未亡人ベリルは守り抜きたい②
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ベリルさんたちを見送った後、大教会の礼拝堂は物々しい空気に包まれていた。
「…以上が、事の顛末です」
私が静かに語り終えると、王国の憲兵や高官たちは青ざめた顔で顔を見合わせた。
血だまりの中に横たわる、かつての王国の英雄レオンと、帝国の要人アルス・フォン・クォーツ。
この二つの亡骸が意味するものは、あまりにも重い。
「大司教様…。まさか、我が国の元勇者が、帝国の貴族を殺害するとは…。動機は…いや、今は思案している場合ではない…」
「レオンは国籍を剥奪された身とはいえ、帝国がそう簡単に納得するとは思えません」
高官の一人が、震える声で呻いた。
彼らの恐怖はもっともだ。王国は今、先の内乱で著しく国力を落としている。対する帝国は、他でもないアルスさんの手腕によって、軍事力も経済力も飛躍的に向上しているのだ。
もし今、帝国が『弔い合戦』と称して攻め込んでくれば、王国に対抗する術はない。
「至急、議会を招集せよ!帝国への謝罪使節団の編成と、国境警備の強化を急ぐのだ!」
高官たちが慌ただしく指示を飛ばし、礼拝堂を後にしていく。
彼らの足取りは重く、そして絶望に満ちていた。
残された私は、静かに祭壇へと向き直り、両手を組んだ。
「アルスさん」
目を閉じれば、あの日、私の前で息絶えた彼の穏やかな顔が浮かぶ。
彼は決して聖人ではなかったけれど、私に、そして多くの人々に救いを与えてくれた人だった。
「あなたが残した、ご家族の未来。…そして、あなたが愛した『合理性』。私も、少しだけ真似させていただきますね」
私は目を開き、力強く歩み出した。
悲しんでいる暇はない。神への祈りは、最善を尽くしてからだ。
王国の暴走を止め、帝国の侵攻を防ぐための『盤面』を整えなければ。
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