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元傭兵のおっさん。追放された悪役令嬢に転生したので、もっと悪逆非道に生きてみた~物語は語られない所でも動いている~  作者: ななよん
一章 成長編

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第五話 掃討

※毎朝4:00頃に投稿中!

挿絵(By みてみん)


 死体を岸へ引き上げ、金と短剣を抜いた。


 水浴びに()いてきた甲斐があったな。財布まで持ってきてくれた。

 これなら明日は宿屋で晩飯と朝食をつけて泊まれそうだ。


 服は、低い木の枝にかけ直す。


 そこへ至る道に、(つる)(くく)(わな)を作った。手間はかからない。


 殺すための罠じゃない。


(ちゃんと気が付いてくれよ)


 罠が1つあると分かれば、人は足元を見る。敵が居ると警戒し探ってくれればいいんだ。


 裸のまま罠から離れた暗がりに座って、野営地を確認する。


 しばらくして、火のそばで人が動いた。1人が立ち上がり、こちらへ歩いてくる。



 男は水場に向かう途中で俺の服を見つけ近づいていく。


 目立つ物に、人は寄っていくものだ。


 やがて、動きが止まった。


 罠を見つけたらしい。


 そこから先、足が遅くなった。一歩ごとに下を見ている。


 よし、いい子だ。そのまま周囲を確認し裸の俺を探してくれ。



 俺は野営地へ回り込んだ。



             ◆



 火のそばに残っているのは2人。長男と、護衛が1人。


 俺は明かりの届かないところで足を止めた。


「……どなたか」


 声を(かす)れさせる。


 護衛が立ち上がった。


「どうした」


「襲われましたわ、森で……あの方が」


「なに」


「わたくし、その……着るものが」


 護衛が周囲を見回した。森を。暗がりを。


(こちらが良く見えてない様だな)


 男が布を掴んで、火のそばを離れた。


 明るい場所から、暗い場所へ。


 人間の目は暗闇に適していない。明るい焚き火を見ていた彼には、少しの間目を慣らす時間が必要になる。


 どこの軍でも新兵に教える事だ。こんな基礎的な事を忘れる程油断するとは情けない。


 俺の目は、とうに慣れている。


 男が手を伸ばした。


「これを――」


 短剣を横にして喉に入れそのまま横に払う。


 ぐぷっと、叫び声にもならない音が漏れる。


 一突きからの横払い。これで声は出せない。



             ◆



 残るは2人。


 火のそばで、男は(ひざ)を抱えるようにして座っていた。


 部下が誰も戻らない。落ち着かない様子だった。


 俺は明かりの中へ歩いていった。


 裸のまま。


 男が顔を上げて、口を開けた。


「……お待たせしましたわ」


 言いかけた何かが、全部消えたのが分かった。



 男の手を取って、テントへ引く。


 男は鼻の下を伸ばし笑って、先に身を屈めた。色男も台無しのスケベ顔というやつだ。


 入口をくぐる。背が丸まる。首の後ろが空く。


 油断し過ぎだ貴族の坊や。


 後頭部へ突き刺し、捻る。


 そのまま中へ押し込んで、垂れ幕を下ろした。


 念願のテントだ。良かったな。独りで使っていいぞ?



             ◆



 焚火を消して、テントの脇に立った。帰って来た護衛は必ず護衛対象を確認するだろうからだ。


 最後の一人が戻ってくるのを待つ。


 しばらくして、森から足音が戻ってきた。


 男は野営地に入るなり、足を止めた。


 暗がりに、仲間が転がっている。


 仲間の息が無い事を確認し腰の剣を抜いたのが見えた。


(他の二人より動きが悪いな)


 男はテントへ走った。垂れ幕を跳ね上げる。そこには無惨にも殺された彼の主人がいる。


 こう言う時脳内では判断が揺れる。敵は既に自分の仲間を数人仕留めている。

 戦うか、逃げるか。8割は逃げようとする。


 逃げようと決意し身体が起き上がった瞬間、剣を横に寝かせて、肩甲骨(けんこうこつ)の下から、斜め上へ体重を乗せて刺しきる。


 (あばら)の間を抜けて、その中まで深く届く。


 男が膝をついた。


 それで終わりだ。


 最後まで主人思いの、良い護衛だったな。



             ◆



 水場へ戻って、体についた血を洗い流す。


 男たちの荷から、目立たない服を選んで鞄につめる。


 全ての遺体から金を抜き、貴金属も剥ぎ取った。物取りの仕業に見せる為には、そうしておかねばならない。

 だが持ち歩けば証拠になる。剣も鎧も紋が入っているし、貴金属も特徴のある物は出所が辿れる。

 金以外は全部、川に沈めた。


 馬は4頭。


 一番いい馬の尻を叩いて、逃がした。

 あんな目立つ馬に女が1人で乗っていれば、誰でも覚えてしまう。


 残りも逃がして、一番地味な1頭だけ繋いだ。クロスボウは幸い紋が入っていなかったから布で巻いて持って行く事にする。



 携帯食料、金、クロスボウ、矢、着替え、目立たない馬を一頭。今回の戦利品はこんな所だ。


 現場はそのままにした。手を加えれば、入れた分だけ嘘が出るし情報を与えてしまう。


 可能なら自分も死んだように工作したいが、色々と道具が足りないから我慢だ。


 (くら)に乗った。


 懐も温まったし、足も手に入れた。


 4人分の命で服と馬と路銀。悪くない取引だ。向こうがどう思っているかは知らんがね。


 馬を歩かせながら、胸の奥を探ってみた。


 昨夜の熱は、まだそこにあった。


 4人殺しても、1つも減っていない。


 まあ、そうだろうな。あの男たちはヴィオレッタにとって目的の相手ではない。


 昼間の宿題に、答えが出た気がした。


 この憎悪を打ち消すには、王国というシステムを破壊するくらいしなきゃダメだろう。


 王子を殺せば済むとかそういう話じゃない。あの女を潰しても、次の女が出てくるだけだ。

 そういう風に出来上がっている国なんだから。


 今やるべき事は、変わらない。


 南の隣国へ行き自由都市を目指す。仕事をみつけ金を稼ぐ。体を鍛える。人脈を得る。


 彼女の復讐に手を貸すのは、その後だ。


5話・了

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