花嫁編 ⑨
祝福に沸いた結婚式は、完璧だった。私は誓いのキスの瞬間まで、清らかな「清廉の白百合」として振る舞い通した。けれど、純白のヴェールに包まれた私の内側は、昨夜ルカに刻まれた背徳の疼きで、今にも発狂しそうだった。
(これでいいの。明日からは、私はレイ様の正しい妻として…)
披露宴が終わり、二人きりの夜。重厚な扉で閉ざされた静寂の寝室で、私はレイ様を待っていた。罪悪感と、そしてどこか「終わってしまった」という喪失感。でも、入室してきたレイ様の顔を見て、私は凍りついた。
彼は、狂おしいほどに優しい微笑みを浮かべていた。
そして、その背後には…
ルカ…?彼が一体、何故。
「…レ、イ様…?これは、一体…」
「愛しのリリア、我が妻よ。さあルカ。君もベッドへ」
レイ様が優しくルカをベッドへと誘う。
私の世界が、音を立てて崩壊した。
彼は知っているのだ。何もかも。
私は震えながら平伏し、許しを乞おうとした。けれど、レイ様はどこまでも優しく、私に「地獄の奉仕」を命じた。
「さあ、見せてくれ…僕のことは気にしなくていい」
◇
ああ…なんて美しい。絶望に顔を歪めながらも、僕の命令に従い、震える手で青年に触れるリリア。先ほど婚礼を上げた僕の新妻が、僕の目の前で、僕の指示で蹂躙されていく。その光景に、僕の脳髄はかつてないほどの麻薬的な快楽で満たされていた。
涙ながらに受け入れるリリア。ルカのそれは、緊張か、それとも恐怖か。とてもこの後の行為を受け入れる準備は整っていないようだった。
だが、リリアは自らの肢体と接触で、血を一か所に集め、主張させる。
やはり彼女は、己が持つ色欲に従い、この状況にすら感じているのか。
【リリア:レイへの罪悪感 97、自己嫌悪 100、理性 80、興奮 92】
【レイ:リリアへの愛 100、理性 60→28、興奮 100】
完璧だ。
純潔と背徳。
それらが混ざり合い、臨界点に達した、至高の瞬間。
「ああ…リリア、愛しているよ……心から…」
リリアとルカが、一つになったその刹那。僕はもう一本の堅く鋭い刃で、重なり合う二人の背面から、一つに刺し貫いた。
「――っ、あ…あ…っ!!」
白かったベッドシーツは、赤へと染まる。
リリアの瞳から光が消える。その表情は、快楽の法悦の余韻なのか、絶望の一端か。虚ろなまま固定されていた。
ルカと、
リリアと、
僕。
これで、一つになれた。
【レイ:正義 95、独占欲 100、興奮 95→0、理性 20】
内に抑え込んでいた衝動が、堰を切って溢れる感触。僕の頬を濡らすのは、返り血か、それとも歓喜の涙か。
「清廉の白百合」は、今、僕の手の中で。最も美しく、永遠に「僕だけの赤」へと昇華したのだ。
僕は、意識が遠のくほどの快感の中で、真っ赤な海に崩れ落ちた。
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