解明編 ④
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「…ここが、目的の場所ですか?」
翌日。王国領の中心部へとやってきた私たちは、その壮麗な建物を真っ先に見上げていた。それは、白亜の壁と美しい石造りの尖塔を持つ、巨大で荘厳な大教会だった。
「すまない。大司教様はいらっしゃるかな」
アルス様が教会の入り口に立ち、案内役の神官へと丁寧に声を掛けた。
神官は、急に訪ねてきた私たちを見て、訝しむように目をすがめる。
「いらっしゃいますが…旅の方。…失礼ながら、どなた様でしょうか」
「古い友人が訪ねてきた、とお伝えいただければわかるはずです」
名前を名乗らない不審な客。
しかし、アルス様の纏う洗練された身なりと、あまりにも堂々として高貴な所作を前にして、神官もそれ以上は食い下がれず納得したようだった。
「承知いたしました。それでは、中へ…長椅子にお掛けになって少々お待ちください」
「ありがとう」
神官が奧の礼拝堂へと足早に消えていくのを見送ってから、私たちはステンドグラスの光が差し込む手前の長椅子に腰を下ろした。
「お父様のお友達?ここの教会の、えらい神官様なの?」
「そうだよ。ずっと昔に、僕が色々とお世話になった人なんだ」
アルス様がエマの頭を撫でながらそう答えるのを横で聞きながら、私は密かに驚きを隠せずにいた。
アルス様のご友人…。
私が彼と出会ってから何年も経つが、彼が誰かのことをはっきりと『友人』と呼ぶのを聞いたのは、これが初めての事だった。しかも、この荘厳な王国の大教会を束ねる大司教様だなんて。
身分も国籍も違う二人が、一体過去にどのような関係だったというのだろうか。やはり、いくら夫婦といえども……本当に、アルス様はまだまだわからないことだらけだ。
そんなことを密かに考えながら、私はぐるりと教会の内装を見回した。
…それにしても、本当に美しい教会だ。でも、巨大な大教会にしては長年積み重なったような歴史の重みは感じられず、まるで数年前にまるごと建て直されたばかりのような、真新しく清潔な佇まいをしている。
静謐な空間で、一人の男性が熱心に祈りを捧げていた。教会にはおおよそ似つかわしくない鍛え上げられた巨躯。
だが、その表情は弱々しく、どこまでも怯えきっており、ひとしきり祈りを捧げたあと、ゆっくりと教会を去っていった。
彼の目線の先にあった、教会の中心に据えられた『女神像』。私たちの心の中にある全てを静かにお見通しになるような、とても美しく神秘的な造形をしていた。
その真上に据えられた色鮮やかなステンドグラスからは、あたたかく美しい日の光が燦燦と降り注いで、私たち家族を明るく照らしていた。
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