【魔王】
魔王sideです。読み飛ばしてもいいです……
魔物、と言われるものが在る。
それは人にとって、空気と同じく、人と同じく、生まれ出でた最初から存在しているものだった。
社会性の高い人にとって、国の王がその頂点に立つように、魔物たちにも頂点に立つものがいた。
魔力の高いものだ。それが魔王と言われる存在だった。
魔王の意思は、他の魔物を動かし、世界の形をもその魔力で変えていく。
魔王の力が強すぎれば、人はいつか亡ぶかもしれない。単純に強さだけならば人は勝てない。けれど、無尽のように湧き続ける人の圧倒的な数の力で、蓄えられる知識で、魔王は人には到底敵わない。
『ソレ』が魔王になったのはただ、長生きをしたからだ。
長寿の竜族に生まれ、生まれながらに強い肉体を持っていた。
仲間を倒し、魔物を人を食らい尽くし、その力を吸収しながら魔力を高めてしまった。
『また人が魔王を倒しに来た』
ソレが彼らを認識したのはその程度だった。
けれど驚いた。人なのに、高位の魔物のような魔力を持った人が混じっていた。
まだ若い人の女だった。突然変異なのだろうか。ソレ自体の強さも同じようなものだった。生き物にはそう言ったことが起こると知っていた。
『あの女を食ったら』ソレは考えた『人らの強さを越えるものになるのではないか』
けれど単純に食うことを阻まれる。忌々しいほどに邪魔立てする男がいる。
男と女はお互いに守り合っている。強い絆が垣間見れる。手出しが出来そうもなかった。
ならば死の呪いで取り込めばいいのだと、本能が囁きかけた。
アレは呪いで相手の力の全てを吸い取るものだ。あの女ほどの力があれば、死の直前に発動する呪いが瞬時にソレを再生し、致命傷になることはないだろう。
ソレは考えた。
人は増え過ぎた。
増えすぎたときに自然に淘汰される。
時代の転換期が訪れていて、ソレがその役割を担うのだろうと。
ソレは男の剣を受け、呪いは発動された。呪いはあの女に向けるように集中した。余計な人などいらない。けれど、力は尽きた。肉体はチリヂリになり、バラバラと空気に溶けた。
けれど死んではいなかった。再生には長い時間が掛かった。
また、女が訪れた。どれだけの年月が経ったのか、『半分』になった女が訪れた。
もう一度死の呪いを掛けた。女は死んだ。
また、女の気配を感じる。さらに『半分』になっているようだ。
もう一度死の呪いを掛けたらおそらく完全に死ぬだろう。そうしてその時、魔王は人より強くなるのだろう。
人は増え過ぎた。
魔物の時代がこれからはやってくるのだろう。
魔王はその未来を疑っていなかった。




