うのに?」
「元々二つ名の制度は冒険者ギルドの創設者が始めてな!その初代様が二つ名の一覧の本を残しててな、それとそいつの世間での異名とを、照らし合わせて意味が合う言葉が正式な二つ名になるんだ!お前の場合は異名も無いから長引いちまったぜ!」
「創設者、厨二病かよ・・・」
「まぁなんだ!俺の用事は済んだ!ブルーノ?」
ブルーノがすっと立ち上がり叡斗達の座るソファの横に歩く
「エイト君!これから一緒に城に行ってもらいたいのだがいいかな?」
叡斗の肩に手を置いて言うブルーノ
「なんで!?」
「王からの感謝状の贈呈と討伐報酬の授与です!」
「そんな簡単にこっちの都合に合わせて会えるものじゃないでしょう?」
「我が国の王はフランクな方なのだ!いつでもエイト君が捕まり次第連れて来いって言われてるから大丈夫だよ!」
「会いたくない!」
「ハッハッハッ!さぁ行こう!馬車を用意してあるよ!」
笑顔のブルーノに両腕を掴まれ、バッケに両足を掴まれブラブラされながら連行される叡斗
「貴族はいぃぃぃぃやぁぁぁぁだぁぁぁぁぁぁ!!」
馬車に放り込まれ不機嫌にしているとメイサが
「ダーリン?お望みとあらばこの建物ごと更地にしますよ?」
「メイサ・・・ごめんワガママ言っただけです、そんなに俺の為に怒らないで!」
青くなるブルーノ、冒険者ギルド本部を人知れず救った叡斗だった。
城に着くと門兵がやってきて
「申し訳ありませんが、武器とマジックバッグと外套をお預かりします!」
「マジックバッグも?」
「疑ってる訳ではないのですが規則ですので・・・」
「わかりました。」
メイサと一緒に車から降りて言われた通りにして、ブルーノに先導されて城へ入って行く。
巨大な扉の前に立たされる叡斗とメイサとブルーノ。
「いいね?私が先導するから真似するんだよ?」
「宜しくお願いします。メイサ少し我慢しよう!」
「かしこまりましたわ。」
謁見の間の扉が厳かに開き
「この度の王都防衛戦での最大功労者の【無双】エイト様、【舞姫】メイサ様、ロキマ国グランドギルドマスターブルーノ=フォン=マウスター様の御成りです!」
と文官らしき人が言う。
ブルーノが歩き出したので2人も一緒に歩く
叡斗はおそるおそる付いていき、メイサは堂々と歩いて行く
ブルーノが止まり跪いて頭を下げるので、急いでマネをする叡斗
「そんな堅苦しくしなくてもよい!頭を上げよ!」
正面の一段高い位置にいた王が声を発する。
「は!」
ブルーノの返事を聞いて頭を上げる、叡斗とメイサ。
歩いてる時はいっぱいいっぱいだった叡斗は、落ち着いて玉座に座る人物を見る。
国王は王冠を付けているものの、服装はシンプルな茶髪の30代くらいのイケメンだった。
「余はロキマ国52代国王アルベルト=フォン=マキ=ロキマである!」
「は!ブルーノ=フォン=マウスターで御座います」
「【無双】エイトです」
「【舞姫】メイサでございます」
「此度は真に大義であった!こちらの書状をお主等に贈呈する!」
アルベルト王が文官からうやうやしく掲げた書簡から書状を取り出し立ち上がり、代表してブルーノが王の前まで進み跪きうやうやしく受け取る
「有難き幸せでございます!」
アルベルト王が玉座に座り一息吐き、王冠を脱ぐ
「これで政は終了じゃ!王に対しての堅苦しい対応はやめて普通に過ごして欲しい」
「は!」
ブルーノが返事をすると立ち上がり叡斗とメイサも続いて立ち上がる。
「そうじゃ!そなた達に討伐報酬じゃったな!働きに応じた素材金額は金貨3500枚じゃが、どうする?」
「どうするとは?」
「金貨で持って帰るもよし、他に何か望めば対価として褒美を授けてもよいぞ?」
「では恐れながら、1つご相談が。」
「なんじゃ?」
「ブルーノさんにも関係のある話になるのですが、この国に来て庶民の学校を見た事がありません。」
「学校と言えば貴族学校だけじゃな。」
「足りないかも知れませんがその報奨金を使って、スラムの子も含めて平民が通える学校を作って欲しいのです。」
「なんと!?そのような事に私財を投じると?」
「私の召喚主は女神ではありません。その召喚主が困っている隣人は助けよと言っていたのです。」
「なんと素晴らしい教えか!」
アルベルト王にも共感を貰えたようで叡斗はホッと安堵する
左右に控える文官が隣同士でヒソヒソと話をしている。
「それで?冒険者ギルドに関係があるとは?」
「そこで最低限の読み書きも教えますが、希望者には冒険者としての訓練をすれば、スラムの子も普通の暮らしが出来る可能性が高くなるのでは?と考えました。」
アルベルト王が顎に手をやり考える。
「ふむ!やがて子が育てば冒険者の質も上がり、国力も上がるか・・・」
「私の報奨金を使って頂いて子を育て頂き、それを試金石として、成功し、国策になったならば、結果的に苦しむ隣人を減らす事が出来るでしょう!それが私の本望です。」
「怪我で冒険が出来なった者達の就職先にもなり得ますね。」
「素晴らしい!今日から、いや今すぐに始めようぞ!」
アルベルト王が隣に控える黒髪の文官に目配せをすると、文官は頷き部屋から出て行く。
「今のは余の弟でな!すぐに学校作りが始まるであろう!」
「私達の希望する褒賞は以上で御座います。」
楽しそうに笑うアルベルト王に跪く叡斗とメイサ
「久々に素晴らしい考えに触れられて余もよきひと時であった!」
「は!有難き御言葉にございます!」
「謁見は以上である!真に大義であった!」
「は!失礼致します!」
ブルーノに付いて謁見の間を後にする、叡斗とメイサ
馬車に乗り込み
「エイト君、メイサ君いい謁見でしたよ?」
「ありがとうございます。学校の件は俺は金を出したら後は丸投げするつもりなんでブルーノさん後はお願いできますか?」
「任せてくれ!エイト君は名誉教師にでも任命しておきますかな?ハッハッハッ」
「それを断ったらまた面倒臭そうですね・・・」
ブルーノと叡斗が握手を交わす
「あ!ブルーノさん、馬ってどこで買えますか?」
「騎乗用かい?」
「これから旅するのに徒歩ってのはダメでしょう?」
「丁度ギルドにいい品がありますよ!見てみますか?」
「いい品?」
「車ですよ。いい品すぎて売れなくてね。」
「見てみますか・・・」
「ギルドに着いたら案内してあげよう!」
ギルドに着きブルーノの案内でギルドの奥、の練習場の更に奥にある倉庫へ行く。
「さぁ!見てくれ!」
ブルーノが立ち並ぶ倉庫の一つの扉を開けると、真っ黒な6人乗りの頑丈そうな箱車が姿を現わす。
横にドアは無く後方が吹き抜けになっていて、窓が側面に2個付いてる。
「ダーリン!中の椅子がフカフカですわよ?」
気付くとメイサが車に乗り込み両脇に取り付けられた椅子に座っていた。
叡斗も後ろから乗り込む
「フカフカだしいい皮を使ってるね!中は外観と違って普通に木目で落ち着くな・・・」
「これは引退する冒険者から買い取ったんだけど、物が良すぎてね・・・」
車の後ろから顔を出してブルーノが言う
「いくらですか?」
「ラプター二頭付いて金貨200枚だ」
「となると御者もいりますもんね・・・」
「騎乗して旅をするのは思ったよりも大変だから、私は車での旅をお勧めするけどね?特にエイト君達は国々を旅するんだろ?これなら頑丈だしお勧めですよ?」
「御者雇うのがなぁ・・・」
「それなら奴隷を買えばいいじゃないか。」
「奴隷か・・・」
「確かに車ならば道中もダーリンの特訓が出来ますわね・・・」
「奴隷探してみる?」
「やはり二人旅で無くなるのですわね・・・」
「メイサが嫌なら騎乗旅でいいよ?」
「私の眼鏡に叶う奴隷がいればこれを買いませんこと?」
「ブルーノさん!取り置きお願いしてもいいですか?」
「いいとも。そんな事しなくてもホイホイ売れないだろうがね!ハッハッハッ」
「あと奴隷ってどこで買えますか?」
「奴隷商店なら商業地区と市民地区の境目の一番外側の通りにあるパブロフ商店がお勧めだね!」
「わかりました!行ってみます!」
「いい買物が出来てこの車を買ってくれることを願ってるよ。」
「よし!図書館がまた遠のいて申し訳ないが行ってみようか!」
「もう今日は諦めましたわ!」
メイサが可愛く怒る、大丈夫そうでホッとする叡斗だった。
ブルーノに言われた通りを店を探しながら歩く2人
「あれだな?市民地区に近づくにつれてスラムっぽくなってくな・・・」
「道行く方々の目に生気がないですわね、それに少し臭いますわね。」
道の脇に寝転んでる人も増えてきた・・・
「学校が出来てこの辺も変わればいいけど難しいんだろうな・・・」
「全てが丸く収まるのは無理だと思いますわよ?あ、ここでは?」
スラム一歩手前のボロボロの通りの中に一つだけキレイな建物がある、看板にはパブロフとだけ書かれている。
中に入るとカウンターがあるだけで他は何もない部屋だった。
「こんにちはー」
「はい!」
40くらいの頬に大きな切り傷がついた強面のおじさんが笑顔で奥から出てくる
「いらっしゃいませ、店主のパブロフで御座います以後お見知り置きを。本日はどういった商品をお探しで?」
「えーと御者が出来る人っているかな?男女は問いません」
「なるほど!ご予算はおいくらほどで?」
「いくらくらいが相場ですか?」
「御者が出来るほど教育が施された商品ですと金貨100枚前後かと!」
「とりあえず見せてもらっていいですか?」
「はい!ではこちらへどうぞ」
パブロフはカウンターに接客中という札を掛け、奥の部屋は2人を案内する、案内された部屋は10畳ほどのテーブルと椅子が置いてあるだけの部屋だった。
「では見繕って参りますので、ここにかけてお待ち下さい」
そう言って机の椅子を引いて、更に奥の扉へと消えていった。
椅子が机の壁側だけに置いてあるので、二人並んで座ってると、受ける側だったが就活時の面接を思い出す。
「じゃあ選ぶのはメイサにお願いするよ?」
「お任せ下さい、最低限自分の身を守れる人間を見つけますわ。」
「任せた!」
しはらくするとパブロフが部屋へ戻ってきて後ろにぼろ布を体にかけた6人の男女が壁を背に叡斗達と向き合って横に並ぶ。
メイサを見ると静かに首を横に振る
「ダーリン?直接奥に行けませんか?」
「すみません・・・俺達が奥に行って直接見て選ぶ事は出来ますか?」
「汚うございますよ?」
「構いません!」
「ではこちらへ!おい!」
パブロフが手を叩くと奥の扉から服を着た男、従業員だろうか?が奴隷達を連れて行く。
パブロフの案内で奥の扉を進んで行く。
「あの?こちらの部屋の奴隷は何ですの?」
メイサが廊下の途中の扉を指差して尋ねる
「そちらは犯罪奴隷の部屋でした特に汚うございますし、粗暴でお勧め出来る商品はとても・・・」
「入ってもよろしいですか?」
「どうぞ・・・」
メイサが扉を開ける一歩踏み出すとと、糞尿の臭いだろうか?とんでもない異臭が流れてくる。
メイサは平然と歩いて行く、臭く無いのだろうか?
中へ入ると、まるで牢屋のような空間に元の色が分からないくらいに汚れた布を纏う男女が部屋ごとに分けて入っていた。
「そこの右腕の無い女!御者はできまして?」
右腕の無い、生気の抜け切った女性は焦点の合ってない目で力なく頷く、髪はぼろぼろで何色なのかも分からないくらいに全身汚れている。
それを見てメイサも頷き、隣の檻を見て
「そこの黒髪の小僧!あなた御者はできまして?」
黒髪の青年も焦点の合わない目で力なく頷く、男前だったろうにアバラは浮き出ていて顔は痩せこけてしまっている。
メイサは静かに頷き
「店主さん?あの髪の女とあの黒髪の小僧を先程の部屋に連れて来て下さる?」
「ふぁいかしこまりまひた」
鼻をつまむパブロフが答える
「では戻りましょう?」
「ふぁい」
叡斗も鼻をつまんでいる。
さっきの面接部屋で待つ叡斗とメイサ
「なぁ?なんでさっきの2人なんだ?」
「感知の反応で決めましたの!あの2人はかなり強くなりますわよ?」
「そうなんだ・・・俺にはそんなのさっぱりだよ・・・」
「ダーリンももう少し人生と経験を重ねればわかるようになりますわ!」
あなたは一体何歳なんですか・・・?
地雷と分かっているので心の中で尋ねる叡斗。
「お待たせ致しました。」
先程の男女が並ぶ、身体の汚れが無くなってるので洗ってくれたようだ。
女の子がくすんだブロンドと言う事が確認出来るくらいには綺麗になった。
「女が金貨200枚、男が金貨1000枚でございます。」
「高!」
思わず声が出る叡斗
「犯罪奴隷ですので、犯した罪の罰金が上乗せされておりますのでこの値段になってしまうのです!」
叡斗の声に反応して、男女が叡斗を見る。
黒髪の青年の目に生気が戻り
「旦那!買ってくれますよね?一緒に旅するの俺見ましたもん!」
「勝手に喋るんじゃない!」
「ぐあぁぁぁぁぁぁ!」
パブロフが青年に手を向けると、青年が首輪を掴んで苦しみだす。
「見たってなんだ?」
「さぁ?」
叡斗とメイサが顔を見合わせて困惑する。




