~28話~ヨハンの教えと信心者
メイサがエルダートレントとドライアドに、ヒトが来たくなるダンジョン講座を開いていて、暇な叡斗はテントの改良したりして暇を潰していた。
最終的に完成したアイテムは二点だけ
<ワンタッチテント改>
魔素を流す事によって、展開・収納ができるテント。展開すると結界も展開され一定の攻撃を防ぐ。防音・覗き見防止。16畳タイプ
<転移石>
『空間魔法』の魔石によって使用者が転移する。
作りたい魔導具はあるが、材料が無くて作れない・・・毎回台を作るのが面倒なので、システムキッチンを作りたいのだが、オール鉄製のシステムキッチン・・・重くなりすぎてマジックバッグから出しましたでは誤魔化せないだろうと断念した。
メイサの方を見てみると、続いてヒトが居たくなるダンジョン講座をしているので、叡斗は魔石を作り続ける。
「ダーリン?」
壁にもたれて寝ていた叡斗がビクッとして起きる
「はい!寝てました!」
メイサはニコリと微笑み
「おはようございます。」
「ごめんなさい、お疲れ様です!」
メイサが隣に座り、指を絡めて繋いでくる
「ねぇ?ダーリン?」
「ん?」
「踏破ボーナスはどうしましょうか?私達ヒト族の価値観に疎くて、そこが決まらなかったの・・・」
「俺もわかんねー・・・魔石は?魔石は作れないの?」
「あの方達は肥料が一番だ!って言うのですけれど・・・魔石ですか?」
木の魔物にしたら肥料が宝物なのかもしれないが、冒険者で肥料を貰って喜ぶ人は少ないだろう・・・
メイサが説明するとエルダートレントとドライアドは、納得してくれたようで
「おう!魔石か?俺は土と水、こいつは水と土を作れるぞぅ?」
「作れるわよね、あなた!?
「魔石って高いみたいだからいいんじゃねーか?」
「確かに・・・手間はかかりますが、魔素的には少なく済みますわね!」
「ならこれから、作らねーとダメだな!」
「がんばりましょうね、あなた!」
「あと踏破コインだな!」
「コインだとぅ??」
「コインですって・・・あなた」
「説明が難しいな・・・あ!ちょっと待ってて」
叡斗は京平の所へ転移し事情を説明し、勇者一向のマジックバッグから踏破コインを1つ受け取り再び転移で戻る、メイサも含めて3人に見せて、踏破コインのルールを説明する
「おうおう!これでいいのかよぅ??」
ポンッ!木が描かれた2個に分かれたコインが地面に落ちる
<トレントの木 踏破コイン 2/2>
トレントの木を踏破すると貰えるコイン
「完璧だ!じゃあこれ持って、踏破ボーナスに魔石が出たって報告するから、しばらくすりゃ、ヒトが来ると思うぞ!」
「おうおうおう!本当にありがてぇじゃねえかよぅ!!」
「ヒトが・・・ヒトが来るのね、あなた!」
ドリア-ドが涙ぐみながら話す、エルダートレントは表情がわからない。
「それではお二方とも精進なさって下さいね!」
「おうおう!また遊びにこいよぅ!!」
「そうよ!待ってるわ!ね、あなた?」
「それじゃダンジョン経営がんばれよ!」
手を振りながらメイサとダンジョンの入口へ転移する
「おぉ・・・」
「これは迷いようが御座いませんわね・・・」
鬱蒼としていたダンジョンの大木の周りの木がなくっており、ダンジョンの周りは開けて大木がよく目立ち、ダンジョンの入口であるアーチの正面には、木が枝でアーチを描くように、1,5m幅の道が出来ている。
「と・・・とりあえず確認がてら帰ってみよっか?」
「そ・・・そうですわね!」
2人で並んで歩くが、魔物も出ず1時間で森の外に出る。
「この道だと1時間か・・・」
「行きもなんだかんだ迷ってましたのね・・・」
ギルドに戻り、カウフマンの部屋に行く。
「どうでしたか?」
「踏破しましたよ!もうオーバーフローはしないはずです!」
「おぉ!さすがはSランクですな!」
「これが俺達のカードとコインね!」
「すぐに手続きさせます!」
カウフマンが部屋を出て行く
「さて、ダンジョンの説明はメイサに任せるよ?」
「お任せください、バッチリですわ!」
1分もせずにカウフマンが戻ってきて
「そういえば踏破ボーナスは・・・」
「ここからは私が、これですわ」
「これは!風の魔石ですか!???」
冷静なカウフマンが狼狽している
「最下層にはトレントの魔族がおりまして、久々の踏破者だからサービスだ!いつも一個だぞ?っと仰って2個下さいましたわ」
「2個もですか!!??これはうちで買取させて頂いても?」
「お値段次第ですわ。」
メイサはそう言って、土の魔石も取り出す
カウフマンは少しの間思議をして
「2個で金貨300枚で如何でしょうか?」
叡斗とメイサが笑顔で頷きあい
「お売りいたしますわ!」
「ありがとうございます!」
「あとその魔族はお話が分かる方でして、ダンジョンまでの道を作って下さったので簡単にいく事が出来ますわ!」
「なんと!?では魔石がこれからも手に入るかも知れないわけですね!?」
「そうですわね。」
「中の構造はどうなってましたか?」
「全15階層で上層はトレントや小型の虫が住まう森林ダンジョンで、下層は木の中のような暗い、部屋ダンジョンでドリアードやギガマンティスといった大型の虫の魔物が出現致しましたわ」
カウフマンが驚く
「ギガマンティスだと!?Aでも上位ランクじゃないか!?」
ギガマンティスは鎌を伸ばしたら3m近くになる蟷螂だ、メイサに一瞬で石化されたが。
「あと下層にはモンスターハウスも何箇所かあってクイーンアントが統率するソルジャーアントが群れで出たりしましたわ。」
「なるほど・・・魔石は難しそうですね・・・で?その素材の買取もこちらでさせていただけますか?」
「是非お願い致しますわ!」
「成功報酬もそちらに上乗せでお支払いでいいですよね?」
ここからは俺の出番とばかりに叡斗がソファから身を乗り出す
「あ!成功報酬なんですがいりません!」
「え?」
「勘違いしないで下さいね!払って貰いますよ?」
「どういう事でしょう?」
「俺は召喚人なんですけど、召喚主がヨハンという神なんですよ。」
「はぁ・・・」
「その神が宣われたのですよ、困ってる人がいれば助けよ、そのための力は授けた!っと」
「なるほど」
「なので、俺達の成功報酬は仕事が出来なくて困っている養蜂家への援助に、そして余ったら孤児院など、困ってる人へ配って欲しいんです!」
「私達に任せてよろしいので?」
「ギルドを信用します!それに俺が配ると時間がかかりすぎる、それなら誰かに任せて俺は旅を続けたいんです。あ、手数料は抜いて頂いて構いませんよ!」
カウフマンは何度も頷き
「私はヨハン様という神を知りませんが、神ヨハンもエイトさんも素晴らしいと思います!是非協力させて頂きますよ!」
「ありがとうございます!よろしくおねがいします!」
カウフマンと叡斗が熱く握手をする
これは勿論、叡斗と京平が相談して決めた、ヨハン信仰値稼ぎの手段の一つである。
ヨハンが宣ったなどと言っているが、ヨハンは一切言っていない。
「では成功報酬はそのように致します、では練習場で素材を拝見させて頂きます。」
3人で練習場へ向かい素材を見せる。
30分程待ち
「それでは
ソルジャーアントの牙×29
クイーンアントの羽×1
クイーンアントの殻×1
コックローチGの殻×15
ギガマンティスの鎌×3
ロックビートルの殻×5
蜘蛛の糸×36
蜘蛛の毒×36
風の魔石と土の魔石
以上で金貨342枚と銀貨96枚・・・おまけして金貨343枚で如何でしょう?」
トレントの枝とエルダートレントの枝もあるのだが、魔導具などに使えるとメイサが言っていたので手元に残している。
「お願いします!」
「では代金は受付のマリーからお願いします、あとこちらギルドカードの返却です。」
「ギルドマスター直々に痛み入ります!」
「叡斗さんは鉄のままです、メイサさんはEランクです!」
「私もうEですの?」
「すみません・・・一度に2段階までしか上げられませんので。」
「いえ、私はランクは気にしてませんので問題無いですわ!」
「ちなみに塩漬けの案件とかはないですよね?」
「今の所はないので大丈夫ですよ!」
「わかりました!カウフマンさんありがとうございました!」
受付に行き、桃色ショートボブのマリーに声をかける
「マリーって君の事だよね?」
「はははははいぃ!」
カウンターの奥で立って気をつけをするマリー
「そんな畏まらないいいよ。買取代金もらいに来たよ!」
「こちらです!」
重そうにカウンターの上に皮袋を置くマリー
「どうも毎度!」
皮袋をマジックバッグに仕舞う
「あの!確認されなくていいんですか?」
「いいよ!ギルドを信用してるから!」
それに人が見てる中、お金を数えるのは趣味じゃない。
「じゃあまた来るよ!」
「はい!お待ちいたしておりますっ!!」
90度のお辞儀で見送ってくれるマリー・・・そんな怯えさせるような事したかな?っと不思議に思う叡斗であった。
ギルドを出ると
「待ちなっ!」
「へいへい!お2人さん手なんか繋いでお熱いねぇ!へへへ」
わかりやすくチンピラ達に絡まれ、いや囲まれた。
「なんだ?」
「大人しく付いて来な!」
そう言って囲ったまま歩き出すので、めんどくさいけど連れて行かれた先にいる人物はわかってるので付いて行く。
あいつ以外に俺達を恨むヤツは身に覚えがない。
裏道に入り一軒の倉庫に連れて行かれる
「兄貴!連れてきました!」
「ごくろーさん!」
現れたのは、髭もじゃのおっさんのカイジンだ周りを見ると手下は6人か
「やっぱりお前か。今なら何も無かったことにしてやるから、帰っていいか?」
「お前馬鹿か?逃げられる訳ねぇだろ!」
「逃げる?帰るって言ってるのに言葉が通じないのか?」
「フフフ、喧嘩が弱い上に頭も弱くてらっしゃるなんて可哀想な方ですわね。」
「くっ!き、キサマァァァァ!」
「兄貴!こいつ殺ったら、女は俺らが好きにしていいんすよね??」
「あぁ!こいつさえ、殺せればいい!奴隷は好きにしろ!」
メイサと叡斗は溜息を吐く
「なぁ?召喚人だからこの世界の法律に疎くてわかんないだけど、こんな場合でもお前らを殺したら俺達は罰せられるのか?」
「がっはっはっはっ!その心配はしなくていいぜ!お前はここで死ぬんだからなっ!」
カイジンが刃渡り80cmくらいの青竜刀に似た曲刀で叡斗に切りかかる、が遅すぎる・・・腰から剣を抜刀し、そのままの勢いに本気の力で曲刀に向かって振りぬく。
ガィンッ!カランカラン
カイジンの剣が根元で折れ地面に刃が落ちる、カイジンはそのまま折れた剣を振り抜き、剣の重さが急に変わったからかバランスを崩し、前のめりになり転ぶ。
叡斗はカイジンの首元に剣を突きつけ
「なぁ?この場合お前らを殺したら俺は罰せられるのか?」
「なっ・・・!」
カイジンは目を見開き茫然自失となり、子分達は悲鳴を上げながら逃げるが、メイサに腹パンをされ、次々と地面に伏して行く。
「おい!カイジン!聞いてるか!?」
「助けてくれぇ!すまなかったぁ!」
カイジンが土下座をして命乞いをしてくる
「メイサどうする?」
「うーん・・・では今度、私達に刃向かったら死ぬ呪いをお掛けしますか?」
「それいいね!それで行こう!子分達にもいける?」
「今日の夜の補充は激しくなりますわよ?」
「・・・こいつらを無罪放免よりはマシだ!」
「畏まりました」
ブツブツと黒いオーラを出しながら呪言を唱えるメイサ、黒いオーラがカイジンと子分の所へ移動し体の中に入って行く。
「完了ですわ!」
「ありがと!お疲れ様!おいカイジン!」
「ひっひぃぃぃぃ!」
「俺達の話は聞いてたな?」
「はっ!はい!逆らっては駄目な存在を知らなかった無知な私をお許し頂きありがとうございました!」
俺は閃く!
「あぁ!俺が信仰する神ヨハンは、自分の過ちに気付ける、知恵ある隣人ならば許し仲良くせよ、と説いてるからな!神ヨハンに感謝しろよ!」
地球時代のなんちゃって宗教知識から、それっぽい言葉を集めてみた、もしこいつが広めてくれたらラッキー程度の思いつきだが、何もやらないよりはマシだろう!
「はい!神ヨハン様に感謝して心を入れ替えがんばります!」
「よし!ならおっさん!俺はもう行ってもいいか?」
「私は22年間の生で始めての信心を得ました!神ヨハンを信仰致します!」
「お前22かよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
放心した叡斗を引き摺って倉庫を後にするメイサ
倉庫を出て裏路地に叡斗を座らせて
「ダーリン!しっかりなさい!」
メイサの往復ビンタが飛ぶ
「メイサ?あれ22だってよ?なら俺はもってひどいのか?自分で美化して自分の事を見てしまっているのか?」
生気の無い目で語りかける叡斗
「大丈夫ですわ!ダーリンは男前ですわ!」
尚も往復ビンタは飛ぶ
「メイサァ・・・俺はおっさん・・・おっさ痛い・・・痛っ!痛い!!!メイサ痛い!」
「正気に戻りましたか?」
「はい・・・痛い・・・」
「ヒールをお使いなさい!」
「はい・・・」
自分にエクストラヒールをかけて顔の腫れを直す叡斗
「では宿の部屋を取って、初日に言ったお店ご飯に致しましょう?」
色々あって、昼過ぎにダンジョンを出たはずなのに、もう日が暮れかけている
「そうだな!2人っきりでゆっくりしよう!」
「そうですわね!蜂蜜酒を飲みたいですわね!」
「あんまり飲みすぎないようにね?」
「また私を寝かして胸を揉めますのに?」
自分で言って恥かしそうに体を捻り胸を遠ざけるメイサ
「控える気ねぇのかよ!!」
「もしもの時は介抱してくださりますわよね?」
羞恥心よりも酒を選ぶ残念娘メイサであった。
今日もメイサの酒に付き合うのか・・・夜は長くなりそうだ。




