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Log:40 再会と誓い

Log:40 再会と誓い


長い間、閉じ込められていた記憶の一部を取り戻し

酷い身体の痛みと共に目を開けた。


(また見慣れない天井だ。)


石造りの壁。古い木材の匂い。

窓の外から、薄い光が差し込んでいる。


私の身体には治療された跡があり、

スラムではかなり高価なはずの薬剤を染み込ませた包帯が巻かれていた。


「……ここは一体、どこだ……?」


大きな影が私のベッドを覆い尽くすと

影の先には、一人の男が立っていた。


「……ここはスラムの白塔だ」


とても低い声が答えた。白い髪。琥珀色の瞳。


(どこかで――見た顔だ。)


「……そうか。君が助けてくれたのかな? 礼をするのが遅れた」


ふと、気を抜いたその瞬間――


胸部と頭部に衝突が発生。視界が歪み、星が散った。


「「ナズっち――!!」」


「ナズっち、目が覚めた!?」


ソルトとシュガーが私のベッドに飛び込んできたせいで

わたしには新しい鈍痛が二つ追加された。


二人とも、目が真っ赤だった。


「ごめん! ごめんな! ナズっち!」

「俺たち、最低だった! 本当にごめん!」


発汗。声の震え。視線が定まらない。

典型的な罪悪感の反応だ。


「……まず、落ち着き給え。……いいか、君達の判断は合理的だった。

契約は果たされたのだから何も問題はない。それに君達は

わたしを救ってくれた恩人だ。なぜ、謝る?」


「ちがう! そういう問題じゃない! そうじゃないんだよ……」


「俺たちを怒ってくれ!」

「殴ってもいい!」


シュガーが叫んだ。ソルトも叫んだ。

口がへの字になっている二人を見て


私は少し考えを改めてみることにした……


「……やはり、怒る理由が見当たらない。……すまない」


「「ちがうんだよ! そういうとこだよ――!」」



二人の声が重なった。しばらく彼らの騒ぎが続いたが、

わたしは、彼らの出す騒音が嫌いではなかった。


ソルトとシュガーは顔を見合わせ、頷いた。


二人はわたしの手を取り、戦いの傷跡が残るその上に自分たちの手を重ねると、

真剣な顔でわたしを覗き込みながら、誓いを立てた。


「ナズっち。……これは、スラムの誓いだ」


「俺たちとお前は血で結ばれたパートナーだ。

これで一生、俺らはナズっちについていく」


「「何があっても絶対に裏切らない」」


私は彼らの誓いに違和感を感じ、首を傾げた。


「君たちは家を建てるのだろう?

わたしは君達と一生を共にすることはできないし、

一妻多夫制度は合理的ではない。」


「文化として理解はするが、個人的には不適切だと指摘する。

わたしは、夫は一人で十分だ」


シュガーとソルトは赤面した。


「「ばっか! そういう意味じゃねぇ――!」」


二人の声が、また重なった。

彼らの抗議は、しばらく続いた。


そして――


「あのね……ナズっち。俺たちは「良い人」の本当の意味が

ようやく分かったんだ」


「俺らにとって、『大切な人』はナズっちも含まれるんだよ……」


「――しかし、私は君達の忠誠を誓えるほどの高名さはない。

わたしは『大切な人』と呼ばれるような価値のある人間ではない。

巻き込まれて、大変な目に遭う前に離れたほうが得策だ」


――その時、それまで一言も発さなかった男が、ゆっくりと動いた。


「お前の価値は、お前だけが決めることじゃない」



どこか懐かしい面影に私は、沈黙した。


(……君はもしかして、彼なのか?)


「こいつらを殴ってやれ。それが、時には救いになる場合もある」


男はそれだけ告げると、部屋から出て行った。


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