~31話~新メンバー加入
翌朝カウフマンにカスミンへ出発すると断わって、カオリンを出発する。
「よし!特訓だな!」
メイサに膝枕をしてもらった叡斗がミスリルの棒を取り出す。
「エイトさん何ですかぁ?それはぁ?」
「ミスリルの棒だよ?」
「ミスリルだとぉ!???」
ベックが目を見開いて聞いてくる
「え、ミスリルなんだよね?メイサ」
「ミスリルですわ。」
「そんな量のミスリル見た事ねぇ!」
「そんなに貴重なのか?」
「その棒が全部ミスリルなら金貨何枚かもわかんねーよ!」
「そんならミスリル製の盾なんていくらすんだよ!?」
1mに届かないくらいの太さ3cm程の握りやすい棒だ、盾を作るには量が少ない
「ミスリル製の盾は大概ミスリルを表面を薄く覆ってるだけだからな!その棒があれば10個は作れんじゃねぇか?」
「表面覆うだけ?」
「あぁ、表面を覆っとけばミスリルの効果で魔法を弾くからな!」
「あーそういう事か!」
「それでも金貨100枚は下らねぇ値段だろうがな!」
「あー守秘義務ってヤツで見逃してくれ!」
「もう何も言わねえよっ!」
ベックが諦観の表情で言い前に向き直る
特訓に入るが、どんなに集中しても手元から10cmほどまで棒に魔素を纏わせると、霧散して行く。
「ダーリン棒を見すぎですわ」
「え?」
「体の一部ですのよ?見るのではなく認識なさいな。」
「難しいな・・・」
「考えるのでなく、感じるのですわ、その棒はダーリンの一部であると認めるのです。」
まるで禅問答のような事を言う不機嫌なメイサ。
昼休憩になり、川のほとりでご飯を食べるが、メイサが不機嫌なままだ。
「メイサ、気に入らないか?」
「気に入らないと言いますか、気持ちはよろしくありませんわね。」
「どうしたい?」
「ダーリンの思うままにすればよろしいですわよ?」
「それで機嫌が治るのか?」
「ダーリンが決めれば私も諦めが着きますわ」
叡斗とメイサの会話をキョトンと聞く面々
「ちっ!おい髭もじゃ出て来い!」
叡斗は嫌そうに舌打ちをして後方の木陰に向かって言う
みんなの視線が木陰に集まる。
ばつが悪そうに頭を搔きながら現れるラプターを連れたカイジン
「バッポ知ってたよな?」
今日はバッポが挙動不審だった。
バッポがギョッとしてから頭を搔きながら申し訳無さそうに笑い
「へへへすいやせん・・・昨日意気投合しちまいやして・・・」
「連帯責任だ。バッポとカイジンは自炊な?」
「そんなぁ・・・」
悲しそうなバッポ
「それって・・・」
嬉しそうなカイジン
「勝手に付いて来るんなら止めようがないだろ!その代わりコソコソせずに付いて来い!」
「エイト様ありがとうございます!」
「その代わり王都に着いても付き纏ってきたら承知しないぞ?」
「・・・はい・・・」
カイジンは諦めたように頷き、王都までと約束させた事に機嫌を直すメイサ
「出発しまさぁ!」
昼休みが終わり車が出発する
「目障りですわね・・・」
窓の外をみたメイサが呟く、窓のすぐ前でカイジンが満面の笑みでラプターに乗っていた
「カイジン!並走せずに前を走ってバッポと話してろ!」
「へい・・・」
カイジンがすごすごと前へ進んでいく
その後は何事も無く、車内も和気あいあいと進む、ついでにバッポとカイジンも仲良く話しているようだ。
特訓は・・・全然進まない。
「今日はここらで野営にしやしょう!」
バッポの声でみんなと車から降り、メイサと晩御飯の準備をする
「バッポ何してんだ?」
みんなと席に座って話しをしていたバッポに声をかける
「へ?」
頓狂な声で答えるバッポ
「お前晩飯作りはどうした?」
「あれ本気だったんすか!???」
「お前がカイジンを誘ったんだろ?カイジンだけに辛い思いさせんな!」
「へい・・・」
とぼとぼと少し離れた所でたきぎをしているカイジンの元へ向かうバッポ
「おいエイト・・・ちょっと可哀想じゃねぇか?」
「そうですよぅエイトさんらしくないですぅ・・・」
ベックとライラが言い、他の3人が頷く
「こうしないと、皆様ダーリンの優しさに甘えるでしょう?」
料理がひと段落したライラが答える
「え?」
「私はダーリンと違ってはっきり言いますわ、皆さん護衛でしょう?なのにダーリンの好意に甘えて当たり前にご飯を食べてらっしゃいますわよね?」
「メイサ・・・お前が悪者になっちゃ駄目だよ。」
「いいえ!優しいダーリンに代わって言わせて頂きますわ!」
黙るドラゴンアイズの面々
「甘えてくれていいんだよ?ただ何でも言えば俺が許すと思われるのは駄目だと思って今回は厳しくしてるんだ。」
「ダーリンは甘すぎますわ!」
「じゃあメイサにも厳しくするか?」
正直メイサに助けられているのも確かだが激甘なのは、自覚している
「ぐぬぬ!」
メイサが唇を噛み悔しがり、ぐぬぬって言う人始めて見た!と叡斗が顔を輝かす
「勿論今回の旅の飯代を請求するつもりもないし、バッポ達もカスミンの街から王都では飯を出す、だが次の街までは厳しくする!みんな納得して欲しい。」
ドラゴンアイズの面々は顔を見合わせ
「エイトの言う通りだな!毎日野営で高級な材料を使ったおいしい飯を食わしてもらってるのに、すまなかった!」
ベックが頭を下げ、続いてメンバーが頭を下げる
「分かってもらえたならいいんだ!ただカイジンが気に入らないから辛く当たっている訳じゃない、と分かってもらえればそれでいいよ!」
叡斗が言うと、メイサが手を叩いて
「さ!ご飯の支度が出来ましたわ!配膳をお願いしてもよろしいかしら?」
今日のメニューは何だ?とみんな意気揚々と動き出す、現金な連中である
今日のメニューは、俺がメイサが作ったのが食べたいと言って、鶏肉のハニーマスタード添え・サラダ・海鮮スープ・パンである、叡斗とメイサだけ、冷蔵庫で冷やしたワインを飲んでいる。
いやライラも冷たい蜂蜜酒を飲んでいた、昼休みに冷蔵庫に入れてと頼んでいたのである。
晩御飯も和やかに終わり、お風呂に入り、テントに入る叡斗とメイサ
叡斗に向き直り、四つんばいのメイサが
「ダーリン?」
「ん?」
「このテントは防音でしたわよね?」
「そうだけど?」
ずずずいと四つんばいのまま寄って来るメイサ
「なら何をしても音が漏れませんわね?」
「そうだと思うけど?」
ずずずずいと更に四つんばいのまま寄って来るメイサ、叡斗が後ろに下がらないと頭がぶつかっている
「ではダーリン、『魔力操作』の秘密の特訓を致しましょう。」
「え?秘密の?」
「これは誰にも見られてはなりません。」
「何?どんなの?痛いの嫌だよ?」
「私からダーリンに魔素を送りますので、魔素を吸取る感覚を覚えて下さい。」
「それが知られたらいけないの?」
「魔族にとって自分の魔素を渡すという事はヒトで言う情事に等しい行為なのです!」
「いいのか?メイサは?」
「昨夜のダーリンの成長を肌で感じましたので、大丈夫です!では・・・」
そういってメイサは叡斗の服に手を入れ、へそを手で覆うように触れる
「なんだ?これ??」
途轍もなく気持ちいい!何が?と言われると困るが、腹の底が熱くなり言いようのない快感が湧いて来る。
「ダーリン・・・魔素を吸取る感覚わかりましたか?」
息を荒くしたメイサが言う
「メイサも吸取る時こんなに気持ちいいの?」
「はい・・・ですので止める事が出来ず・・・」
こんなに気持ちいいのなら止められる訳がない。そう思ってしまえるくらい快感が押し寄せてくる。
「ごめん、快感で感覚を感じるどころじゃない・・・」
「仕方がないですわ!私も魔素が限界ですの!ダーリン下さいな!」
そう言って激しく舌を絡めてくるメイサ、メイサの魔素と快感を感じながら、意識を手放す叡斗だった。
朝意識が戻ると服が変わっていた
「あれ?」
「私が着せましたわ、少々私の目に毒でございましたので」
そう言ってペロリと唇を舐めるメイサ、
「え?目に毒?何が?なんで着替えてるの?」
「さ!朝食を用意してますわ、行きましょう!」
メイサが作ってくれた朝食は、パンにチーズと目玉焼きを乗せて焼いた物とスープだった、俺はテンションが上がり思わず
「ラピュ○パンだ!」
と言ってしまうが、みんなはキョトンとする・・・京平の突っ込みが懐かしい。
バッポとカイジンは硬そうに干し肉を齧っていた。
出発して俺がふと思った事をメイサに聞く
双丘の向こうにいるメイサに聞く
「なぁなぁメイサ?」
「どうしました?ダーリン?」
「不思議に思ってるんだけど、なんで『風魔法』で雷魔法を放てるんだ?」
「雷はどうやって発生するか知ってますか?」
「空気と空気の摩擦だろ?」
「さすがダーリン博識ですわね!ステータスもですが、スキル名はかなり大まかで適当なものですの」
「そうなの?」
「スキル名は『風魔法』ですが、言うなれば空気を操る魔法ですのよ?」
「ふーん・・・」
よくわからないなと叡斗が生返事をする、メイサが気付き
「ダーリン氷魔法は使えますか?」
「使った事はないけど多分・・・」
「氷は何で出来ていますか?」
「水・・・あ!」
メイサは優しく微笑み
「そうです、『水魔法』は水を司る魔法です。ですから氷も『水魔法』ですのよ?」
「じゃあ風で空気を操って雷を起こすから『風魔法』?」
「そうですわ!ですのでスキル名に縛られてはなりませんよ?」
「ふむ・・・スキル名に縛られない・・・」
「固定概念こそ万能な魔素の最大の敵ですわ!」
「固定概念か・・・」
気付くと車内の全員が叡斗とメイサを凝視し、やりとりに耳を凝らしていた。
それに気付かない叡斗が考えに没頭している、その時ミスリルの棒が怪しく光だす
「えっ!・・・なんてキレイな『魔力操作』でしょう・・・」
メイサが言葉を失いながらも叡斗を褒める
「メイサできたよ!」
「どうやったんですの?」
「『錬金術』の魔力成型あるだろ?あれって金属に魔力を流して形を変えるんだ!だからミスリルが形を変える直前で止めたら魔力が流れたままになって、俺の一部になった感覚がしたから魔素を纏わしてみたら成功したよ!」
無邪気に笑いながら言う叡斗
ドラゴンアイズの面々が『錬金術』の言葉に目をまん丸にして顔を見合わせるが言葉は発せずいる
「ふふふ、さすがはダーリンですわね!これを昼休憩まで持続できたら次のステップですわよ?」
「それなら余裕だ!もうトレントの木刀と変わんねーよ!」
「頼もしいですわね!」
昼休みになり、叡斗は涼しい顔でミスリルの棒に魔素を纏わせ続けた
「さすがはダーリンですわね!御飯が終わったら次の特訓を教えますわ!」
「楽しみだ!」
そう言って料理をするメイサ。
「エイトさん『錬金術』スキル持ってるんですかぁ?」
ライラが聞いてくる
「ん?持ってるよ?どしたの?」
「『錬金術』持ってるのになんで冒険者してるんですかぁ?」
「え?そんな珍しいスキルなの?」
「そりゃポーションとか魔導具作ったりすれば食いっぱぐれのない職業ナンバー1ですよぅ!」
「まぁ俺は、ヨハンの教えを実行しないと駄目だしな・・・」
「勿体ないですよぅ・・・私なら錬金して悠々自適生活ですねぃ!」
フンスとガッツポーズをして言うライラ、俺もそうしたいのは山々だが信仰を広めないと消滅しちゃうんだ・・・
「皆さん支度ができましたわ!配膳して下さいませ!」
昼御飯のメニューは魚の刺身の盛り合わせ・味噌汁・米だ、醤油は京平が作れたが山葵は作れなかった・・・山葵好きな俺としてはまことに遺憾である。
あとバッポとカイジンは何かをモソモソと干し肉っぽい物を齧っているが俺の目にはそんな、盗賊に見間違われそうな風貌の奴らは映らない。
「今日の日が変わるまでにはカスミンに着きやすんで早いですが行きやしょう!」
そう言ってバッポが御者台に乗る
「ん?カオリンからカスミンまでは4日って言ってなかったか?」
「ちょいと急ぎやした!兄貴も道中は短いほうがいいでやしょう?」
あ・・・こいつ巻きやがった!
「おい!お前も大変だろうがラプターに無理させんなよ?」
「だ、大丈夫でやすよ!」
バッポが前に繋がれるラプターを撫でながら言う
「お前・・・あんまりひどいとハルミンへの道中も自炊させるぞ?」
「へ?ハルミンへの道中は御飯を頂けるんで?」
「一応そのつもりだ!」
「到着は明日の夕方前でやす!」
「今日の日が変わるまでと大分変わったが?」
「ラプターの様子を見るとゆっくり目がよろしいかと!へへへ」
「怒る気も失せた・・・」
叡斗は溜息を吐き、額に手を当て頭を振る
出発した車内で始めて叡斗が椅子に座り、隣のメイサが話す
「ではダーリン次の特訓でございます。」
そう言って、半透明な銀色に光る物質をマジックバッグから取り出すメイサ
「これは?」
「メタモルフォーゼスライム、通称メタスラの皮膜ですわ」
「ふーん、で?どうするの?」
「これは魔素を流すと形を変えるのです」
そう言って、メイサが持つメタスラの皮膜が膨らみ剣の形になる
「おぉ!」
叡斗が驚き、ドラゴンアイズの面々がもう慣れたよ・・・と諦めの表情で見る
「ダーリンへの特訓はこれです」
そう言うとメイサが持つメタスライムが膨らみ、人の形になり銀色の表面に色が着いて行く
「あ!エイトさんが2人いるぅ?」
メイサが俺に似ているメタスラとキスをする
「ここに実物がいますけど?」
叡斗が残念そうな顔をして、ライラが頬を膨らまし無言でメイサを批判をする
「ダーリンにはこのメタスラの皮膜で…私を作って頂きます。」
「作れれば合格?」
「作った私を滅茶苦茶にして下さってもいいですわよ?」
「作れてから決めます。」
「これが私が教えられる最後の行程ですので頑張って下さい。」
「もう最後なの!?」
「ふふ、私が教えられるのが最後なだけで、まだ半分ですわ!」
「よし!メタスラを貸してくれ!」
メイサの最後の特訓が始まった。




