花嫁編 ⑦
部屋の隅に鎮座する、純白のウェディングドレス。明日、私はこれを纏い、皆の祝福を浴びながら「妻」となるのだ。それは私が望み、築き上げてきた、非の打ち所のない「幸福」の終着点であるはずだった。
「…リリア様、お着替えを」
静かに近寄るルカ。
私の肌は、もう彼の指先を知っている。
私の耳は、彼の震える吐息を覚えている。
明日になれば、私はレイ様の妻になる。そうなれば、もう二度と、甘美なる毒を啜ることなど許されない。
(…今夜が、最後。そう、最後よ、リリア)
それは、溺れる者が掴む、泥の浮き輪のような言い訳だった。私は彼の手を払い除ける代わりに、その細い首に自ら腕を回した。
唇が重なる。
レイ様の、慈しむような、けれどどこか事務的な口づけとは違う。
もっと貪欲で、未熟で、私の深淵を抉り取るような彼の接吻。私は、自分でも驚くほどの熱量で、彼を求めていた。吐息が漏れるたびに、私の何かが剥がれ落ちていく音がする。
恥辱。
罪悪。
けれど、それらを遥かに凌駕する「壊される快悦」。私は、清廉な自らが汚れていくこと自体に、抗いがたい興奮を感じていたのだ。
【リリア:貞操観念 65→95、色欲 53→85、自己嫌悪 81】
私は、私を汚す自分を、心の底から蔑んでいる。けれど、その軽蔑さえもが、私にとっては最高の「潤滑剤」となっていた。
彼の指が、ドレスの紐を解いていく。純白の布地が床に滑り落ち、月光の下で私の「不浄」が晒される。明日、神の前で誓いを立てる身体が――
白から、赤へと。
(…ごめんなさい、レイ様。ごめんなさい…)
心の中で謝罪を繰り返しながら、私はルカの背に爪を立てた。
今夜だけは。
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