~40話~風呂と王都の招かれざる客達
「うーっ生き返りましたぁ!!」
ライラがカクテルを飲み唸り、他の面々も酒で喉を潤し同じく唸っている。
「みんなお疲れ様!メイサもお疲れ様!」
「いえ私は全然疲れてませんわ!」
「フフ!なんだかんだ言ってメイサは優しいね?」
「何を言われますの?私はストレス発散をしたまでの事です!」
「俺と違って『手加減』スキルがないから、かなり大変だっただろうに?」
叡斗がニヤニヤしながらメイサを見つめる
「ふん!皆運がよかっただけですわ!」
「運でみんなスキルレベルが上がるかな?」
「もう!ダーリン御食事に集中なさいな!」
ツンデレメイサだ!と思うが口には出さない大人な叡斗
「エイトさん!エイトさんがオーバーフローする前にダンジョンを踏破しちゃうのは駄目なんですかぁ?」
ライラが素朴な疑問をぶつけてくる
「あ!俺も一瞬考えたよそれ!どうなの?メイサ?」
「今回は2箇所ですので、ダーリンが攻略中にもう一箇所がオーバーフローすればどうなると思います?」
「えー?街に殺到する?」
「街よりも存在値の高いダーリンの方が近ければダーリンに殺到して何千もの魔物で挟み撃ちになりますのよ?」
「うえっ!危ないですねぃ・・・」
「それに、攻めるよりも防衛の方が圧倒的に有利ですのに、そのアドバンテージを捨てる意味はありませんわよ?」
「なるほどぉ!エイトさん攻略に行かずに街にいないと駄目ですよぉ?」
ライラが言うとみんなから鋭い視線が叡斗に突き刺さる
「わかってるからみんなそんな目で見るなよ!俺を何だと思ってるんだ!?」
「たまに雲隠れしちゃいますからねぇ?」
お風呂の時かな?確かにお風呂行ってる時に警報が鳴ったらやばいな・・・
「なぁ部屋にお風呂が着いてる宿ってどこかあるか?」
「んな部屋、王国ホテルのスイートルームくらいじゃねぇか?」
ベックが答える
「王国ホテルって・・・昨日泊まった宿だよな?」
「確かそんな宿名でしたわね!」
「いくらくらいだ?」
「知らねぇけど一泊で金貨10枚は行くんじゃねぇか?」
「高っ!まぁオーバーフローまでのお風呂は確保しておきたいし悩むところだな・・・」
「大衆浴場じゃ駄目なんですかぁ?」
「メイサが俺と別々だと入らないって言うから・・・」
「はぁ・・・エイトさんはメイサさんに甘々ですねぇ!」
「自覚してるし、控えるつもりもない!」
「少しでいいんで私にその愛情を割いて欲しいですぅ!」
「わかったわかった!にしても金貨10枚か・・・」
「貸切の家族風呂でいいんじゃないですかぁ?」
「この世界にもそんなシステムがあるの??」
「ちょっぴり高めですけど、1時間銀貨5枚とかじゃなかったですかねぇ?」
「よし!お風呂問題解決だ!」
「本当にエイトさんはお風呂が好きですねぇ・・・」
「風呂は日本人の心だからな!」
「ダーリンおふりょにいきまひょう!」
微妙に呂律がおかしいメイサが叡斗の腕に絡む
「あれ?昨日は大丈夫だったのになんで???」
「兄貴・・・姐御が順番に頼んでたメニュー後半酒精のキツイ酒ばっかでやすよ?」
「そういう事か!」
「店員しゃん!ちゅぎはバクダンスペヒャルくだしゃい!」
「とんでも無さそうな物注文すんな!」
メイサがメニューの最後の酒を注文していた。
「バッポ?ここらでいい宿知ってるか?」
「すぐそこにある、小鳥の巣って宿が俺達泊まってやすが、良心的でいい宿でやすよ!」
「ならメイサが酒を飲み終わったら案内してもらっていいか?」
「お任せ下せい!」
会計を済ませ、バッポの案内で小鳥の巣へと行く。
「バッポさんだ!おかえりなさい!あ、お客様ですか?」
猫耳のついたかわいらしい10歳くらいの女の子が受付だった
「2人だがシングルルームを一部屋お願いしたい。」
「え!?ベッド1つ・・・」
と驚きメイサを見つめる、猫耳少女
「この人達は夫婦でやすから・・・」
「そういう事ですか!朝食付きで1人銀貨6枚です!」
「はい!とりあえず2日分お願いね!」
銀貨24枚を渡す
「体を拭くタオルは如何ですか?」
「それはいいや。」
「わかりました!ではお部屋へ案内しますね!」
猫耳少女に案内されて部屋へ入ると、部屋は3畳ほどと狭くベッドが1つ置かれただけの部屋だった。
「しぇまいれすわにぇ」(訳:狭いですわね)
「そうだな、風呂は明日街で入ろうな?」
「わきゃりまひらわ」(訳:わかりましたわ)
「今日は頑張ったな!おやすみ。」
「おやしゅみにゃしゃい」(訳:おやすみなさい)
よっぽどみんなの特訓で気を張っていて疲れたのだろう、ベッドに寝かすとすぐ寝息へと変わる。
叡斗もメイサの隣に寝そべり眠りに落ちる。
翌日朝食を食べて、早速家族風呂に入る。
「ダーリン広いですわね!」
「そうだな!京平の銭湯くらいあるな!」
「そうですわね!」
浴槽は8人くらいは入れそうなくらいに広い。
叡斗が大の字で浸かり大きい風呂に興奮気味のメイサが叡斗の股の間に腰を下ろして背中を預ける、いつものスタイルで風呂に入っていると
「わ!広い脱衣所ですねぇこれはお風呂も期待できますよぉ!」
「ライラ!走っては駄目ですよ!」
「本当に大丈夫?師匠に怒られない?」
騒がしい声が外の脱衣所から聞こえる。
「・・・ダーリン?」
メイサの額に青筋が立つ
「本当に俺は何も知りません!」
叡斗は必死に否定する
「しっつれいしまぁすぅ!」
「あのあの!止めたのですが・・・」
「師匠ごめんなさい・・・」
水着姿の3人娘が風呂に乱入してくる
「なぜここがわかりましたの?」
「えへへへ後をつけてましたぁ!」
「ダーリン?このビッチエルフが犯罪行為に発展させる前に駆除致しません?」
メイサの目が本気だ
「メイサ?広い心で行こう?っな?年長者として!」
「ダーリンまで歳の事を言われますの?」
叡斗が地雷を踏んでしまう
「俺がメイサの歳なんか気にすると思ってんのか?」
「そうですわね!ダーリンがそんな瑣末な事を気にするような器の小さい男ではないですわよね?」
なんとか地雷処理に成功した叡斗
「メイサさんいい身体してますねぇ・・・」
ライラが正面からメイサの胸を揉んでいる・・・下心がなければ魔素は吸われないのか?と不思議に思う叡斗
「何をしてらっしゃるのかしら?ビッチエルフさん?」
メイサの肩が震えている・・・
「ライラ!胸ならマリアもでかいだろ!マリアの揉んどけ!」
「エイトさん!?そんな目で私を見てたのですか?」
顔を真っ赤にして胸を腕で隠すマリアと叡斗を睨むメイサ
「そういう目で見てません!」
「いいなぁ・・・背も高いし・・・」
ライラがメイサをべたべたと腰を触り腰に手を回す・・・
「ライラ!メイサを触るふりして俺の股間を触るな!」
「このビッチエルフが!!」
叡斗の声に即座に反応したメイサが立ち上がりライラにアイアンクローをする
「あがががが!中身が出ちゃいますぅ!」
「少々中身が膿んでるようですのでこのまま出して差し上げますわ!」
「メイサ!ライラ痙攣してるから!そこらへんでやめたげよ?」
思わず叡斗は立ち上がってライラの肩を揺するがメイサは微動だにしない。
「きゃあ!」「ひゃあ!」
叡斗の裸を見て、マリアとターニャが思わず目を手で覆うが、手の隙間がガバガバだ。
痙攣するライラを湯船の外に寝かして、風呂に浸かり直すがメイサはまだご立腹である。
「まったく!油断も隙もありませんわね!」
「うちのライラが申し訳ありません・・・」
「師匠が関わらなければしっかりしたお姉さんなの・・・」
マリアとターニャが申し訳無さそうに言って来る
「全く!私がうっかり殺さないように手綱をしっかりと持って下さいまし!」
「おほっ!」
突然首筋に気持ちのいい感触を感じて、頓狂な声が出てしまった叡斗
「ん?ダーリンどうしましたの?」
メイサが振り返ると、ライラが静かに復活して叡斗の首を艶かしく舐めていた
「ライラ!やめて!メイサも落ち着いて!」
殺人事件が起きると思った叡斗は必死に仲裁するが
「ほほぅ・・・こういうのが興奮なさるのですね?」
メイサは顎を掴み、真剣な眼差しで頷いている
「助かった・・・けど助かってないよぉぉぉ!」
ライラに後ろから胸に手を回され、首にキスをされ、割と嫌いじゃない板ばさみの叡斗。
「ンフーンフー!今晩辺りどうですエイトさん?私色々上手ですよぅ?」
鼻息の荒いライラがそのままの流れに叡斗の唇に向かって行く、がメイサのアイアンクローに阻止されてしまう。ちょっと残念な叡斗
「お勉強になりましたが、そこまでですわこのビッチエルフが!」
「おぎゃぎゃぎゃぎゃ!」
痙攣したライラをメイサが先程と同じように寝かせ
「ダーリン・・・のぼせたのでそろそろ上がりません?」
「えと・・・あの・・・もう少し俺は出れない・・・かな?」
「?そうですの?ではもう少し入りましょうか。」
メイサはわかっていない様子だが、マリアとターニャはヒソヒソと話してキャーキャー言っている。
「ダーリン?座りにくいですわよ?」
メイサが座り心地が悪そうに座る位置を変える
「そりゃ・・・あんな事されたらしょうがないだろ・・・」
「?よくわかりませんわ?」
「男ってのはこういう生き物なんだよ!」
「何か恥かしい事ですの?」
「お前って何でも知ってるのにそういうのに疎いよな?」
「今まで興味がありませんでしたから!」
「そういうもんか・・・」
「別にただの生理現象でしょうに・・・」
メイサが意味がわからないと首を傾げていると外で鐘の音が鳴る
「警報です!」
「師匠来ました!」
「今かよ!動けねぇ無念!」
「ダーリン冗談を言ってる場合ではありませんわ!」
「えっ?あ・・・」
メイサに引っ張り上げられ立たされる
「きゃー!!」「おぉっ!」
「お前ら指が隙間だらけだ!さっきも全部見てたろうが!」
開き直った叡斗が突っ込む
「大きかった・・・」「んふふ初めて見ちゃった・・・」「私見てない・・・」
「もう忘れなさい!」
叡斗が恥かしくなり大声で怒り、メイサは意味が分からず首を傾げる
ギルドに入ると食堂に冒険者が集まっていた。
「エイト君待ってたよ!こちらへ来たまえ!」
ブルーノが冒険者の集団の中で手を振り呼ぶ
集団が騒がしくなりがすぐに人が割れブルーノまでの道が出来上がった、集団の中心にはブルーノと三銃士が机の地図を囲んでいる
「状況は?」
「北門にSランクとAランクダンジョンが同時にオーバーフローです・・・魔物が押し寄せている、数はおよそ六千で1時間後に北門です!」
「六千って想像できないな・・・」
「そして南門にどこから湧いたかゴブリンのオーバーフローだ!何万・・・数えれないほどの数だ、だがこちらの魔物の到着は北門よりは少しだけ後です!」
冒険者達にざわめきが起こる
「それで?人員の振り分けはどうするんですか?」
「それで揉めてるんだ・・・」
「ダーリン?」
「どうしたメイサ?」
「南門のゴブリンは私達だけで蹴散らして差し上げましょう。」
「そんな事が出来るんですか!?」
大紀が驚いて希望に満ちた顔で聞いてくる。
「えぇ・・・昨日北門は3人で十分と申してらしたわね?」
「問題ねぇ!あんたらはゴブリン何万も相手に出来んのかよ?」
俊吾が噛付いてくる
「頼もしい言葉ですわね。ゴブリンなんぞいくら集まろうとも物の数ではございません事よ?」
さっきまで考え込んでいたブルーノが顔を上げ
「よし!エイト君!メイサ君!南門は君達に任せる!どれくらい後方支援がいる?」
「えと・・・メイサ?」
「私達の力が合わされば後方支援する必要などございませんわよ?」
メイサが自信満々に言う
「強がりだ・・・すぐに・・・逃げ出す。フフ」
新がポツリと呟く
「あなた方こそしっかりと北門を守りなさい?逃げたら承知しませんわよ?」
「よし!遠距離攻撃が出来る者は北門へ!前衛職の者は南門でもしもの備えだ!」
冒険者達の雄叫びが冒険者ギルドに巻き起こる
メイサと2人で南門の壁の上に行く・・・ドラゴンアイズのメンバーとバッポとカイジンは付いてくると思ってたら
「ガハハハ!エイトと一緒じゃ俺達の活躍の場面はねぇ!」
と言って北門へ行ってしまった。
「ダーリンが信用されていると言う事ですわ!」
「そうだね・・・で?どうするの?」
「前にダーリン、サンダーイラプションを使いましたわよね?」
「見てたの?」
と叡斗が恥かしそうにメイサを見ると、上空に向けてファイアーボールが飛んで行くのが見えた。
「なんだ?あれ?」
メイサも振り返り
「敵襲では無さそうですわね?」
そのまま三発ハルミンの上空でファイアーボールが爆発する。
「ハハハあれは住民と街の外に30分で魔物が来ると知らせてるんですよ?」
「へぇあなたは?」
「Bランク冒険者のビルマー南門の副体長を任命されましたので、あなたの指示下で頑張らせていただきます!宜しくお願い致します!」
「これは丁寧にどうも!Sランク冒険者のエイトです!」
「何か指示はありますか?」
叡斗がメイサを見ると、メイサは静かに首を横に振る
「今の所は何も!もし俺達の作戦が失敗したら上ってくるゴブリンから街を死守して欲しい、あと魔法の余波が来るかもしれないから壁から落ちないようにしてくれ!」
「かしこまりました!」
ビルマーが去り、指示をする声が聞こえてくる。
叡斗はメイサに向き直り
「ごめん、話しを続けよう。」
「はい。遠見の水晶ですので音がありませんが、読唇術でサンダーイラプションと言っているのを見て驚きましたわ」
「なんで?」
「全然違う魔法だったのもので・・・」
「え?そうなの?」
「あんな物がサンダーイラプションだと?」
「魔王城の・・・不死王はあんな感じの魔法を使ってたもん!」
「それはダンジョン内ですので、かなり省エネに放たれたのでしょう。」
「じゃあそれを放つの?」
「はい!ダーリンは私に風の魔素を安定的に送ってくださる?私が制御して魔法を放ちますわ!」
「そんな事まで出来んの??」
「普段からダーリンの魔素を頂いてるので、大分ダーリンの魔素が私の身体に馴染んでいるからこそ出来ますのよ?」
「わかった!メイサ信頼してるからね?」
「はい!本物のサンダーイラプションを御覧に入れますわ!」
「それで何万もの魔物を倒せるの?」
「ダーリンは最上級魔法の一角であるサンダーイラプションを侮りすぎですわよ?」
「そうなのか・・・」
南門から街の外を見ると遠くに森や山が見える以外は平原と街道が続いている、1時間もしないうちに数万のゴブリンで覆われるであろう風景を眺める。
「本物のサンダーイラプションどんなのだろうか・・・」
2回爆発音がする。あと20分か・・・
なんとなくわくわくする叡斗であった。
王宮の魔術師達がオーバーフローに備えて<遠見の水晶>や『魔力感知』などをできる魔道具で魔物を確認して、ギルドに知らせています。




