解明編 ②
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「わぁ…!お母様、見て!あそこにおっきなお城が見える!」
ガタゴトと揺れる立派な馬車の中で、窓に張り付いたエマが目を輝かせて歓声を上げた。
「本当ね。ふふ、危ないからあまり身を乗り出しちゃ駄目よ」
「凄いなぁ!あ、お父様、あれが王国の街だね!」
私はエマの背中を支えながら、窓の外に広がる見知らぬ異国の景色に見入っていた。アルス様の視察に同行する形で決まった、他国への家族旅行。馬車に乗って外国へ赴くなど、夢にも思わなかったことだ。
そして、帝国領を出るまでの道中は、驚くほど平穏で安全なものだった。
近年の帝国では、『魔力駆動兵器』が広く導入されている。そのおかげで、かつては脅威だった道中の魔物など、特に主要な街道沿いでは影も形も見かけなくなった。
「国境を越えた時は少し緊張しましたけれど。…王国領も、随分と活気があって綺麗な場所ですね」
私が対面に座るアルス様に向かってそう尋ねると、彼は読んでいた本から視線を上げて静かに頷いた。
「ああ。ちょっと前に、大規模な混乱があってね。大分内政も落ち着いたようだ」
「混乱…そうだったのですね」
馬車の窓から見える王都の街並みは、新しい建物が多く立ち並び、行き交う人々も皆前を向いて力強く生活しているように見えた。
「さぁ、今日から三日間、王都に滞在するよ。せっかくだから、ベリルもエマも好きなだけ観光を楽しむといい」
「いいのですか、アルス様?」
「もちろん。僕の視察のメインである場所には、明日向かう予定だからね。今日と、明後日は自由だよ」
アルス様はパタンと本を閉じ、珍しく少しだけ楽しそうな、待ち遠しいような声でそう仰った。
「やったー!お父様、ありがとう!」
エマが無邪気にをしてアルス様に抱きつき、アルス様もやさしくエマの頭を撫でる。最初はぎこちなかったそれも、今では様になっている。
…ああ、なんて幸せな光景だろう。
立派で頼もしい旦那様と、聡明で愛らしい娘。まさしく、私が目指した、憧れた
『完璧で理想の家族』そのものだ。
少しだけ不安だった初めての海外旅行だが、この時の私は、アルス様の横顔を見つめながら、ただただ胸をいっぱいに満たす幸福感に浸りきっていた。
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