↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
観測者アルスは解き明かしたい 【第1回ブシロードワークス小説大賞 中間突破】  作者: 邑沢 迅
聖騎士編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/123

聖騎士編 ④

※この小説の続きをスムーズにお楽しみいただけるよう、【ブックマークに追加】を押して設定を保存してください。

挿絵(By みてみん)

「ユリウス様っ!!」


 鼓膜を破るような爆音と、視界を白く染め上げる熱波。私は固く閉じていた目をパチリと開けた。


 生きている。痛みもない。


 私の右へと身を捩った無意識の行動は、三番街の時計塔から放たれた『左首筋』への凶悪な魔法狙撃を、間一髪で回避していた。土煙がもうもうと立ち込める中、私は荒い息を吐きながら己の生存に安堵してしまう。


「――が、はっ…」


 背後で、くぐもった血の音がした。振り返った私の視界に飛び込んできたのは…胸に焦げた穴を開け、石畳に斃れるキースの姿だった。


「キース!!」


 私が右に『身じろいだ』ことによって生まれた、空間。そこに立っていた若き斥候は、私をすり抜けた魔法の直撃をその身に受けていたのだ。


「お、おい…しっかりしろ! キース!」

「ユリウス、様……」


「おい、ユリウス様たちをお守りしろ!」

「周りを囲むんだ!」

「時計塔の上だ!第3部隊は犯人を追え!」


 優秀な部下たちは次の狙撃に備え、我々を取り囲む。私は彼を抱きかかえ、血まみれの胸元に『浄化』と『治癒』の魔法を狂ったように叩き込む。だが、無駄だった。心臓を深く焼かれた命は、もはや神でも引き戻せない。


「すまない、私が…私がもっと広く腕を広げていれば…!」

「な、何を…仰るのです……」


 キースは口から大量の血の泡を吹きながら、それでも、私の顔を見てふわりと笑った。それは、殉教者のように澄み切った、美しい笑顔だった。


「あのような…恐怖の前に…。一歩も引かず、立ちはだかるなんて…。さすがは、我らの、誇り……」

「違う! 私は――」

「微塵の、恐怖も、ない…素晴らしい、お姿、でし、た…」


 言葉が、出なかった。キースの陶酔しきった瞳は、私の『保身』を、無かったことにしている。彼は最後まで、私を『絶対の正義』だと信じ抜いたまま、 満足げにその首をがくりと落とした。



  【ユリウス:正義感 100、安堵 80→100、自責 0→60】



「大司教様はご無事だ!!」 「ユリウス様が魔法を相殺してくださったんだ!!」


 土煙が晴れると共に、生き残った『白き刃』の部下たちと、パレードの群衆から割れんばかりの歓声が沸き起こった。


 誰も、私が恐怖に負けて『身じろいだ』ことなど気付いていない。


 誰もが私を、命を懸けて大司教を守り抜いた「高潔なる英雄」だと讃え、キースの死を「崇高な自己犠牲」だと涙ながらに拝んでいる。



  【ユリウス:正義感 100、自責 60→80、罪悪感 70】



「あ…ああ……」


 歓声が、吐き気を催すほどに耳障りだった。私は英雄などではない。神の加護など信じきれず、死と痛みを恐れるあまり、愛する部下を見殺しにした『醜く卑劣な臆病者』だ。



  【ユリウス:正義感 100、自責 80→95、罪悪感 70→90】



 その吐き気を催すほどの真実を知っているのは、世界でただ一人、私自身だけだった。


(私は罪人だ…私が彼を殺したんだ…)


 純白の鎧の内側に張り付いた、真っ黒な何かが、私を内部から貪り食い始めていた。


※この小説を面白いと感じていただけましたら、★★★★★の評価と【ブックマーク】で応援お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
勇者や賢者とは違う、自分の正義感に押しつぶされていくさまが心苦しいと言いますか…… 決して弱くはない、だけど一瞬の気の迷いがとんでもない罪悪感を生む、真面目な人ほど大きく加速する 現代にも通じる何を見…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。