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元傭兵のおっさん。追放された悪役令嬢に転生したので、もっと悪逆非道に生きてみた~物語は語られない所でも動いている~  作者: ななよん
一章 成長編

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第三話 追手

※毎朝4:00頃に投稿中!

挿絵(By みてみん)


 朝早く、森を出る。情報を与えない意味では森の中を歩いた方が正しい。しかし、この身体ではスキルがあっても現状では宝の持ち腐れと言うやつだ。

どんな生き物が居るか分からない森の中を進むリスクの方が高い。


 そもそもこの足で道の無い藪を掻き分けて進めというのが無理な相談だ。



 街道はすぐに見つかった。(わだち)の跡がある。人の通う道だ。

舗装程ではないが踏み固められている分歩きやすい。


 日の位置を確かめて、南へ歩き出す。


 暫く進んだが休憩に良い村はなかった。畑もない。ただの街道がずっと続いている。


 歩くだけの時間は退屈だ。この時間を使ってヴィオレッタの記憶の整理をしていこうと思う。


 目的は二つ。


 一つ、昨夜の激しい憎悪の原因を洗い出す事。


 あんなものを毎晩食らっていたら安眠妨害が過ぎる。原因の分からない問題ほど厄介なものはない。


 二つ、ヴィオレッタの敵対関係の把握だ。


 追われる様な問題があるか、追って来るとしたら誰が来る可能性が高いか。どこに近付くべきでないか。それが分からないまま動くのは、地図を捨てて行軍するのと同じだ。


 歩きながら、ウィキペディアで調べる様に記憶を引き出していく。関連した内容を頭に思い浮かべようとすれば情報が出てくる。しかし、たまに的外れだったり、ヴィオレッタが知らない事は出てこない。


 彼女の生家はヴァレンシュタイン公爵家。武門の家系で戦う力を是とした武闘派だ。


 なるほど、それで剣術と馬術が乗っているのか。普通の令嬢に剣なんぞ握らせないだろうしな。


 武門の家に生まれて、剣術2。


 清々しいまでのサボりっぷりだ。俺が教官だったら泣いてるぞ。


 家が娘に求めていたのは、女性初の将軍だの剣豪だのという類らしい。


 親父さん、娘に何を期待してるんだ。これは親が悪い。


 だがヴィオレッタが磨いたのは歌と舞踏と語学だった。家の望みは綺麗に無視して、自分の望むスキルだけを伸ばしている。


 なかなか良い性格をしている。嫌いじゃない。


 婚約者は王子だ。記憶の温度からすると王子自体に興味はさして無かった様だが。


 そして断罪。


 問題はここからだ。罪状が薄っぺらい。

 不貞をやらかしたと言う事らしいが、相手の男は平民らしい。

 当然、そんな記憶はどこにも無い。でっち上げに他ならない訳だがそこは発言者の地位がモノを言う世界と言う事だ。


 並んでいる中身を見る限り、証拠らしい証拠が無い。あるのは証言と、その場の空気だけ。


 俺が書いた作戦報告書でも、もう少し体裁くらいは整えたぞ。


 公爵令嬢を、それも武門の家の娘を裁くには軽すぎるし証拠が弱過ぎる。


 もう一つ、政敵と呼べる女が居る。王子と親しくしていたらしい。


 ……なるほどな。


 筋書きは見えた。


 浮気をしたのは王子の方だ。放っておけば王家の恥になる。だから浮気をされた側を悪者に仕立てて処分した。それだけの話だ。


 自分の尻拭いに婚約者を差し出す。合理的ではある。反吐が出るがな。

 こんな奴が将来王様になった所で国が良くなるとは、到底思えない。

 不貞は地位と金で隠せても品性は隠せないからな。


 ヴィオレッタは良く言う悪役令嬢だった訳じゃない。そう書かれただけだ。


 まして政敵の女一人の言い分で公爵令嬢が落ちるものか。

 王家がこの話に乗らなければ、この筋書きは成立しない。


 殺さずに追放で済ませたのもそこだ。殺せば家が動く。格好だけ整えて放り出した。


 そして実家は庇わなかった。


 上から圧がかかっていたのか、望み通りにならなかった娘に興味が無かったのか。どちらでも結論は同じだ。あの家に帰る場所は無い。まあ、ヴィオレッタは生家の言う事を全く聞いてなかったしな。


 国外にも親戚は居るらしい。母方の筋がいくつか。

 幸い今目指している自由都市には居ない様で良かった。


 どちらにしてもこれは保留だ。

 国から出たこの人達が今どうしているか、断罪をどう受け止めたか、そこまでは記憶にも無い。


 保留の箱がまた重くなった。


 ここまでで、二つ目の目的は片付いた。


 敵は王家。王子とその女。乗った貴族連中。庇わなかった実家と言うところだろう。


 要するにあの国の上澄みの連中は丸ごと敵だ。清々しいくらい分かりやすい。


 問題は一つ目だ。


 濡れ衣で追放された。行き場を失って滝に飛んだ。事実としては筋が通る。


 通るのだが。


 昨夜の激しい憎しみには、まるで足りないと感じる。


 あの熱は、そんな整った量じゃなかった。もっと底が抜けている。


 それ以上の記憶を探るにしても、記憶にもやがかかって見る事ができない。


 結論を出すには材料が足りない。保留の箱に放り込んで、俺は歩く事に意識を戻した。


 昼を回った頃には、脚が上がらなくなって来ていた。


(……話にならんな)


 半日も歩いていないのに、これだ。

 スキルがあっても、基礎体力が無ければ大した意味は持たない。


 息が上がる。足の裏が痛む。この体は、歩くように鍛えられていない。

 重装備で100km行軍しろと言う上官が居なかったのだろう。


 休んで、また歩く。それを繰り返した。


 食い物はないが、水は川で足りる。


 空腹が続き、身体が栄養を欲しがっている。


 日が傾いてきた。


 今夜の寝床を探さなければならない。街道を外れて、風を避けられる場所を――


 そう考えていた時、後ろから(ひづめ)の音が来た。

 俺は咄嗟に街道を外れ道を譲る形で木陰に身を潜めた。


3話・了

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