Log:62 対となる者2
Log:62 対となる者2
「わたくしは、お前とは違って天上層のエリートなのよ! 容姿も、血統も、何もかもがお前とは違う!」
「わたくしを、そんな目で見るな! 狂った科学者風情のくせに!」
西園寺は怒りに任せて、握りしめた拳をマホガニー製の机に何度も叩きつけた。
その衝撃で、すでに亀裂の走っていた天板に、新たなひびが広がっていく。
「わたくしは何も間違っていない! 生まれも、育ちも、容姿も、何もかもお前より優れている!
それなのに、どうして桐生はお前を選ぶの!?」
「お前は犯罪者で、SEALのエリート兵である桐生の足かせでしかない! これ以上、彼とわたくしの邪魔をするな! 薄汚い下民は、スラムで野垂れ死ぬのがお似合いよ!」
薔薇のように美しいと称される彼女の顔は、激しい怒りによって見る影もなく歪んでいた。絹のようになめらかな髪も乱れ、先ほどまでの優雅な面影は失われている。
「……では、お聞きしたい。私が貴方の望み通りに死んだら、貴方は満足なのか?」
「もちろんよ! お前が醜い姿で這いずり回り、わたくしの前に平伏すの。
そして……桐生はわたくしのものになるのよ! そう! それがわたくしの望む、最高に幸せな結末!」
西園寺はもはや、自らの欲望を隠そうともせず、感情の赴くままに言葉をぶつけてくる。
これほどまでに自己抑制を失い、判断能力を低下させるとは。嫉妬という感情は、実に厄介なものだ。
(まぁ……彼女の場合、嫉妬だけでなく、強い憎悪も含まれているのだろうが……)
「私がスラムに堕ちた日から、少なくとも貴方には桐生と交流する機会があったはずだ。そのための時間も、十分に与えられていた。しかし、貴方はその間、何をしていたんだ?」
「桐生は重傷を負い、SEAL総合病院でしばらく療養を余儀なくされていた。その間、貴方には彼と話す機会が何度もあったはずだ」
私は西園寺をまっすぐに見つめた。
「それで、貴方はその機会をどう使ったんだ?」
西園寺はわたしの質問に答えなかった。
ただ、私を激しく睨みつけ、「死ね」「黙れ」「下民」といった暴言を繰り返すばかりだった。
こちらの言葉には、もはや耳を貸そうともしない。
「西園寺。貴方は対話すらできないほど、理性を失ってしまったのか?」
「私は貴方の質問に答えている。しかし、貴方は自分にとって不都合な質問になると、回答を拒否する」
「これでは、会話が成立しないな」
西園寺は再び拳を振り上げ、亀裂の走った天板に力任せに叩きつけた。
その瞬間、天板は凄まじい音を立てて割れ、崩れ落ちた。
彼女の拳を覆う白いレースのロンググローブには、血が滲んでいた。
「わたくしをバカにするなッ! 最下層の愚民のくせに!」
「は……調子に乗るなよ。お前は人の心すら理解できない、クズロボットだ! 人間を知ったように語るなど、思い上がりも甚だしい! 傲慢にもわたくしを見下すな! この無礼者!」
西園寺が髪を振り乱すと、白い帽子が床に落ちた。
先ほどまでの清廉な印象は見る影もなく、彼女はただ、怒りの赴くままに言葉を吐き出していた。
「確かに、私は感情が乏しい。他者と比較すれば、感情を本当の意味で理解できているのかという点に、明らかな問題があることも認識している」
「しかし、感情が乏しいからといって、まったく存在しないわけではない。それに、私は自分の欠点を認識し、それを補うための努力もしているつもりだ」
「もっと明確な答えが必要なら、あえて言葉にしよう。私は今、怒りを抱えながら、貴方と対話している。なぜなら、これは私が貴方を知るために望んだ対話だからだ」
西園寺は突然、「くっくっく」と笑い始めた。
「なぜ怒るの? お前は何も持たない最下層のゴミ。いわば、生まれてきてはいけなかった人間なのよ」
「そんなお前が、わたくしに対して怒りを抱いているですって?」
彼女は人差し指を私に突きつけると、ためらうことなく冷酷な言葉を口にした。
「あなた、死になさいよ」




