~17話~バッポの転身
練習場に着くなり、バッポは背中から大剣を抜き、正眼の構えで怒鳴ってくる
「抜け!」
大剣は両刃で鍔も合わせると、俺の背と変わらないくらいの長さの剣だ、面と向かって構えられると、かなりの迫力がある
「練習だろ?真剣勝負はダメだろ?」
「うるせーよ!おっさん如き死なねーように手加減してやらぁ!」
そう言って、こちらへ構えたままにじり寄ってくる。
いくらこの世界が、地球に比べて命が軽いといっても、これで死人が出たら、身分の剥奪、いや捕まるなんて事もありうる。
逃げるのは簡単だけど、お尋ね者になったら、目的を果たすのが途端に難しくなるし、どうしたもんか・・・一時の感情で失敗したなぁ、と後悔する
「抜けよ!今更になって怖気付きやがったか!?」
ため息を吐いてから、剣を抜く
「構えろよ!ふざけてんのか!?」
剣を地面に突き刺して
「アースバインド!」
魔法を唱える
バッポの足が地面に沈む
「なっ!?」
ズボッ!肩まで地面に埋まるバッポ、首だけが地面から生えた状況で叫ぶ
「卑怯だぞっ!」
「真剣勝負だろ?卑怯も何もない!」
首をピトピトと剣の腹で触る
「っく!!・・・俺の負けだよぉ!チクショー!」
案外素直なやつだな、そう思いながら、魔法で土を柔らかくして、手を地面の中に突っ込み、両脇に手を差し込んで、抱き上げてやる、高い高いをこんなやつにする日がくるとは・・・
「なぁ今のはなんだ?魔法か?」
「『土魔法アースバインド』だが?」
「なっ!?アースバインドって土とか岩が体に纏わり付いてきて拘束する魔法じゃねーのかよ!??」
「大地に拘束してるからアースバインドだろ!」
「無茶苦茶な野郎だな!」
魔王城の修行中にこの魔法を使った時に、京平にも言われたな・・・でもこっちのイメージの方がしっくりくるせいか、効果は高い。
魔法なんて個性だから、これでいいのだ!
バッポは何も言わずに、練習用の武器を取ってきて
「おっさん・・・いやエイトだったな?俺も冷静じゃなかった、改めて練習をしてくれないか?」
そう言いながら、練習用の刃を潰した剣を渡してきた
「え・・・メンドイ」
「指名依頼だ!今日一日シゴいてやれ!」
「えっ!?」
振り向くとバッケが立っていた
「なんでバッケさんが!?」
「外を見たら、お前ら2人が見えてな!面白そうだから見学してたのよ!」
「めんどいんで、依頼拒否しまーす!」
「森の泉に野生動物が集まって、それ目当てに魔物が来てるんだよなぁー、街に近いしヤバイよなぁー」
「やりゃあいいんでしょ!?やりゃあ!バッポさっさとかかってこい!」
これが終わったら速攻で埋め立ててやる!そう決意して依頼を受ける。
日が暮れるまでバッポと打ち合いをしてカウンターて依頼完了の報告をする
「お疲れ様でしたエイトさん!」
「ありがとねシェリー、報告もカード渡したらいいの?」
「はい!お願いします!あの・・・バッポさんは?」
「練習場で疲れて寝てるよ」
ボコボコにしてはヒールを掛けを繰り返したから、最後は立ったまま気絶したから、その場に寝かして来た
「そ、そうですか。」
苦笑いをしながら、カードを受け取り、カウンターの下で作業をするシェリー
「はい!ではこちらカードのお返しと、成功報酬です!」
そう言って、カードと銅貨1枚をカウンターの上に置く
「銅貨1枚?」
「そうです・・・」
「ギルマスの依頼なのに?」
「・・・・・・」
あの泉に『神聖魔法』とか使って、泉を浄化しまくって、野生動物いっぱいにして魔物を大繁殖させよう、そうしてやろう。
宿に戻って、久々にステータスを確認しておく。
主な目的は明日必要になるであろうリュートの斥候スキルを確認しておきたい。
名前:田中 叡斗
種族:ヒト
性別:男
職業:勇者?
年齢:30
レベル:655
攻撃力:9999+
防御力:9999+
俊敏力:9999+
魔力 :9999+
≪装備≫
オリハルコン赤竜爪の剣 ワイバーン皮の外套 黒龍皮の胸当て 疾風のブーツ 蜘蛛糸の服 蜘蛛糸のズボン 幻影のネックレス チートピアス チートリング 状態異常無効ブレスレット 能力偽装ワッペン
≪スキル≫
剣術≪極≫ 元素の極み 想像魔法 創造魔法 空間魔法≪極≫ 錬金術≪極≫ 絶対防御 魔力吸収 鑑定≪極≫ 盗神の目≪詳細≫ 逃げ足
盗神の目
槍術≪9≫ 弓術≪8≫ 斧術≪8≫ 体術≪9≫ 盾術≪9≫ New!魔力撃≪4≫ 縮地 身体強化≪8≫ 生命感知≪極≫ 魔力感知≪極≫ 気配感知≪極≫ 危険感知≪8≫ 熱感知≪7≫ New!罠察知≪5≫ New!罠解除≪5≫ 暗視 up!視覚強化≪3≫ up!魔力操作≪9≫ 威圧≪8≫ 統率≪7≫ Up!光魔法≪7≫ 闇魔法≪9≫ New!呪魔法≪7≫ 神聖魔法≪極≫ 精霊魔法≪8≫ 竜魔法≪7≫ 詠唱省略 無詠唱 手加減 New!忍び足
よし!『罠察知』と『罠解除』とってるな!
レベルは1しか上がってないか・・・いや、逆に言えば魔素吸収増加指輪がなかったら、上がってないだろうから1も上がってるのか・・・次のダンジョンを取ったら女神側も動き出すだろうから真面目にがんばるかな!
てか呪魔法っていつ盗んだの!??コエーよ!
朝一番、日が昇ると共に街を出て、「ドラゴンの塔」に到着した。
メグミンから海沿いに南に行くだけなので、迷う事無くついた。
塔は真っ白で、同じく真っ白の12本くらいの太い円柱が規則的に並んで支えてる、12本って思ったのは正面から見える柱の数が6本だったからだ。
塔の入り口を塀で囲ってあるけど、「獣の洞窟」みたいな集落はない、稼ぎ場としてはおいしくないのかな?
受付を済ませて、入る。
中はとにかく白い、壁も床も天井も白い。
通路を進むと、見覚えのある石像を発見する。
「・・・バッポか?」
大剣で斬り付けている最中の無駄イケメンな石像を発見したので、気が進まないがエクストラヒールを掛ける。
「助かりました兄貴!」
「兄貴はやめろ!なんでここにいるんだ?」
なぜか昨日の打ち合いの途中から兄貴と言い出した。
「昨日目覚めた時にバッケさんに兄貴が今日からここを攻略するって聞いたんですよ!」
「聞いたのはわかった。なんでここにいるんだ?」
「いても経ってもいられなくって、来ちゃいました!」
「帰れ!」
「荷物持ちでも素材拾いでもしますんで、連れてって下さい!」
「帰れ!じゃあ俺は行くから気をつけて帰れよ!」
なんかいきなりキャラ変わりすぎだろ!っと思いながら、先を進む。
「ぬわぁ~あぁ~ん!!」
気の抜けた声が聞こえたので、来た道を戻るとバジリスクがいた。
とりあえず『簡易鑑定』
バジリスク レベル65
剣で適当に切りかかる、ピカッと石化光線を放ってくるが、無視だ!
光の粒子に変わった事を確認して、周りを見ると、間抜けな格好で転んだ石像があった。
「はぁ・・・エクストラヒール」
「助かりました兄貴!」
「このやり取りはエンドレスに続くのか?」
「すみません・・・兄貴の実戦の技を見たくて、つい・・・」
「つい、で石像になる人始めて見たけど!?」
「兄貴!連れてって下さい!いざとなったら帰還石があるんで、俺の心配はいらないんで!」
そう言って、腰の皮袋から、拳大の石を取り出す。
「なんだそれ?」
「魔力を通すと、ダンジョンの入り口に転移するアイテムっす!」
多分こいつ、何を言っても付いて来るんだろうなぁ・・・突っかかってきてもメンドクサイし、どうしようもねえな!
こめかみを押えて、深い溜息を吐く、
「じゃあ付いてこい!自分の身は自分で守れよ?死んでもしらんぞ!?」
バッポは眼を輝かせて
「はいっ!」
っと、背筋をピンと伸ばして、気をつけの姿勢で答える。
離れた所から張り付かれるよりはマシだと思いたい。
どうなる事かと思ったけど、腐ってもBランク冒険者だった、守られながらとは言え、手際よく魔物の足止め、ドロップアイテムの回収をするし。
「兄貴!5階からはリザードマンやラプターが出るようになりやすぜ!」
っと的確な情報を言うので、塔の攻略は順調に進んで行った。
5階に到着すると、バッポの言うとおり、リザードマンがいた
「リザードマンは単体ならC級なんですが、集団になると連携するんで、B級になりやす!気をつけてください!」
「なるほど」
ちなみにC級とはCランク冒険者が1対1でなんとか倒せるレベルの魔物ということらしい。
なんとかなので、連続して戦えば五体満足ではすまない可能性の方が高い。
『簡易鑑定』
リザードマン レベル65
俺と同じくらいの背の二足歩行のトカゲだ。右手に三日月刀って言うのかな?刃渡り60cmくらいの曲刀を持っている。
「ギャアァァァァァァァッ!」
『簡易鑑定』が気に入らなかったのか、叫ぶリザードマン
「やばいですよ!仲間呼びましたよ!」
バッポの言うとおり、に呼んだようだ。
幅5mくらいの通路に6体のリザードマンが並び、こっちへ刀を振り上げ走り出す。
「やばいっす!やばいっす!」
「スラッシュ!」
俺は剣を横薙ぎに振るいながら、唱える。
斬撃が飛んでいき、6体のリザードマンが上下に分かれて地面に倒れる。
「やばいっす!今のやばいっす!なんすか今の?」
「『風魔法』のエアーカッターだよ?」
「エアーカッターにあんな威力あるわけないじゃないですか!!」
剣で斬る、延長のイメージで放ったら、効果が激増したのだ。
「俺は俺の仕事をした、お前の仕事は?」
「はいー!」
そう言ってリザードマンのドロップアイテムを回収するバッポ
思った以上にバッポは働いてくれるおかげで、順調に進めて、現在9階層、18時。
「よし!定時だ!バッポ野営できる場所はどこかあるか?」
「定時すか?」
「定時は定時だ!細かいことは気にすんな!」
「はい!あそこの小部屋なんかいいんじゃないですか?」
小部屋に行ってみるとラプターの巣だった。
ラプターは、全長1.5mくらいの小さめの肉食恐竜だった。
『簡易鑑定』
ラプター レベル60
お!レベル低めだな!だけど『生命感知』には26匹反応がある。
10m四方くらい?の部屋はラプターでいっぱいだよ・・・
「っち!残業かよ!スラッシュ!!」
「残業ってなんですか!???」
「残業は残業だよっ!スラッシュスラッシュ!」
剣を抜刀ついでに、横薙ぎにスラッシュを放ち、続けざまに動いているものに向けて右上段から袈裟斬りにスラッシュ、さらにまだ動いているのが、目の端に移ったので、もう一度左から右に横薙ぎにスラッシュを放つ。
よし!感知にも反応なしだ!
「さすが兄貴!あんな数Bランクじゃ処理できませんぜ!?」
「ここで野営しても大丈夫なのか?」
「へい!すぐに準備しやす!」
「いやいい!お前はドロップアイテムを回収してくれ!」
バッポに指示をして俺はカマドを作り、鍋とフライパンをセットする。
今日は、ライラと買ったワイルドボアの味噌焼き・・・の予定だったが、味噌
に漬け込んでるのが一人前しかない・・・まぁいっか!
味噌漬けにした肉と新たに切った肉を混ぜて焼く。
スープは適当にビッグホーンの肉とジャガイモとキャベツを煮込んでコンソメの素を放り込む。
臨機応変!これぞ男料理なのだ!
バッポはダンジョンでこんな美味い飯が!っと泣きながら食べてくれた。
よしよし!俺も大好きな豚の味噌焼きを食べられて満足だ!
地球の豚よりも少し固かったけど、脂はさっぱりとして食べやすかった。
「兄貴!俺見張りしますんで、寝てくださいね!」
俺はそう言われたので、ニヤッとしながら、円形の袋を投げると、テントが現れる
「なんすか!?それ!?」
<ワンタッチテント>
魔素を流す事によって、展開・収納ができるテント。
ちなみに『空間魔法』を駆使して、中は12畳だ!
「テントだ!中は入れ!見張りは大丈夫だから寝るぞ!」
そう言って警報機をセットして寝袋に入ると、バッポが入ってくる前に意識が遠のく、明日踏破できるといいな。
バッポさんは人見知りがすごくて、心を許したら、いい人なんです。




