解明編 ⑦
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「アルスさん。間違いなく、あなたはご自身の家族を愛しています」
私は、一切の迷いのないはっきりとした口調で断言した。
「何を根拠に――」
「あなた自身が、先程ご自分で告白なされたではないですか」
私がそう言うと、アルスさんは訝しむように眉をひそめた。私は彼から視線を外し、その後ろに立つベリルさんと、足元にしがみつくエマさんを順番に見つめる。
冷酷な告白を聞いた直後だというのに。ベリルさんは泣きそうな、不安に満ちた表情で、ただただ愛する夫の背中を縋るように見つめている。エマさんも、目に小さな涙を溜めながら、敬愛する父親の顔を不安そうに見上げている。
その二人の美しい眼差しを見ただけで、私には確信があった。
「あなたは必死に…それこそ、ご自分の人生のすべてを懸けて、ご両親が遺した『感情』の謎を追い続けている」
「…」
「私のような修道女を利用し、王国という巨大な国家をも破壊してまで、その愛情の正体を解き明かそうと生きてこられた。…それほどまでの、とてつもない執着が、愛でなくて一体何だと言うのですか」
私は一歩前へ踏み出し、アルスさんの背後に立つ美しい奥様へと微笑みかけた。
「ベリルさん」
「はい…」
「あなたは今、幸せですか?」
「はい。今まで色々なことがありました…。アルス様には、まだまだ直して頂きたいところがあります。それでも、それは些細な事です。私は、とても幸せです。アルス様と、エマ…。夫と、娘。大好きな家族に囲まれて、本当に平和で」
震える声ながらも、ベリルさんは強く自信に満ちた声で頷いた。
私は次に、アルスさんの足元からこちらを見上げている、賢そうな少女へと視線を合わせる。
「エマさん」
「…大司教さま?」
「あなたから見て、お父様はどういう存在ですか?」
「変…だけど。すっごく頭が良くて、格好良くて、お勉強も一緒にしてくれるし、お母様と同じくらい、だいすきです!」
涙目のまま、それでも父親を庇うように力強く自慢してみせた小さな口に、私は優しく目を細めた。
「すばらしいご家族です…まさに理想、模範…」
私は小さく息を吐き、再びアルスさんを真っ直ぐに射抜いた。
「アルスさん、お聞きになりましたか。これが、答えです」
「僕は、何不自由ない生活と『模範的な家族』を提供した。当然の返答じゃないのかな」
「いいえ、違います」
彼の言葉を、私は撥ね退けた。
「『人を愛している』者は、その相手が、いつまでもその人らしく咲き続けられるように…。毎日言葉をかけ、毎日心を砕き、変わらぬ歩み寄りを一生涯続けるものです」
「…」
「まさに、あなたはそれを『彼女たちのために』毎日実践されている。彼女たちも、それに応え、あなたを愛している。どれだけ頭の中で何かと理屈をつけて言い訳をしようとも。あなたが彼女たちのために長い時間を費やして守り抜いてきた結果が、この美しく咲き誇っているお二人ではないのですか」
沈黙する礼拝堂に、私の静かな声だけが響き渡った。
「アルスさん――あなたが毎日実践しているそれこそが、愛情というものではないのですか」
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