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元傭兵のおっさん。追放された悪役令嬢に転生したので、もっと悪逆非道に生きてみた~物語は語られない所でも動いている~  作者: ななよん
第2章 遠征編

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第四十一話 合流

※毎朝4:00頃に投稿中!

挿絵(By みてみん)

 翌日。


 昨日の無茶が祟って多少頭は重かったが、目眩はもうない。朝飯も普通に食えたし、歩いていて壁にぶつかることもない。


 俺はガイル、トッド、シフォンの三人と一緒にステラの屋敷を訪れていた。


 目的は二つ。


 俺が捕まえた射手から何が聞き出せたのか、その情報共有を受けること。それと、ステラが遊撃部隊へ出す四人との合流だ。


             ◆


「いらっしゃい、ヴィヴィ。待ってたわ」


 通された部屋では、ステラが既に茶を用意していた。


 菓子まである。


 予想通りだ。


「まず、射手の話を聞いていい?」


「来て早々それなの?」


「そのために来たんでしょう?」


「もう少しこう……まあ、いいわ」


 ステラは苦笑しながら、俺たちに椅子を勧めた。


 俺は遠慮なく座り、いくつか種類のある菓子を一つずつ取る。


「結論から言えば、あの男を生かしておいてくれて助かったわ。本人が知っていたことは大したことなかったけど、そこから随分と調べが進んだの」


「何が分かったの?」


「あの連中がどうやって集められたのか。どこで合流したのか。誰から指示を受けて、報酬がどう流れてきたのか。何人も間に挟んでるけど、辿っていった先に王国と繋がりのある人間も出てきたわ」


「王国が直接命令した証拠は?」


「そこまではまだ。でも、無関係とは考えにくいわね」


 まあ、そう簡単に尻尾を掴ませるようなら、わざわざ何人も間に挟んだりしないだろう。


 ガイルが腕を組んだ。


「七都市の中にも協力者がいるのか?」


「その可能性は高いと思ってる。だから、あなた達にも探ってもらうことになるでしょうね」


 グランティアから聞いた話と同じだ。


 表向きの依頼をこなしながら、七都市に入り込んだ王国の草を探す。


「それで、ドランザートの方は?」


 俺が尋ねると、ステラの顔から笑みが消えた。


「それが何も出ないのよ」


「何も?」


「私を襲った連中は、一人捕まえたこともあって突破口があったでしょう? でも、ドランザートを襲った連中は、どこから来たのかすら分からないの」


 ステラは一度言葉を切った。


「あれだけの人数が動いたのよ。どこかに泊まるでしょうし、食料も必要になる。武器だって用意しなきゃならない。それなのに、襲撃前にどこで何をしていたのか、何も出て来ないの」


 それは妙だ。


 人数が増えれば、それだけ痕跡も増える。


 全員が飲まず食わずで、突然地面から生えてきたわけでもあるまい。


「ドランザートを狙ったのは、王国の別働隊なのか、まったく別の組織なのか。それとも……」


「それとも?」


「分からないわ。まだ情報が足りない」


 同じ時期に二人の議長が狙われた。


 だから自然に同じ奴らの仕業だと思っていたが、そこから疑った方がいいのかもしれない。


「私も気になってるのよ。それでね」


 ステラが机の端に置いてあった地図を広げた。


 七都市からミエリッキへ続く街道。その途中を指で叩く。


「あなた達は、これから通るわけでしょう?」


 ドランザートが議長を務める都市、ラディアだった。


「支援物資を運ぶからな」


 ガイルが答えた。


「荷馬車も多い。別の道を使う理由がない」


「だったら、少し探ってきてくれない?」


「私たちが?」


「ええ。調査のためだけに人を送れば目立つけど、あなた達はミエリッキへ行く途中で立ち寄るだけだもの」


 確かに都合はいい。


 どうせ通る場所なら、一日二日使ったところで大した違いはない。


「ドランザートにも話を聞いてみて。向こうでも調べているはずだから、こっちでは分からなかったことを掴んでいるかもしれないわ」


「会わせてもらえるの?」


「そのために、これを書くのよ」


 ステラは紙を取り出すと、その場で紹介状を書き始めた。


「これを見せれば、ドランザートにも話は通るわ。私から頼んだことも書いておくから、向こうで集めた情報も見せてもらえると思う」


 書き終えた紙を封筒へ入れ、封蝋を押して俺へ差し出す。


「ただし、今回のあなた達の仕事はミエリッキへの物資輸送よ。何か分かれば儲けもの、そのくらいでいいから」


「分かってるわよ」


「ならいいけど」


 なぜか疑わしそうな目をされた。


             ◆


「さて、こっちの話はこれくらいにして、残りの四人を紹介するわね」


 ステラが人を呼ばせると、ほどなくして四人の冒険者が部屋へ入ってきた。


 真っ先に目についたのは、先頭の男――ではない。


 背負っているウォーハンマーだった。


 でかい。


 長い柄の先に、分厚い鉄塊が付いている。


 巨人族のパパからもらったのか?


 そう感じさせる程、デカい。


 俺より頭二つは高い。腕も肩も太く、手もでかい。


 ……小さな巨人族だな。


「バルガスだ」


 それだけ言って黙った。


「それだけ?」


「他は見れば分かる」


 ステラが呆れている。


「こんなのだけど腕は確かよ。この四人じゃ一番の前衛ね」


「こんなのって何だ」


 バルガスは文句を言いながら、こちらを順番に見ていく。


 最後に俺を見て止まった。


「お前がヴィヴィか?」


「そうよ」


「思ってたより細いな」


「あなたが太いんじゃない?」


「太くねぇ。でけぇんだ」


「何が違うのよ」


「全然違ぇよ」


 面倒くさい奴だ。


 だが、あのウォーハンマーを背負ったまま立っていても身体が後ろへ引かれていない。足腰もしっかりしている。


 見掛け倒しではなさそうだ。


 続いて前に出た――というより、飛んできたのは小さなピクシーだった。


 掌に乗りそうな身体に、背中には透き通った二対の羽。


 小さい。


 そして、可愛い。


『リリ! よろしくね!』


「……ん?」


 声は聞こえた。


 だが、目の前のピクシーは口を動かしていない。


『《妖精の声》だよ。喋らなくてもお話できるの!』


「へえ」


 面白い。


 俺の周りをくるくると飛んでいたリリは、何を思ったのか、そのまま肩へ降りてきた。


『ここにする!』


「何を?」


『リリの場所!』


「……まあ、いいけど」


 軽いし邪魔にもならない。


 肩の上で満足そうにしているリリを見ていると、次にエルフの女が前へ出てきた。


「フィ、フィナです。精霊使いをしています。よろしくお願いします」


 随分と緊張している。


 俺と目が合った途端、肩がびくりと跳ねた。


「……何?」


「い、いえっ、何でもありません!」


 なぜ怯える。


 ステラが苦笑する。


「フィナはこう見えて腕のいい精霊使いよ。森や生命に関わる精霊術を得意としてるの。それと、治癒魔法も使えるわ」


「回復魔法を?」


「は、はい。大怪我になると難しいですけど……ある程度なら」


「そりゃ助かるな」


 ガイルが声を掛ける。


 フィナがそちらを見た。


 さっきまでの怯えた顔のまま、ガイルの顔をじっと見る。


 少し間があった。


「……軽薄そうですね」


「は?」


「よろしくお願いします」


「おい、待て」


 さっきまでの怯え方はどこへ行った。


 ガイルが困惑している間に、フィナはもうそちらを見ていなかった。


 代わりに俺の肩にいるリリへ視線を向けている。


 ちょっと嬉しそうだ。


『フィナ!』


「リリ……今日も可愛いですね」


『でしょー!』


 最後に前へ出てきたのは、中年の男だった。


「オルドだ。コックをやってる」


「……コック?」


「ああ」


 オルドは当然のように頷いた。


「たとえダンジョンの奥地でも、美味い飯を食わせてやる」


 ほう。


 それは頼もしい。


「冒険者なんでしょう?」


「もちろんだ。食材の調達から解体まで自分でやる。戦えなきゃ話にならん」


「なるほどね」


 旅先でまともな飯が食える。


 それだけで体の調子も随分違う。


 オルドは俺の肩へ目を向けた。


「リリ。そこがいいのか?」


『いいでしょー』


「別に構わんが、飯の時は降りろよ。お前はこぼすからな」


『はーい!』


 返事だけはいい。


 これで四人。


 バルガス、リリ、フィナ、オルド。


「出発までに、一度は全員で動きを確認しておくぞ」


 ガイルが言った。


「実戦になってから初めて合わせるなんて御免だからな」


 異論は出なかった。


 明日、訓練場を借りて簡単な連携を確認することが決まる。


 そこでバルガスが俺を見た。


「なら、ついでに俺と一度やらねぇか?」


「模擬戦?」


「ああ。一緒に前へ出るなら、お前がどんな戦い方するのか見ておきたい」


 なるほど。


 俺も同じことを考えていた。


 あの馬鹿でかいウォーハンマーを、こいつがどう扱うのかには興味がある。


「いいわよ」


「決まりだな」


 バルガスが笑った。


 俺もその背中のウォーハンマーを見る。


 まともに受ければ、さすがに痛いでは済まないだろう。


 バスタードソードで受けるのも御免だ。


 なかなかに興味深い戦いになりそうだ。


第41話・了

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