~26話~Sランク依頼とエルダートレント
「師匠、全然魔力が入らないんですけど?」
「これは・・・」
「どうやって入れるんですかぁ?」
ターニャ・マリア・ライラにせがまれて魔晶石を渡し、3人は俺の真似をしているが、ターニャが辛うじて模様が出ているだけで、マリアとライラの魔晶石は透明なままだ。
ベックが三人を見て魔法が使えるからって出来る訳じゃねぇんだな!とリュート二人でにこやかに見ている。
「ですから、申したでしょう?『魔力操作』スキルを獲得なさらないと無理ですわよ?」
メイサが呆れた様に言う
「メイサ!どうだ?」
メイサに膝枕をしてもらいながら魔石を作っていた、叡斗がメイサに向かって両手を開いて伸ばす
「おめでとうダーリン!両方とも魔石になってますわ!」
「よし!」
「カオリンに着くまではこれを続ければよろしいと思いますわ!」
そう言ってメイサは新しい魔晶石を叡斗に渡す
「へい!」
「あなた方は『魔力操作』スキル獲得からですわ!体の中の魔素の存在を認識なさい!」
「師匠すごい・・・」
「認識ですか・・・」
「エイトさんに膝枕ぁ・・・」
3人は沈んだ表情で、前に向き直り魔晶石を握り締める。
「魔素切れになるまでされると、よろしいですわ!切れる直前が一番わかりやすいですから、あと魔素切れを起こすと、最大魔素量が上がるので一石二鳥ですわよ?」
ターニャが目を輝かして振り向く
「ただ、魔素切れを起こした護衛が、冒険者としての矜持を保てるのであればですが!」
あ、ターニャの目がメイサに一刀両断されて、死んだ
しばらく馬車に揺られると
「兄貴!カオリンが見えましたぜ!」
「やっとか!?」
叡斗が窓から顔だして前方を見る
街は、メグミンと同じように高い壁に囲まれており、壁の上一面に木の葉っぱであろう緑が広がっている
「でかい木?があるのか?緑色の街だな!」
「街の中心にダンジョンの木があるんですよぅ!」
「街にダンジョンがあるのか?」
「伝承ではぁ、勇者ロンがエルダートレントを退治した時の死体が女神の祝福によってダンジョンになったらしいですよぅ!」
「楽しみだなぁ!」
「蜂蜜が特産でぇ!蜂蜜酒がおいしいんですよぅ!」
「ワインよりもおいしいのでしょうか?」
メイサが食いつく
「好みもありますけど、甘くてシュワシュワして私は好きですねぃ。」
「ダーリン楽しみですわね!」
メイサの鼻息が荒くなる・・・飲みすぎないでね?
街ではバッポが色々な手続きを買って出てくれたので、手持ち無沙汰になるくらいに初日は快適に過ごす事が出来た。
翌朝、みんなで朝食を食べていると
「エイト!この街はどれくらい滞在する予定なんだ?」
ベックが質問してくる
「決めてない!ギルドに行って塩漬けになってる依頼があれば、長くなるかもな?」
「誰も受けないから塩漬けになってるんだぞ?そんなもん受けるのか?」
「俺の召喚主ヨハンは、困ってる人は助けろっていう教えだったみたいだから、困ってるんなら解決できる人間がするべきだろう?」
「エイトさんカッコいいですぅ!私も着い「エイト!俺達は4日ほどダンジョンに潜りたいんだがいいか?」
ライラが不吉な事を言おうとして、ベックが遮る、グッジョブベック!
「いいよ?何もなくても1週間はゆっくり観光するつもりだったし!」
「兄貴!俺もドラゴンアイズに着いて行ってもいいですか?」
「おぉ!行って来い行って来い!稼いで来い!」
バッポも行くと聞いて、メイサの機嫌が明らかにいい
朝食を食べ終え
「じゃあ4日後に会おう!」
「稼いでくるぜ!」
気合を入れて食堂を出る、ドラゴンアイズとバッポを手を振って見送る、叡斗、と手を繋いで手を振るメイサ・・・とメイサの逆隣で腕を組むライラ
「あれ?ライラ?」
「・・・・・・・・・」
遠くを見て無視するライラ
ベックが無言でやってきて、拳骨をされ首根っこを掴まれ、引き摺られて行く
「アイルビーバックですぅぅぅぅぅ」
メイサが満面の笑みで手を振り、拳骨された頭を押えながらライラが叫ぶ
「メ、メイサ行こうか!」
「はい!」
「冒険者ギルドって全部同じ形の建物なのかしら?」
メイサが言うように外観も中の配置もメグリンのギルドと一緒だった、違うとすれば、朝一で依頼書が張り出される板に群がる冒険者達の中でメイサを見た者が止まり、伝播し全員の視線がメイサに集中する。
メグリンでは有名になりすぎて、注目はされてもここまではなかった。
「とりあえず、忙しそうだし人がはけるまで待とうか?」
「そうですわね。」
叡斗とメイサは酒場の隅に座ろうと歩を進める
「おいおっさん!」
下卑た笑みを浮かべた、俺と同い年くらいの髭もじゃのおっさんが声をかけてくる
「何だ?」
「その奴隷はいくらだ?今夜貸してくれよ!」
周りから嘲笑が起こる
「奴隷じゃねぇよ、ほら仕事探しにいけよ?」
「なぁ姉ちゃん!こんなのより俺と来いよ!俺のがすげぇぜ?」
メイサは一瞥して言い放つ
「弱い男に興味ありませんの。」
男は顔を真っ赤にして
「このAランク冒険者のカイジン様を弱いだと!?」
「俺よりは弱いんじゃないか?わかったら仕事探しにいけよ!」
カイジンは叡斗の言葉に激昂して、殴りかかってくる。
『魔力操作』の特訓のおかげで『身体強化』スキルを以前よりも格段に使いこなした叡斗には、カイジンの動きがゆっくりと見える。
叡斗は自分の顔に向かって来る、カイジンの右ストレートを、左に半身して避け、カイジンの拳と肘を掴み、ストレートの勢いを利用しそのまま押し込み、関節を極めつつ床に縫い付ける。
合気道で言う所の一教である。
「まだやりたいか?」
「なんだとぉぉぉ!?」
ギルド内がどよめく
「何してるんですか!冒険者同士の喧嘩はご法度ですよ!」
桃色のショートボブヘアーの女の子が声と共に観衆の間から出てくる
「喧嘩なんて大そうなもんじゃないよ?ねぇ?」
「そうですわね、これを喧嘩と呼んでは恥かしいですわ!」
「グッッックソガァァッァァ!」
カイジンの関節を極めて床に縫いつけたまま、煽る叡斗とメイサ。
「と、とにかくカイジンさんを離してください!」
「わかった」
カイジンは解放されると、こちらを睨めつけギルドを出て行った。
「事情確認もありますので、ギルドマスターの所へお願いします!」
「あいつはいいのか?」
「カイジンさんは後日でないと、話にならないと思いますので・・・」
「そうか、なら行こうか!」
ギルド嬢の案内で部屋へ通されたが、バッケと同じ部屋だ。
中へ入るとスーツ姿の細身な白髪交じりの男が杖を突いて立っていた、が見た目通りとはとても思えない異様なオーラを放っている。
「どうも私、カオリン支部ギルドマスターのカウフマンと申します、こちらへお掛けください」
長机に対面して設置されている3人掛けのソファーを勧めてくるカウフマン
「どうも、俺はエイトです。」
「メイサと申します。」
「Sランクの勇者エイトさんとGランクの獣人メイサさんですね?」
「なんで俺達の事を?」
「バッケさんから連絡を頂きましてな。」
静かに笑いながらカウフマンが答える
「で?俺達に用があるのかな?喧嘩の話で呼ばれたんじゃないんだろ?」
「ホッホ!バッケさんの言うとおり面白い人だ。喧嘩はどうせカイジンが売ったのでしょう?穏便に済ませて頂いたようなので、何も処罰はありませんから、安心して下さい。」
「安心しましたよ、まぁあれで処罰があったら俺達は今後トラブルが恐くて冒険者ギルドに立ち寄れなくなる所ですがね?」
叡斗はニヤリと笑う
「これは手厳しい!」
「それで?本題は何ですか?」
「近くオーバーフローの兆候があるダンジョンがありまして」
「Sランカーじゃないと、解決できないレベルの?」
「はい、街の近くに花の森と言われる森の中にあるダンジョンなのですが・・・」
「何か問題が?」
「花の森は入口付近は飛び交うハニービーを利用した養蜂を営んでおるのですが、奥に進むと迷いの森へと変わるのですよ。」
「その迷いの森にダンジョンが?」
「はい、辿り着ける冒険者もおらず、ですが時折大量の体を持たぬ魔物が現れるもので、養蜂家達も避難せざるをえない状況なのですよ。」
「ちなみにそのダンジョンのランクは?」
「出てくる魔物を見る限りCかBランクのダンジョンと思われます、受けて頂けますかな?」
「報酬は?」
「金貨100枚です。」
叡斗とメイサは頷きあい
「受けよう!ダンジョンまではどれくらいかかる?」
「迷わなければ、南へ2時間程です。」
「ダンジョンが何階層とかはわからないですね?」
「木と虫の魔物が出る「迷いのダンジョン」としか・・・」
「虫!?」
叡斗の顔が引きつる
メイサが叡斗の手に自分の手を重ね
「大丈夫ですわ、私が。」
叡斗の顔に自信が戻り、メイサに向かって頷く
「ホッホ!頼もしいGランクですな。」
叡斗が立ち上がりメイサも続いて立ち上がる
「じゃあメイサ早速行ってみようか?」
「畏まりましたわ!」
続いてカウフマンが立ち上がり、会釈をしながら言う
「宜しくお願い致します。」
「ここが花の森・・・」
「キレイですわね・・・」
言葉を失う二人。
目の前には木と地面に色とりどりの花が咲き誇り、森全てが花に溢れている。
養蜂家達の花を踏み潰さないためにだろうか?森への入口が見える。
森へ足を踏み入れると、花の匂いが辺りに漂い、人には無害・・・とカウフマンが行ってたが本当か?とにかく30cmくらいの蜜蜂の魔物、ハニービーが飛び回っている。
「本当にオーバーフローが起こるダンジョンがあるのか?」
「平和ですわね」
2人で感知をしながら進むが、何も起こらない。
「もう迷いの森に入ってんのかな?」
「今の所迷ってはないはずですわよ?」
その時俺の感知に反応が
「メイサ、こっちに魔族っぽい反応があるよ?」
「では行ってみましょう。」
しばらく進むと巨大な大木があった
「でかい木だな・・・ここから反応があるけど?」
「エルダートレントですわね・・・あなた!起きてらっしゃる!?」
メイサが大声で木に呼びかける
木の幹の表面がグニャリと動き出す
「木が!木が動いたよメイサ!何これ!!」
「お?こんな所に人が?いや魔族かの?」
木に爺さんの顔が浮かび上がり話してくる。
「あなたがこの森の主でらっしゃいますの?」
「いかにも、この森を護っとる」
「ここにあるダンジョンがオーバーフローしてるそうだけど?」
「ワシの息子のダンジョンなんじゃが、そういえば嫁がヒトが来んと言っとったのぅ・・・それで魔物を放っとるんじゃろ。」
「寂しがりやか!??」
思わず叡斗が突っ込む
「それなら私達が、行って踏破してやれば気が済むのかしら?」
「それで、気が済むじゃろうて、任せていいかの?」
「承りましたわ!」
「なぁエルダートレントさん?」
「どうした?ヒトの子よ。」
「ここが迷いの森なのってあなたの力?」
「ワシの魔素によってこの森はワシのダンジョンみたいなものじゃからのぅ」
「ならそこの息子のダンジョンまでの道を作って上げたら?ヒトが来るんじゃない?」
「なんと!そのような解決策が!お主等との出会いは僥倖じゃったのぅ」
「今回は俺達が相手するから、ヒト族には宣伝しておくから道作っといてよ!」
「わかった、作っておくとしよう、ならばこれを持っていけ、そうすれば息子と話が出来るじゃろうから、この話しを伝えてほしんじゃ。」
そう言うと、ドスン!目の前に直径50cm、長さ2mの木が落ちてくる
「おわっ!」
「ワシの枝じゃ・・・これを見せれば話しができるじゃろて」
「枝?木そのものだろっ!」
「それじゃあ頼んだぞ、ヒトの子と同胞の番よ!」
「待って!!」
「なんじゃ?」
「息子のダンジョンってどこ?」
「森が教える、がんばってのぅ」
エルダートレントの顔が消え、元の大木に変わる。
「森が教えるってなんだよ・・・」
「ダーリン!」
メイサが叡斗を呼び、一本の木を指差す
「あの木、矢印?差してる?」
「そのように見えますわね。」
一本の木の枝葉が矢印のような形になって、森の奥を指している。
叡斗とメイサは、時折現れる、矢印の木の案内に沿って森を進むと、エルダートレントから20分程歩いた所で、さっきのエルダートレントに負けるとも劣らない大木が現れる。
「これもでかいな!これもエルダートレントか?」
「おそらくダンジョンですわ、ほらあそこから木の中に入れそうですわ」
木の根元を見ると、根が絡まりアーチのようになって木へと続いている。
「木のダンジョンか・・・虫は苦手なんだけどな。」
「フフ、ダーリンの特訓の成果をダーリンに教えたくてウズウズ致しますわね。」
「そんなに変わってるの?」
「多分驚くと思いますわよ?」
「楽しみだ!」
「ダーリン・・・今日ダンジョンでがんばるための魔素が欲しいな」
「え?今?しょうがないなぁ・・・」
ダンジョンの前でいちゃいちゃする恋人繋ぎのバカップル
「やった!魔素反応だ!!魔物放って宣伝したかいがあったなぅ!」
「よかったですね、あなた!」
「おうおうおうおう!歓迎しちゃうぜぃ!」
「魔物を配置しまくっちゃいましょうね、あなた!」
気合を入れる、バカップルがもう一組。




