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観測者アルスは解き明かしたい 【第1回ブシロードワークス小説大賞 中間突破】  作者: 邑沢 迅
王子編

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王子編 ②

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挿絵(By みてみん)

「ほう…。これが『星脈の輝石(エテメンアンキ)』か」


 私の執務室の机の上で、拳大の不可思議な石が七色の光を放っていた。ラピスが極秘情報として持ち込んできた、新大陸で発掘されたという未知の鉱石。なんでも、従来の魔石の百倍のエネルギー効率を誇り、隣国の帝国が国家予算を投じて極秘に買い占めを進めている、『次世代の覇権の鍵』だという。


「いかにも。現在、王都の闇市場に出回っているのはごく僅かです。しかし私の『予測』では、1ヶ月以内にこの石の価値が公になり、価格は現在の10倍…いや、50倍に跳ね上がります」


「50倍だと…っ!?」


 ラピスの涼しげな言葉に、私の心臓が特大の鐘のように鳴り響いた。私は金が好きだ。だが、ただ金庫の中で眠る金には興味がない。


 “私の才覚によって『増え続ける』金”を見るのが、たまらなく好きなのだ。


 無能な弟や、口うるさい宰相どもにはできまい。私があの奇妙な財務官の才能を見抜き、使いこなしているからこそ、この王国は潤っているのだ。


「よかろう。まずは国庫の予備資金から金貨10万枚を動かせ。市場に出回っている『輝石』を根こそぎ買い占めるのだ」

「御意のままに、殿下」


 ラピスが深く一礼して退室した後、私は金庫の鍵を撫でながらほくそ笑んだ。


◇


 ――そして、アルスの言葉は現実となった。


 彼が情報を操作したのか、それとも本当に帝国の買い占めが始まったのか。たった1週間で『星脈の輝石(エテメンアンキ)』の価格は5倍に跳ね上がり、王族の非公式なオークションでは狂ったような高値で取引され始めたのだ。


「殿下! 先日の財務官に任せた金貨10万枚が、早くも50万枚の価値に跳ね上がっております!!」


 側近の報告に、私は歓喜のあまり玉座から立ち上がった。


 素晴らしい! たった一週間で、小国の国家予算に匹敵する富が転がり込んできたのだ!



  【マクシミリアン:金欲 100、万能感 80→95、興奮 80】



「ふはははっ! 見たか、私の先見の明を!やはり富こそが絶対の力だ!」


 私は両手で机を叩き、快感に打ち震えた。


 これだ!


 この“世界を支配している数字が、私の手の中で爆発的に増えていく”感覚!勇者が魔王を倒したところで、この全能感には到底及ぶまい!


「おい、もっとだ! 王室の直轄領から臨時の強制徴税を行え! まだ市場に隠されている『輝石』があるはずだ。他国の豚どもに買われる前に、国じゅうの金をかき集めてでも全て私が独占するのだ!!」

「で、殿下!? な、なるほど輝石の利益は莫大ですが、これ以上の徴税は領民の生活が……!」

「ええい、黙れ!これは国を最強にするための投資だ! 後で何十倍にもなって返ってくるのだから、貧民どもは麦のカスでも啜って我慢していればいいのだ!!」


 恐怖で青ざめる側近を怒鳴りつけ、私は『輝石』の美しい七色の光にうっとりと目を細めた。


 もっと。もっとだ。


 私のこの優秀な頭脳と、絶大なる富への愛があれば、私は間違いなく世界の絶対的な王になれる。


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