表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
観測者アルスは解き明かしたい  作者: 邑沢 迅
解明編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
109/123

解明編 ⑥

※この小説の続きをスムーズにお楽しみいただけるよう、【ブックマークに追加】を押して設定を保存してください。

「まだ、わからないな」


 どれだけ酷い真実を突きつけられても、エララの静かで祈るような表情は変わらなかった。彼女の真っ直ぐな問いに対し、僕は肩をすくめて答える。


「こうして妻を娶り、血を分けた子ができた。『愛』という言葉の辞書的な定義で言うのであれば、それは愛しているという状況になるのだろう」

「…」

「定義の条件は満たしている。だが、それでも僕は、確信を持って『家族を愛している』とは言えないんだよ。心に何の動きもないからね」

「アルス様…」


 背後に立つベリルが、悲哀と祈りの声色で僕の名を呼ぶ。


「お父様…私たちを、愛していないの?」


 僕のズボンを握りしめたエマが、不安そうに見上げてきた。僕は彼女の頭を撫でて、事実だけを正直に答えた。


「愛しているよ。定義上はね」

「……え?」

「でもね。頭で理解はしていても、どうしても納得ができないんだ。愛しているという実感が、僕には何一つ湧いてこないんだよ」


 ベリルは固唾を飲んで僕たちを見守っている。彼女たちの前で、自分の中にある絶対的な『欠落』にきちんと言及するのは、これが初めての事だった。


「ガイは、残した家族への愛と、僕という被害者への罪悪感の狭間で板挟みになり、こと切れた。僕の両親は、死の恐怖のただ中で、息子を守るために身を挺し、なぜか笑顔で僕を見送った。そしてミラは、身を裂く恐怖の中で、身を挺して僕を庇った」


 彼らを突き動かした、理屈では説明できない何か。


「確かに、僕は君たち家族に何不自由ない暮らしを提供している。怪我をすれば医者を呼び、不安になれば優しく声を掛ける」

「…」

「でもそれは、世間の『家族』を手本として、それが『一番普通で正しい家族像』だと、頭で理解しているからだ。理解しているからこそ、僕はその最適解を完璧に実践している。ただ、それだけさ」


 そこには、彼女らが持っていたような『感情』は一切介在していない。

 


  【エララ:アルスへの同情 70→94、慈愛 100、自己愛 0】



 彼女の頭上に浮かぶ数値が、大きく揺れ動いていた。それは、深い、深い哀れみだった。


「エララ。君はまた、僕を憐れんでいるのかい?」


 僕が自嘲するように鼻で笑うと、そこまで黙して僕の言葉を聞いていたエララは、大きく息を吸い込み、静かに口を開いた。


※この小説を面白いと感じていただけましたら、★★★★★の評価と【ブックマーク】で応援お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ