Log:38
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怒号と銃声が古びた施設に鳴り響いた。
「カ、カイゼンだ!」
建物の奥まで、男たちの叫び声が反響する。
錆びた鉄格子。壁際に並ぶ檻。
床には転がる医療器具と、乾いた血の跡。
死角から男が、カイゼンに向かって引き金を引いた。
弾は当たった。
カイゼンのこめかみに。
「……チッ」
カイゼンは足を止めない。
こめかみに食い込んだ弾を、男へ返す。
男の頭が弾けた。
返り血を浴びても、カイゼンは歩くのをやめない。
「ば、化け物だ……!」
「ウソだろ……なんなんだアイツ!」
男たちが一斉に銃を構える。
――次の瞬間。
見えない力が、男たちを床から引き剥がした。
操り人形のように身体が宙に浮く。骨の軋む音。
男たちは壁に叩きつけられ、そのまま動かなくなる。
カイゼンは、ただ歩いている。
まるで障害など、最初から存在していないかのように。
俺とソルトは、残った敵に銃をぶっ放す。
逃げ出そうとした男が一人。その足元の影が、揺れた。
「な、なん——」
影が突然膨張して男の身体が、影の中へ引きずり込まれる。
悲鳴は途中で途切れた。床には、何も残っていない。
カイゼンの視線は揺るがなかった。
「カイゼン! ナズっちの場所は分かるのか?」
「この奥だ」
カイゼンは、暗闇の中を警戒もせずに歩く。
悠然と。俺とソルトは、後に続いた。
恐れるものなど何もない――
王の背中だった。
部屋の奥へ続く通路。
空になった檻が並び、腐敗臭がどんどん強くなる。
「クセェ……本当にこんな所にナズっちがいるのか?」
ソルトが鼻を手で覆いながら言った。
「……いたぞ」
カイゼンの低い声が響いた。
俺たちの視界に入ったナズナは……
檻の中には、生臭い匂いが立ち込め、
殴られ動くこともできない俺たちの恩人がいた。
たった数時間、離れただけ。
だから、大丈夫だと思っていた。
考えが、甘かった。
俺たちが地獄に送ったんだ。
カイゼンが、檻の中に閉じ込められている彼女を見て
言葉が零れた。いつも冷静な彼の声が震えていた。
「お前、また檻の中なのか……」
人の声に反応した、ナズっちは
「……き、きりゅうなのか……?」
カイゼンは檻を破壊し、ナズっちを抱え上げた。
檻の中は、目を背けたくなるほど汚れていた。
腐敗臭がこびりついている。
ナズっちの手が、カイゼンの頬に触れた。
カイゼンの動きが、止まった。
赤い瞳が、わずかに揺れる。
「……寝ろ」
カイゼンの手がナズナの目を覆い、視界を塞いだ。
これから起きることを見せないために。
ナズナの力が抜けたのを見た。
カイゼンは静かに俺たちに告げた。
「破壊しろ。全てだ」




